シャッター音が鳴らない香港版iPhoneなど、海外版のiPhone、Androidスマートフォンは根強い人気があります。iPhoneは日本国内でも購入できるのになぜ海外版iPhoneが人気を集めるのか、海外版の中古スマホを多数取り扱うイオシスに、その理由を伺いました。
同じ海外版でも、iPhoneを購入するユーザーとAndroidスマホを購入するユーザーには違いがあるとの、興味深い話も教えて頂きました。
海外版スマートフォンの人気の理由をイオシスに質問!
海外版iPhoneをはじめとした多数の中古スマホ、タブレットを取り扱うイオシスは、オンラインストアのほか、東京・大阪・名古屋・福岡に9店舗(内買取1店舗)を展開しています。
今回はアキバ中央通店スタッフの河野浩一さんに、香港版iPhone12シリーズやiPhone SE(第2世代)の人気の秘密、購入するユーザー層、筆者の知らなかった「海外版iPhoneを購入するユーザーとAndroidスマホを購入するユーザーの違い」を教えてもらいました。
▼ 取り扱いは「2010年5月の香港版iPhone3GSの入荷から始まった」
▼ 海外版iPhoneの人気機種はPro、Pro Max系
▼ 海外版iPhoneはなぜ人気?「時代によって理由が異なります」
▼ 海外版の購入ユーザー層はiPhoneとAndroidで違い
▼ おすすめは「iPhone XS以降の物理デュアルSIM対応機」
▼ 技適マークの懸念から、国内版を勧めることが圧倒的に多い
▼ イオシスでは未使用品なら6カ月、中古品なら3カ月保証
▼ 今秋のiPhone新機種「物理デュアルSIM対応とは限らない」
▼ まとめ
取り扱いは「2010年5月の香港版iPhone3GSの入荷から始まった」
河野さん 2010年5月にiPhone3GS(香港版)が5台入荷したところから始まりました。当時はまだ香港からのルートが確立できていなかったのと、海外版のメリット・デメリットも藪の中だったので「超マニアック層向けネタ商品」という感じでした。
ただその時の反応が良かったため、同年発売のiPhone4(香港版)からは輸入ルートを確立すると共に、本格的な取り扱い開始という流れになりました。
iPhone4(香港版)は販売開始1カ月で約50台販売、2年で約280台と、当時としては想定を遥かに上回る数字を得られたので、その後のiPhone・Androidの海外版端末販売の礎となりました。
河野さん 現在はガジェットマニアからライトユーザーまで、かなり幅広いユーザー層となっております。リピート率に関しては全てを把握する術がないので、感覚的なものになりますが、かなり高いと思います。
販売現場にいるとお客様から「今年も買いに来た」等の言葉をいただく事も多いのですが、リピート率の高さを感じる1番の理由としては、新モデル発売後の旧モデルの買取数増加ですね。
海外版iPhoneの人気機種はPro、Pro Max系
河野さん 現行機種であるiPhone12シリーズだと下記のようになります(集計期間:2020年10月26日〜2021年6月14日)。
人気モデル
1番がiPhone12 Pro、2番がiPhone12 Pro Max、3番がiPhone12、4番がiPhone12 miniという感じでPro系が人気です。ハイエンドの価格帯を求められるお客様は「少しでも安く」より「どうせ買うなら上位を」という方が多いのだと思います。
人気カラー
カラーに関しては発売直後は一目で新機種と分かるものが人気になりますが、ガジェットマニア以外に一般層にも需要があるということもあって、時間が経つとTPOを気にしなくてもよい落ち着いた色味が1番の売れ筋になります。
人気のストレージ容量
無印系もPro系も真ん中のサイズが人気になりますが、これは最大容量の入荷数が少ないという理由もあるので、実質的に真ん中容量と最大容量の間にそれほど大きな需要の差はないと思います。
なぜ最大容量の入荷数が少ないかなのですが、これは売れないから入荷数を絞っているわけではなく、仕入先(香港)の流通数が少ないので思うように仕入れられないからです。
あとは流通が少ないと現地相場が変動しやすいので、コストが見合わない時は在庫があっても仕入をスルーする場合もあります。
海外版iPhoneはなぜ人気?「時代によって理由が異なります」
河野さん これは時代によって理由が異なってきます。
iPhone3G~iPhone5
- あまり大きな声ではいえませんが、ドコモからの発売がなかった時期なので…という感じでしょうか。
iPhone5s~iPhone8/iPhone X
- 国内版SIMフリーの発売やキャリア版のロック解除対応開始もあり、需要がゼロになったわけではありませんが、正直この時代は販売数が伸びない低迷期でした。
iPhone XSシリーズ~iPhone12シリーズ
- XSシリーズで香港版が物理デュアルSIM対応になり、絶対売れるという勝算が見えたので初回から大量入荷で仕掛けました。
- 世間では一気に超高級機価格になり色々言われていたので「失敗したら…」という空気がなかったわけではありませんが、結果は大成功。その後、iPhone11シリーズでさらに販売数は増え、iPhone12シリーズはコロナ禍にもかかわらず、iPhone11シリーズを上回る勢いで売れています。
全モデル共通の理由も
- この流れとは別で普遍的な人気の理由が1つあります。その理由は「カメラのシャッター音が鳴らない」ことです。
- 低迷期とはいえiPhone6~iPhone8/iPhone X時代にも香港版の需要が一定数あったのも、物理デュアルSIMではない香港版iPhone SE(第2世代)やiPhone12 miniが売れているのもこの理由だと思います。
販売台数
- 販売台数に関してですが、会社としての成長や海外端末の商品としての位置付けが昔と今と違うので、一概に比較はできないところではあります。海外端末の取り扱い当初の位置付けはマニア向けのネタ枠でしたからね(笑)。
海外版の購入ユーザー層はiPhoneとAndroidで違い
河野さん この質問は凄く良い点を突かれていると思います(笑) 違いはありますね。統計の取りようがないので感覚的なものになりますが、以下のような感じです。
- 海外版iPhone:ガジェット好き3割、一般層7割
- 海外版Android:ガジェット好き7割、一般層3割
このくらいの差があると思います。
海外版iPhoneを購入される一般層のお客様の大半は、おそらく海外版Androidを購入されたことがないと思います。ちなみにですがガジェオタと言われるレベルのガジェット好きの方々はどちらも購入されますね(笑)。
おすすめは「iPhone XS以降の物理デュアルSIM対応機」
河野さん 海外版iPhoneは、iPhone XS以降の物理デュアルSIM対応機です。
海外版Androidは正直一定以上のガジェット愛がないと使いこなすことが難しく、購入されるお客様の7割(体感)がガジェット好きな方々なので、おすすめするまでもないという感じです。
それでも!!!となると、どうせなら実用性度外視で国内未発売の一風変わったモデルなんかが面白いかもしれません。いわゆる”変態端末“と言われるものですね。
最近入荷があったものだとLG WINGでしょうか? スマホ事業から撤退するLGから最後に発売された変態端末で、超ド級の忘れ形見でもあります。
Androidの個性を知るとガジェット沼に深く嵌ってしまう可能性があるのでご注意ください(笑)。
技適マークの懸念から、国内版を薦めることが圧倒的に多い
河野さん 接客の際に「技適マーク」に関する知識の有無を確認し、ご存知のないお客様には詳しく説明させていただいています。どちらかというとデメリットを強調した感じの説明で、無理に買って貰おうという接客はしません。
海外端末のデメリットをご存知ないお客様には、用途を確認した上で「であればコチラがオススメですよ」という感じで、そのお客様に見合った国内版のスマホをオススメさせていただきますし、その流れの方が圧倒的に多いかもしれません。
河野さん 物理デュアルSIM非対応の香港版iPhone SE(第2世代)を購入される方もやはり「カメラのシャッター音がしない」というのが1番の魅力みたいです。
これに関しては、香港版iPhone SE(第2世代)の初入荷時に物理デュアルSIMではない旨をツイートしましたが、その後販売が好調なので「物理デュアルSIM非対応でカメラのシャッター音が鳴らないくらいしか国内版との違いはないですが、この価格差(香港版の方が1万円以上高い)でなぜここまで売れるのでしょう?」と購入者に向けて問う形でツイートいたしました。
その際お客様からの返答は「カメラのシャッター音が鳴らないから」でした。以前、「iPhoneのシャッター音は大きいから寝ている赤ちゃんの写真を撮ると起きてしまう」という理由で香港版iPhoneを購入されるお客様がおられました。
シャッター音を気にされるお客様にその理由を尋ねることは流石に踏み込み過ぎですし、理由を聞かせていただけることなどは稀なので、その時は「そういう事もあるんだ」ぐらいに思っていましたが、ツイートで問いかけた際にカメラのシャッター音の有無の比重が大きい方は思っている以上におられるのだなと感じました。
イオシスでは未使用品なら6カ月、中古品なら3カ月保証
河野さん 経年劣化をのぞく自然故障、たとえ「本体を落とした」「システムを弄った」または「メーカーが仕様と認めた症状」等以外で、普通に使っていたのに不具合が生じた場合は初期不良という形で、未使用品なら6カ月、中古品なら3カ月の保証をつけており、再現性が確認できればその場で返金、または交換となります。
自損で故障した場合、新しめの機種であれば香港に有償修理に出す事も可能です。
今秋のiPhone新機種「物理デュアルSIM対応とは限らない」
河野さん iPhone XSシリーズ以降のナンバリングモデルの香港版は、物理デュアルSIMになり一気に人気が爆発しましたが、今年発売されるであろう新モデル(iPhone13シリーズやiPhone12sシリーズとの噂)も物理デュアルSIMかは分かりません。
iPhone12シリーズ発売前に香港版も物理SIM+eSIMになるのではとの噂がありましたので(実際はiPhone12 miniのみ物理SIM+eSIMで他は物理デュアルSIMでした)、今年も保証されているわけではないということです。
あと2カ月と少しで新モデルの発表があると思いますので「新モデルで物理デュアルSIMデビュー」を考えられている方は、気を付けた方が良いかもしれませんね。
まとめ
目にする機会が少ない海外版iPhoneについて、長年の販売経験をもとに売れている理由やユーザー像を詳しく教えていただきました。
海外版とはいえ、「国内で販売されているモデル」に該当しますので、筆者が加入したモバイル保険の対象機種になると思われます(詳しくはさくら少額短期保険に確認する必要あり)。
イオシスは香港版SIMフリーiPhone12 miniとiPhone12 Pro Max入荷時に、YouTubeでライブ配信を行いユーザーからの質問に回答していました。今秋の新iPhoneシリーズでも同様にライブ配信されるかもしれません。
取材協力:イオシス
Photo:LG
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- Original:https://iphone-mania.jp/news-378380/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania