サイトアイコン IT NEWS

普通のスクリーンをホログラフィックディスプレイに変えるVividQ

旧来のスクリーンにホログラムを描画する技術を持つ英国のディープテック企業VividQ(ヴィヴィッドQ)は、次世代のデジタルディスプレイやデバイスに向けた技術を開発するために、1500万ドル(約16億7000万円)の資金調達を行った。同社はすでに米国、中国、日本の製造パートナーを確保している。

シード延長ラウンドとなった今回の資金調達は、東京大学のベンチャー投資部門である東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)が主導し、Foresight Group(フォーサイト・グループ)とWilliams Advanced Engineering(ウィリアムス・アドバンスト・エンジニアリング)の共同出資会社であるForesight Williams Technology(フォーサイト・ウィリアムス・テクノロジー)、日本のみやこキャピタル、オーストリアのAPEX Ventures(エイペックス・ベンチャーズ)、スタンフォードのベンチャーキャピタルであるR42 Group VC(R42グループ)が参加。以前から投資していた東京大学エッジキャピタル、Sure Valley Ventures(シュア・バレー・ベンチャーズ)、Essex Innovation(エセックス・イノベーション)も加わった。

今回の資金は、VividQのHoloLCD技術をスケールアップするために使用される予定だ。同社の主張によれば、この技術は一般的な民生機器のスクリーンを、ホログラフィックディスプレイに変えることができるという。

2017年に設立されたVividQは、すでにArm(アーム)をはじめ、Compound Photonics(コンパウンド・フォトニックス)、Himax Technologies(ハイマックス・テクノロジーズ)、iView Displays(アイビュー・ディスプレイズ)などのパートナー企業と協力して開発に取り組んでいる。

VividQの技術は、コンピューター生成ホログラフィによって「真の被写界深度を持つ本当の3D画像をディスプレイに投影し、ユーザーにとって自然で没入感のあるものにする」ことができるという。同社ではこの技術を、自動車用HUD(ヘッドアップディスプレイ)、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、スマートグラスなどで活用することを目指している。同社はまた、通常の液晶画面をホログラフィックディスプレイに変える方法を発見したとも述べている。

「『アイアンマン』や『スター・トレック』のような映画でおなじみのシーンが、これまで以上に現実に近づいています」と、VividQの共同設立者でCEOを務めるDarran Milne(ダラン・ミルン)氏は語っている。「VividQでは、ホログラフィックディスプレイを世界に初めて提供することをミッションとしています。当社のソリューションは、自動車業界に革新的なディスプレイ製品を投入し、AR体験を向上させることに役立ちます。近い将来には、ノートPCや携帯電話など、パーソナルデバイスとの関わり方も変えるでしょう」。

画像クレジット:VividQ

東大IPCの最高投資責任者である河原三紀郎氏は「ディスプレイの未来はホログラフィです。現実世界と同じ様に見える3D画像を求める声は、ディスプレイ業界全体で高まっています。VividQの製品は、多くのコンシューマーエレクトロニクス事業者が将来に向けて抱く野心を、現実のものとするでしょう」と語っている。

APEX Venturesのアドバイザーであり、Armの共同設立者であるHermann Hauser(ヘルマン・ハウザー)氏は「コンピューター生成ホログラフィは、私たちの周りの世界と同じ3D情報を持つ没入型の投影像を再現します。VividQは人間のデジタル情報への接し方を変える可能性を秘めています」と述べている。

筆者による電話インタビューで、ミルン氏は次のように付け加えた。「私たちはこの技術をゲーミングノートPCに搭載し、標準的な液晶画面でホログラフィックディスプレイを利用できるようにしました。スクリーンの中で、実際に画像が奥行きを持って広がっているのです。光学的なトリックは使用していません」。

「ホログラムとはつまり、基本的に光がどのように振る舞うかを指示する命令セットのことです。その効果をアルゴリズムで計算し、それを目に見せることで、本物の物体と見分けがつかなくなります。それはまったく自然に見えます。現実と同じ情報を、文字通り目に与えているので、人間の脳や視覚システムは現実のものと区別することができません。だから、通常の意味でいうところのトリックは一切ありません」。

もしこれがうまく機能すれば、確かに変革をもたらす可能性がある。UltraLeapのような「バーチャル触感」技術とうまく融合させることも期待できそうだ。

関連記事
ホログラフィックディスプレイのEnvisicsがパナソニックと提携、車内AR技術実現を加速
Looking Glassが2D画像を3Dにするホログラフィック技術のためのソフトを開発
Looking Glassの次期製品はホログラフィック・デジタルフォトフレーム、写真はiPhoneで撮影

カテゴリー:ハードウェア
タグ:VividQ資金調達ホログラムイギリス東大IPC3Dディスプレイ

画像クレジット:VividQ founders

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイルバージョンを終了