子どもたちがある年齢に達するまで、充実したプログラムは学校、スポーツ、キャンプなどに限られており、お金を稼ぐ機会はほとんどない。
しかし現在、 創業1年のロサンゼルス拠点のMighty(マイティ)というスタートアップが、子ども向けのShopify(ショッピファイ)のようなプラットフォームを構築し、子どもたちに新たな選択肢を提供しようとしている。同社は、GOOD誌を創刊した創業者のBen Goldhirsh(ベン・ゴールドハーシュ)氏と、Etsyに5年近く在籍し、Sidewalk Labsのアドバイザーを務めたDana Mauriello(ダナ・マウリロ)氏が率いていて、フィンテック、EdTech、エンターテインメントが交わるところでサービスを提供しているとファミリーにアピールする。
よくあることだが、コンセプトは創業者自身の経験から生まれた。コスタリカに住んでいたゴールドハーシュ氏は、生徒6人という小さな学校に通う2人の娘のことが心配になり始めた。勉強が米国の学校に比べて遅れをとっているのではないかと懸念し、ソフトウェアプラットフォームであるKhan Academy(カーン・アカデミー)を使って放課後に勉強させ始めた。しかし、娘たちの反応は決して良いものではなかったという。
「彼女たちは、『ふざけないでよ、お父さん。学校から帰ってきたばかりなのに、また授業を受けさせる気なの』という感じでした」。
どうすればいいのかわからず、同氏は子どもたちが作っていたブレスレットをオンラインで販売することを勧めた。そうすれば、必要な数学のスキルを身につけることができるだけでなく、起業資金やビジネスプラン(それを書かせた)、マーケティングについても学ぶことができると考えたのだ。この「プロジェクトベースの学習」が成功したことを友人に話すと「うちの子にもやってくれないか」と頼まれるようになったという。
ゴールドハーシュ氏はマウリロ氏がEtsyに入社する前に運営していたクラウドファンディングのプラットフォームに投資していた。時が経ち、ゴールドハーシュ氏とマウリロ氏は、今はまだベータ版のスタートアップMightyの舵取りをし、Mightyは3000人の「CEO」のホームになっている。
この関心は驚くべきものではない。子どもたちは、歴史上最も多くの時間をオンラインで過ごしている。かつて子どもたちを雇っていたような実社会的なビジネスの多くは、規模が縮小している。ベビーシッターや街角でのクッキー売りを除けば、高校以前に仕事を見つけるのは困難だ。米労働省の公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)では、14歳以上を雇用の対象としているからだ。それでも、多くの雇用者は、若い従業員は割に合わない仕事をしているのではないかと心配している。
投資家はこれがかなり堅実な考えだと思っている。Mightyは最近、Animo Venturesがリードする650万ドル(約7億2200万円)のシード資金を調達した。ラウンドには、Maveron、Humbition、Sesame Workshop、Collaborative Fund、ファミリーオフィスのNaHCO3などが参加した。
しかし、子ども向けのプラットフォームを構築するのは難しい。まず第1に、11歳の子どもたちの多くは、自分のビジネスを長期にわたって維持するために必要な粘り強さを持ち合わせていない。ゴールドハーシュ氏は、このビジネスを「21世紀のレモネードスタンド」に例えているが、午後の終わりに消滅しないビジネスを運営するというのとはまったく異なる命題だ。
ゴールドハーシュ氏は、どんな子どもでも、自分のビジネスに「努力」しなければならないとか、一定の軌道に乗せなければならないということを聞きたがらないとを認める。だが、起業家精神が旺盛で、継続的に活動している人もたくさんいると話す。実際、ゴールドハーシュ氏は、今回のシード資金によって、若いCEOたちを満足させるためにやるべきことがたくさんあるという。
例えば、多くの人が不満に思っているのは、自分の手作りの商品をMightyで売ることができないことだ。その代わりに、帽子やトートバッグ、ステッカーなど、自分でカスタマイズしたアイテムを販売してもらい、それをMightyの現在の製造パートナーであるPrintfulが製造し、最終顧客に発送する(Mightyユーザーは、Mighty同様に売上の一部を受け取ることができる)。
また、Mightyは、ナショナルジオグラフィックでも販売を行っているインパクトマーケットプレイスのNovicaと提携し、世界の職人が作った商品を販売することもできるようになった。
最初の段階では、できるだけ摩擦の少ないプロセスを導入することを考えていたが「顧客たちは怒りました。私たちにもっと多くを要求してきました」とゴールドハーシュ氏は述べた。同氏によると、Mightyは今後、小規模な起業家が自分で作った商品を販売できるようにする他、現在はサポートしていないサービスも提供していく予定だという。
収入源としては、売上高に基づく取引手数料の徴収に加えて、まだ公にする準備は整っていないがサブスクリプションサービスを導入することを計画している。
全体的に興味をそそられるが、MightyはShopifyのような既存のプレイヤーとの競争に勝たなければならないかもしれない。また、Mightyがやろうとしていることに対して、子どもの擁護者とまではいかなくても、親たちが反発することも考えられる。結局、起業というものは、気分を高揚させたり、意気消沈させたりするものだ。それは、一部の人が幼い年齢の子どもを乗せたがらないかもしれないローラーコースターだ。
しかし、マウリロ氏は、今のところそのようなフィードバックはないという。例えば、Mightyは最近、若いCEOたちがお互いに励まし合ったり、営業のヒントを交換したりできるオンラインコミュニティを立ち上げ、彼らはそこに積極的に関わっているという。
また、マウリロ氏は、スポーツや楽器を習うように、Mightyでお店を作ることで学べることがあると主張する。ストーリーテリングや売り方もそうだが、重要なのは、若い顧客が「失敗しても立ち直って、またチャレンジすればいい」ということを学んでいることだと同氏は話す。
ゴールドハーシュ氏は「『思っていたよりも難しい』と感じている子どもたちは絶対にいます。ただサイトを立ち上げてお金が入ってくるのを見ていればいいというわけではありません。それでも、子どもたちは、自分たちが目にする成功が、自分たちで稼いだものだという事実を気に入っていると思います」と付け加えた。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Mighty、CEO、オンライン学習、eコマース、子ども
画像クレジット:Klaus Vedfelt
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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi)