「AIは、どこまで人の心を動かせるのだろう」という問いかけをテーマに掲げたヤマハ株式会社のプロジェクト「Dear Glenn」。そのプロジェクト名は、新しいテクノロジーに可能性を見出した伝説的なピアニストと言われるグレン・グールドに敬意を評し、その名を冠したといいます。
そんな「Dear Glenn」が、2021年6月21日~25日にオンライン開催された世界最大規模の広告・クリエイティビティの祭典「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」において、「エンターテインメントライオンズ・フォー・ミュージック」部門の「シルバー」を受賞しました。
独奏も合奏もグレン・グールドのように
大きな特徴は、深層学習によってAIに「グレン・グールドらしい音楽表現」を学習させ、未演奏曲であっても楽譜のデータさえあればすぐに演奏できるということでしょう。
その「らしさ」を学ぶため、グレン・グールド・ファウンデーション全面協力のもと100時間を超えるグレン・グールドの演奏音源を解析すると共に、彼の演奏方法を熟知した複数のピアニストたちの演奏による「ヒューマン・インプット」も施しました。
また、人間と協調して合奏することができるのも特徴のひとつ。共演者である人間の演奏を瞬時に解析し先読みしながら、グレン・グールドらしい表現で息の合った合奏を披露します。
ちなみに、このシステムの初公開は、2019年9月7日にオーストリア・リンツ市で開催されたメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」です。
総エントリー数29,074点
今回の「カンヌライオンズ」は、新型コロナウイルスの影響で中止となった2020年度のエントリーも審査の対象とし、2年度分のエントリーから受賞者を決定。全28部門に90の国と地域から29,074点のエントリーが集まり、「エンターテインメントライオンズ・フォー・ミュージック」部門においては407点の中から18の受賞作品が選出されました。
ヤマハは、2019年のNHKスペシャル『AIでよみがえる美空ひばり』の制作に歌声合成技術「VOCALOID:AI」を提供したり、株式会社博報堂アイ・スタジオと共に「人工知能合奏技術」を搭載した「Duet with YOO」を米国で開催された「SXSW 2018」に出展したりと、AIを活用した音楽表現の拡張に取り組んでいます。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/157733
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口