Blue Origin(ブルーオリジン)は米国7月20日、同社創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を含む4人を宇宙に送るという初の有人飛行を成功させた。何十億ドル(何千億円)という投資、何十回というテスト打ち上げ、超大富豪の創業者間でのささいな喧嘩の結果、今月、2021年7月初めのVirgin Galacticの打ち上げ成功とともにNew Shepardの偉業は間違いなく宇宙旅行の新時代の幕開けを告げている。
かなり報道映えするものだった。ミッションは、テキサス州の小さな町バンホーンから30マイル(約48km)北にあるBlue Originの広大で秘密の施設であるLaunch Site Oneで実行された。打ち上げに先立ち、このイベントのためにやってきた見物客でバンホーンとその周辺の町のすべてのホテルは数日前から満室となった。その一方で、大勢の地元民や米国民、そしてオンライン視聴者(あなたも含め)が米国中部標準時間午前2時半からプレスサイトに群がった。早朝は雨が降るとの予報にもかかわらず、天候は晴れで、万事ほぼ順調に進んだ。
ベゾス氏、同氏の弟マーク氏、18歳の学生Oliver Daemen(オリバー・デーメン)氏、そして航空パイオニアでMercury 13のベテランであるWally Funk(ウォリー・ファンク)氏の4人のクルーはトレーニングセンターから登場し、Rivianの電動SUVであるR1Sで打ち上げ45分前に打ち上げパッドに到着した(ベゾス氏は前回のテストの後に着陸サイトまでRivianのR1Tピックアップトラックを運転した。AmazonはRivianにかなりの額を投資している)。4人のクルーは打ち上げタワーに上り、RSS First Stepと命名されたカプセルに乗り込む前に隣接するシェルターで短い休息をとった。
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打ち上げ15分前でしばし停止があり、これにより打ち上げは予定より若干ずれ込んだ。New Shepardは米国中部標準時間午前8時11分に離陸した。カーマン・ライン(地球の大気圏と宇宙空間との境目)を8時15分に通過し、その後カプセルは分離された。ブースターは同午前8時19分に自動で帰還し、大きな音ともに打ち上げサイトに着陸した。クルーが乗り込んだカプセルはパラシュートを使ってゆっくりと地球に戻り、同午前8時22分に着陸した。飛行時間は11分だった。
飛行は、4月に行われたリハーサル打ち上げを含む、再利用可能なNew Shepardロケットでの15回にわたるテストに続くものだ。4月のリハーサルでは飛行準備とカプセルへのクルー乗船(そして打ち上げ前に下船した)の予行演習も行われた。Blue Originはいま、民間搭乗者を軌道へと送る極めて少数の商業宇宙企業の1社として、ライバルのVirgin Galacticの仲間入りを果たした。
デーメン氏は、オークションにかけられた初の有人フライトの座席を2800万ドル(約31億円)で獲得した匿名の落札者がスケジュールの都合により搭乗を辞退しなければならなくなった後に搭乗メンバーに加わった。オランダのプライベートエクイティファームSomerset Capital PartnersのCEOであるデーメン氏の父親が2番目に高い額をオークションで提示したとCNBCは報じた。宇宙旅行者として、18歳のデーメン氏は史上最年少、82歳のファンク氏は史上最高齢だ。
有人宇宙飛行までの歴史
ベゾス氏はeコマース大企業Amazonの事業開始から6年後の2000年にBlue Originを創業した。Blue Originは宇宙旅行に注力し、同社は今回のフライトを顧客を宇宙へと運ぶのに必要な概念実証ととらえている。そのために、New Shepardカプセルには観光に適した大きな窓がある。同社によると、これは宇宙飛行史上、最大の窓だ。「これらの窓はカプセルの3分の1を覆っていて、広大な宇宙と人生が変わるような我々の青い地球の眺めに浸ることができます」とBlue Originのウェブサイトには書かれている。
打ち上げはまた、ベゾス氏と、同氏の宇宙飛行ライバルである富豪Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏との間で数週間にわたって繰り広げられた小競り合いの集大成でもある。ブランソン氏は10日前に宇宙へと飛んだ。しかし表向きはパンチでベゾス氏を負かしたにもかかわらず、両氏の戦いは実際のところ、ブランソン氏のフライトを宇宙飛行としてカウントするかどうか、Virgin Galacticのロケットで飛ぶ宇宙飛行機VSS Unityが実際に宇宙に到達したかどうかをめぐってのものだった。
この騒動はカーマン・ラインとして知られるものをめぐってだ。カーマン・ラインは国際的に、地球の約60マイル(約96km)上空の宇宙との架空の境界として認識されている。VSS UnityはNASAに認識されている境界を超えて約51.4マイル(約82km)まで飛んだ。「初めからNew Shepardはカーマン・ラインを超えて飛ぶようにデザインされていましたので、当社の宇宙飛行士は名前の横にアスタリスクの記号がつくことはありません」とBlue OriginはVirgin打ち上げの2日前にツイートした。このツイートにはまた、Virginのフライトにさらにケチをつけるインフォグラフィックも含まれた。
From the beginning, New Shepard was designed to fly above the Kármán line so none of our astronauts have an asterisk next to their name. For 96% of the world’s population, space begins 100 km up at the internationally recognized Kármán line. pic.twitter.com/QRoufBIrUJ
— Blue Origin (@blueorigin) July 9, 2021
Blue Originにとって今回のフライトは始まりに過ぎない。宇宙飛行販売担当ディレクターのAriane Cornell(アリアン・コーネル)氏は7月18日にあったミッション前ブリーフィングで「今後行われる打ち上げに申し込んでいる(同社の)未来の顧客の多くと連絡を取っている」と話した。同社は2021年さらに2つの飛行を実施する意向であり、CEOのBob Smith(ボブ・スミス)氏は2回目のNew Shepard有人飛行が9月か10月に実施されると想定している、とコーネル氏は付け加えた。
我々にとって(銀行口座に数百万ドルという遊んでいる金を持たない人にとって)これは何を意味するのだろうか。いわゆる億万長者の宇宙レースはつまらない喧嘩だが、Blue OriginそしてVirgin Galacticの打ち上げは消費者や科学者などにとって宇宙旅行新時代の幕開けとなる。当面は富裕層に限定されるだろうが、TechCrunchのAlex Wilhelm記者が主張するように、今後費用は下がり、科学者や研究者、そしてもしかすると筆者やあなたも含め、多くの人が宇宙に行くようになるかもしれない。
もしあなたがBlue Originの打ち上げを見逃したのなら、こちらのアーカイブ化されたライブストリームで打ち上げの一部始終を閲覧できる。
カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Origin、ジェフ・ベゾス、有人宇宙飛行、民間宇宙飛行、New Shepard
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi)