Visa(ビザ)が参加したラウンドで8000万ドル(約88億円)を調達してから1年半、送金や為替などのサービスを動かすAPIのデベロッパーであるロンドン拠点のCurrencycloud(カレンシークラウド)がさらに金融サービス大手に近づいている。Visaは現地時間7月22日、CurrencyCloudを9億6300万ドル(約1060億円)と評価する取引で同社を買収すると発表した。
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この評価額は最後の資金調達からかなりの飛躍だ。情報筋によると、直近の資金調達でCurrencyCloudは約5億ドル(約550億円)と評価されていた。
(VisaはすでにCurrencyCloudに出資しているため、実際には出資分が引かれた額を支払う)
CurrencyCloudは、マルチ通貨ウォレット、為替サービス、口座管理などを動かすのに同社のAPIを使っている500ほどの顧客を180カ国に抱える。ここにはMonzo、Moneze、Starling、Revolut、Dwollaといった大手スタートアップも含まれる。既存の顧客はそのままに、Visaは金融機関やフィンテックなど自社の顧客に幅広いサービスを提供すべく、また顧客のために新たなサービスを構築するために、為替事業強化でCurrencyCloudのテクノロジーを活用する。
「CurrencyCloudは、小さなスタートアップから多国籍企業まで、すべての人により良い明日を届けるよう常に努力してきました。世界経済で金がどのように動くのか再考することは、Visaに加わる今、さらにエキサイティングなものになりました」とCurrencyCloudのCEO、Mike Laven(マイク・ラヴェン)氏は声明で述べた。「CurrencyCloudのフィンテック専門性とVisaのネットワークの組み合わせにより、国境を超えて金を動かしている企業にさらに大きな顧客バリューを届けることができます」。
送金や通貨振替は金融サービスで一大事業となることが見込まれ、そのチャンスは拡大している。eコマースが特に過去18カ月、かなり国境を越えていること、そしてサプライチェーンも同様であることが要因だ(世界の零細企業の43%が2020年に何かしら国際貿易のようなものを行ったとVisaは指摘している)。そして取引を促進するクラウドベースのモバイルサービスの台頭で、将来の展望において顧客はこれまでになくグローバル化している。
と同時に、送金と通貨振替はディスラプトの機が熟している分野だ。既存のサービスは往々にして高コストで非効率的だ。これらの要素すべてがCurrencyCloudのような会社のお膳立てをしている。同社は他の金融サービスがよりスムーズに行われるようサポートすべく、そうしたサービスに埋め込むことができる通貨振替の新しいツールを構築した。
イグジットは、既存の大手金融会社が次世代の金融サービスへと進むにあたってイノベートして新たなサービスにすぐに取り掛かるのが困難なため、テクノロジーに大きく賭けている小さくて俊敏なスタートアップを取り込むという古典的な例だ。VisaがCurrencyCloudのテックをうまく統合して活用し、CurrencyCloudのチームと協業できるかはすでにテストされたところだ。2社は今回の買収取引の前に戦略的パートナーだった。
「CurrencyCloudの買収は、Visaが世界の金の動きを促進するためのネットワーク戦略のネットワークで実行するもう1つの例です」とVisaのグローバル財務責任者Colleen Ostrowski(コリーン・オストロウスキ)氏は声明で述べた。「顧客や企業は国際送金したり、送金を受け取ったりするときに透明性、スピード、シンプルさをますます期待するようになっています。CurrencyCloudの買収で我々はクロスボーダーの支払いに関する悩みの種を減らして顧客やパートナーをサポートし、クライアントの顧客のためにすばらしいユーザーエクスペリエンスを開発することができます」。
カテゴリー:フィンテック
タグ:Visa、送金、CurrencyCloud、買収
画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi)