電気自動車(EV)のスタートアップであるLucid Motors(ルーシッドモーターズ)が、特別買収目的会社(SPAC)であるChurchill Capital IVと合併することが、米国時間7月23日の株主総会で承認された。ただし、個人投資家の投票数が少なかったため、両社は合併の期限を1日延長していた。
このような問題が起こるのは珍しいが、伝統的なIPO(新規株式公開)を経ずにSPACと合併する企業が増えれば、より一般的になる可能性がある。
この問題が発生したのは米国時間7月22日で、株主は合併の一環として提案された議案のうち、1つを除くすべての議案を承認した。第2号議案は、会社の定款を改定し、重要な資金調達を行うためのもので、他の議案よりも高い定足数を必要とした。合併を実行するためにその議案の承認も必要だったため、定足数に達しなかったことで、結局すべてのプロセスが停止してしまった。
株主が足りなかった原因は、個人投資家がSPACのプロセスに慣れていなかったことと、信じられないことに、スパムフィルターがうまく機能しなかったことにある。
ChurchillのMichael Klein(マイケル・クライン)会長は、株主に送られた電子メールの一部が誤ってスパムフォルダに送られた可能性を指摘した。Gmailのスパムフィルターのようなローテクなものが、数十億ドル(数千億円)規模の企業合併を妨げるとは信じられないかもしれないが、今回のケースではそれが起こった可能性があるようだ。
クライン氏は22日に行われた投資家向け電話会議で「我々は単により多くの票を必要としているだけです」と述べた。Lucid MotorsのCEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏も「第2号議案に投票していただきたい」と直言した。
「多くの方にとって、この投票プロセスが初めてであったり、標準的でないことを認識しています」とクライン氏は続けた。同氏はその後、多くの個人株主に感謝の意を表しつつ「新しいプラットフォームや新しいアプリから参加している」株主に議決権行使を促した。「それらのツールは必ずしも議決の場へはっきりと導いてくれるわけではないのかもしれません」。
パンデミックが始まって以来、アマチュアトレーダー、いわゆる「リテールトレーダー」の数が爆発的に増加した。大きく寄与したのはRobinhood(ロビンフッド)のようなアプリだ。ゲーミフィケーション戦略を活用して、ユーザーがどこからでも株式を売買できるようにしたのだ。この現象の極めつけは、GameStopやAMC entertainmentのような破綻企業の株式の爆発的な価格上昇として歴史に刻まれることになるだろう。価格上昇は、「r/wallstreetbets」というサブレディット上のリテールトレーダー軍団によって引き起こされたのだ。モルガン・スタンレーのレポートによると、米国の株式取引量に占める個人投資家の割合は約10%で、2020年9月の最高15%から減少している。
しかし、ミーム株の価格上昇が何かを示しているとすれば、それは個人投資家が強力な力を持っているということだ。モルガン・スタンレーのレポートによると「個人投資家は一般消費財、通信サービス、テクノロジーなど、消費者が親しみやすいセクターの企業を好む傾向がある」という。これが、Churchill SPACが多くの個人投資家の目に留まった理由かもしれない。
サブレディット「r/SPACs」に投稿された高評価の記事の中で、あるReddit(レディット)ユーザーは、新規の個人株主に議決権行使を促した。「これは普通じゃない。SPACが株主に自らの利益のために行動するよう懇願する必要が生じたことなどなかった。必ず議決権を行使して欲しい。行使しなければならない。不投票はイエスとはみなされない。不投票はただの不投票だ」。
Lucidの合併延期は、ミーム株取引とはまったく異なるシナリオだが、個人投資家が引き続き市場を形成しているという新たなリマインダーだ。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車、Lucid Motors、SPAC
画像クレジット:Lucid Motors
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi)