サイトアイコン IT NEWS

無重力状態が続く「地球外」工場実現を目指すVarda Space Industries

Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)は、シリーズAで4200万ドル(約46億2000万円)を調達し、微小重力という地球の外でしか得られない重要な特性をモノづくりに導入する。

創業8カ月のこのスタートアップは、早ければ2023年に最初の製造施設を宇宙空間に建設する。無重力状態が続く環境下でのみ可能な高度な製品を製造し、地球に持ち帰ることを目指している。

今回のラウンドはKhosla VenturesとCaffeinated Capitalがリードし、既存の投資家からLux Capital、General Catalyst、Founders Fundが参加した。2020年12月に行われた900万ドル(約9億9000万円)のシードラウンドを含め、同社のこれまでの累計調達額は5000万ドル(約55億円)を超えた。

Vardaの構想は、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のそれとは異なる。ベゾス氏は2021年7月初め、自ら宇宙に行った後「すべての重工業および地球を汚染する産業を地球の外へ移したい」と語った。Vardaの共同創業者である元SpaceXのWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders FundのプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏は、軌道上にセメントミキサーや製鉄所を置こうとは考えていない。むしろ、地上では不可能な製造プロセスを開拓し、バイオプリントした臓器、光ファイバーケーブル、医薬品など、地上とは根本的に異なる条件を必要とする製品を製造したいと考えている。

関連記事:Blue Origin初の有人飛行成功、ベゾス氏ら4人が宇宙を体験

未来の宇宙工場を建設

ブリュイ氏とアスパロホフ氏によると、微小重力環境下での製造の価値は、本質的には科学の前哨基地である、国際宇宙ステーションに見出すことができるという。ここ数十年、国際宇宙ステーションから、宇宙で新しい素材や製品が可能であることを示す研究が次々と発表されている。だがこれまでは、軌道上に行き、滞在し、帰還することにコストがかかりすぎ、研究成果の規模を大きくすることができなかった。

ブリュイ氏はTechCrunchの取材に対し「ある意味では、私たちの研究開発の多くはすでに公的機関で行われています。私たちは本質的に、すでに実証された研究を商業化する橋渡しの役割を担っているのです」と語った。

現在、同社は3つのモジュールからなる宇宙船を製造している。既製の衛星プラットフォーム、微小重力下での製造を行うセンタープラットフォーム、材料を地球に持ち帰るための再突入ビークルというモジュールだ。ブリュイ氏によると、最初の10回程度の打ち上げでは、Vardaが自ら製品を製造するという。また、長期的には、宇宙で製品と製造したいと考えている他の企業のための受託製造プラットフォームを目標としている。

アスパロホフ氏は、これをiPhoneとApp Storeに例える。「iPhoneは、App Storeと一緒に登場したわけではありません。Apple(アップル)はその価値を共有するために、最初に10~11個のアプリを開発しました。そこで私たちは、最初の数個のアプリを自分たちで開発し、私たちが市場に持ち込むこの商業的能力の価値を示そうと思いますが、やがてはアプリストアをリリースするようになるでしょう」。

Vardaの計画で重要なのは、製造のすべてを自動化することだ。(少なくとも現時点では)人間の関与をなくし、宇宙船の開発を人間が行うこと(およびそれにともなう有人宇宙船打上げの安全性に関する懸念)を回避し、間接費を大幅に削減することができる。

規制当局や国防総省を招いて行われた予備的なデザインレビューの様子(画像クレジット:Varda Space Industries)

「投資家やNASA、国防総省から私たちのアプローチが高く評価されているのは、これまで『宇宙における製造』を議論してきた他のすべての企業と比較して、私たちが最もゴールに近く現実的で、商業的にも実行可能なアプローチであるからだと思います」とアスパロホフ氏は語る。

さらに同氏は「宇宙における製造」の考え方として、Vardaが微小重力環境にモノを運ぶために必要な費用は単位質量あたり1ドル(約110円)であり、微小重力環境での製造で得られる価値も単位質量あたり1ドルである(約110円)と話す。収益性の鍵は、その2つの方程式の差を最大化する製品を見つけることだ。例えば、新規の医薬品は、無重力から得られるイノベーションの利益が高ければ高いほど、莫大な利益を得ることができる。

同社は2023年に「複数回のミッション」を想定しており、その後は四半期に1回、さらには1日に複数の再突入カプセルが製品とともに戻ってくると想像している、とブリュイ氏はいう。そのくらいの頻度で打ち上げと再突入が予定されたとしても、それを満たすほど宇宙で製造される新しい製品への需要の規模は潜在的に大きい、とVardaの共同創業者らは確信している。

宇宙旅行のような急成長産業に比べ、宇宙における製造は人類により多くの影響を与える可能性がある、とブリュイ氏は話す。

「人類が地球上で経験するさまざまなことに影響を与え、生活の質を大幅に向上させることができるでしょう」。

関連記事
再利用可能ロケット開発iRocketがわずか2年以内の商業化を目指しNASAと新たに提携
ヴァージン・ギャラクティックのマイク・モーゼス社長が語る、成長を続ける同社の次なる展開
ブルーオリジン初の有人宇宙飛行後、ベゾス氏とクルーが記者会見「より重大なミッションの練習」

カテゴリー:宇宙
タグ:Varda Space Industries資金調達工場製造業

画像クレジット:Varda Space Industries

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

モバイルバージョンを終了