サイトアイコン IT NEWS

ウォルマートがAdobeと提携し自社のeコマーステクノロジーを他の小売業者に提供

Walmart(ウォルマート)は、実店舗を中心とした小売事業から、対面販売とオンラインショッピングを融合したビジネスへの転換を図るために投資してきたソフトウェアや小売テクノロジーを、初めて他の小売業者にも提供すると、米国時間7月28日に発表した

ウォルマートは、新たに提携を結んだAdobe(アドビ)との戦略的パートナーシップを通して、Walmart Marketplace(ウォルマート・マーケットプレイス)へのアクセスや、さまざまなオンラインおよび店舗におけるフルフィルメントやピックアップに関するテクノロジーを、Adobe Commerce Platform(アドビ・コマース・プラットフォーム)に統合する。

これらテクノロジーは、Adobe Commerceと(アドビが買収した)Magento Open Source(マジェント・オープンソース)のどちらの顧客も利用できるようになると、アドビは述べている

これはつまり、ウォルマートは数千もの中小規模の小売業者に、世界最大級の小売業者が事業運営に使用しているのと同じツールを、実質的に利用できるようにさせるということだ。

この提携により、アドビの顧客である小売業者は、商品を受け取れる店舗や時間をオンラインで表示することができ、カーブサイド(道路の路肩)や実店舗内など、複数の受け取り方法を提供することが可能になる。店員にモバイルツールを供給して、注文の受け取りや商品選択の確認、代替品の取り扱いなどができるようにしたり、商品を注文した顧客がカーブサイドに到着する時間を店員に知らせるなど、受け取り注文に関して顧客とのコミュニケーションを図るさまざまなツールを利用することができるようになるわけだ。

また、今回の提携によって小売業者は、ウォルマート・マーケットプレイスに自社の商品を配給して販売することもできるようになる。

この提携は、小売テクノロジーによる新たな収益源を提供し、ウォルマートの収益に貢献することを目的としているだけでなく、ウォルマートがAmazon(アマゾン)とオンライン小売の覇権を争う上での新たなツールとして機能する可能性もある。

小売業者は、Adobe Commerceプラットフォームを利用して、ウォルマート・マーケットプレイスに商品を掲載し、全米各地に2日で商品を配送するウォルマートのフルフィルメント・サービスを活用することで、これまでよりも広い顧客を相手に商売できるようになる。

そしてウォルマートにとっては、これまでアマゾンに大きく水をあけられている、マーケットプレイスで販売可能な商品数を増やすことができる。

ウォルマートのマーケットプレイスは、第三者機関の推計によると、新型コロナウイルス感染流行の影響によるオンラインショッピングの急増により、2020年には推定7万人の出品者数を抱えるまでに成長した。これは2019年に比べて2倍以上の増加だ。Marketplace Pulse(マーケットプレイス・パルス)のデータによると、現在ウォルマートのマーケットプレイスの出品者数はさらに増えて10万人を突破しているとのこと。一方、アマゾンのマーケットプレイスは、全世界で推定630万人の総出品者を数え、そのうち150万人が現在アクティブに活動していると推定されている。

ウォルマートがマーケットプレイス事業を拡大する上で問題となっている可能性があるのは、売り手にとっての使いやすさに関することだ。ウォルマートのマーケットプレイスは、アマゾンに比べてはるかに使いづらく、プラットフォームで販売が承認されたかどうかについて、ウォルマートから返事が来るまで何カ月も待たされるという苦情が、多くの中小販売業者から寄せられている

アドビとの提携は、このような問題の解決に役立つ可能性がある。

アドビは、他のチャネルソリューションを単一の統一された拡張機能に統合することにも取り組んでおり、顧客の小売業は、アカウント設定やカタログの編纂が容易な統合されたツールを使用して、アマゾンを含む複数の販売チャネルで販売することができる。

ウォルマートが自社の小売テクノロジーを他の企業に提供するのは、これが初めてだと同社は述べている。また、この新しいパートナーシップがどのような収益をもたらすかということについては、まだ予測していないとのこと。しかし、アマゾンも最近は、AIやコンピュータービジョンを活用したキャッシャーレス決済「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」システムのような、斬新な小売イノベーションの投資収益率を最大化することを追求している。ウォルマートの動きはこれに続くものと言えるだろう。

「Scan & Go(スキャン&ゴー)などのチェックアウト技術や、AIを活用したスマートな代替品推奨機能、ピックアップ&デリバリーなど、あらゆるアイデアの中心には、人々が金銭的負担を減らし、より良い生活を送るための手助けをするという私たちの中核的な使命があります」と、ウォルマート・インクの最高技術責任者および最高開発責任者を務めるSuresh Kumar(サレシュ・クマーシュ)氏は、声明の中で述べている。そして「コマースエクスペリエンスを提供するアドビの強みと、当社の比類なきオムニカスタマーの専門知識を組み合わせることで、私たちは他の企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させることができます」と続けた。

両社の発表によると、米国においてアドビの顧客の小売業者は、2022年初頭からウォルマートのテクノロジーを自社のストアフロントに統合できるようになるとのこと。価格やその他の詳細については、導入時期が近づいたら発表される予定だ。

今回の発表は、チャネルパートナーとしてアドビと提携することで技術の再販に役立てるというものだが、ウォルマートには小売業者を直接対象とするGoToMarket(ゴートゥマーケット)チームもある。

関連記事
ウォルマートが25の配送センターにSymboticのロボットを導入
ウォールマートのグローサリー配達用AIがより賢くなっている
ウォルマートがAIやコンピュータービジョンを駆使したバーチャル試着のZeekitを買収

カテゴリー:ネットサービス
タグ:WalmartAdobeeコマース小売

画像クレジット:Nicholas Kamm/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイルバージョンを終了