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【寄稿】自動運転関連技術のCOOが教える「契約策定と交渉のベストプラクティス」

2014年に設立されたStradVision, Inc.は、高度な運転支援システム(ADAS)向けの画像処理AI技術のパイオニア。現代自動車やLGエレクトロニクス、IDG Capital、アイシングループなどからの出資を受け、ソウル、サンノゼ、東京、ミュンヘンに拠点を構え、データアルゴリズムのエンジニアをはじめとする170名以上のチームによって、完全自律走行車両の実現を促進すべく事業を展開している。

自動車に関する技術は進歩を続けています。すでに一般の車両にはレーンキープアシストや、衝突軽減ブレーキといった機能が搭載されるようになりました。自動運転技術は特に日々ニュースでキーワードを耳にします。

このように自動車には非常に多くの要素、テクノロジーが詰まっています。本稿はそれらを提供する企業と企業で構成される経済圏、ビジネス展開についてお伝えしたいと思います。

自動車産業の経済圏は自動車産業を支えてきたいわゆる大手メーカーから、先端技術を研究・開発する私たちのようなスタートアップ、ベンチャー企業が参画し、拡大しています。

さまざまな立場で多くのプレイヤーが存在するとはいえ、私たちは自動車という1つの製品を作るため、ひいては安心で安全なモビリティサービスを消費者ならびに社会へ提供するため、友好的なパートナーシップに基づくビジネス関係の構築が求められます。

以下では、多くの経験から、パートナーシップを締結する際、立場の異なる2社が双方にとって中長期的で包括的な成功を収められる交渉のポイントをお伝えしたいと思います。

    1. 目標を知る
      どのような契約でも、それぞれに達成したいことがあるはずです。ビジネスにおいて、どのフェーズにいるのかを認識し、契約に臨む目的と具体的な内容について、交渉前に詳細の考えを詰め、見通しを立てておきましょう。プロジェクトが完了するまでの期間内に達成すべきこと、そしてもちろん関連する金額などの問題は、パートナーシップを進める前にパートナー候補と解決しておく必要があります。
      双方にとって適切な目標を持つためには、交渉の前に適切なリサーチを行い、どこにシナジーがあるのか、お互いがパートナーシップに貢献できることは何かを知る必要があります。
    2. 妥協できるポイントを把握しておく
      理想の目標を念頭に置いて交渉に臨むべきですが、妥協が必要な場合もあることを理解し、交渉を始める前にどの程度の柔軟性を受け入れることができるかを決めておきましょう。また交渉中に、許容範囲に影響を与えるような新しい情報が明らかになることもあります。
      状況の変化に注意を向けつつ、常に現段階のベストはどこかを探っていきましょう。
    3. 柔軟性を持つ
      柔軟に、契約内容や提供するサービスなどを変更できることも重要です。ビジネスを成功させるためには、RFQ(見積もり依頼書)に記載されたクライアントの要件を満たす機能と性能に焦点を当てる必要があります。
      クライアントのさまざまな要求に応えるために、ソフトウェアのカスタマイズや最適化を提案し、期待を上回るパフォーマンスを提供することに細心の注意を払いましょう。
    4. 成功を示し、データを提供する
      OEMやTier1サプライヤーなどの大手企業との交渉では、自社のビジネスのユニークな点や競合他社との違いを示すことが重要です。自分の専門分野で何が優れているのかをアピールしましょう。公開された特許の数や、特許発行までの時間の短さなど、パートナー候補との信頼関係を築くために重要な成功事例などが挙げられますが、このように過去に達成した成果と経験が、新しいパートナーシップの成功にどのようにつながるのかを、具体的にデータで示しましょう。
      1でも触れましたが、それらがどのようにシナジーを生むのかも整理して伝えることが重要です。
    5. 相手のニーズ、情報に耳を傾ける
      基本的なことかもしれませんが、交渉時には不可欠な要素です。相手の話に耳を傾けることは、自社の情報を相手に伝えることと同じくらい重要です。よくよく話を聞いてみると、予想していなかった形で交渉の流れが変わるかもしれません。
    6. リスクを軽減する
      交渉中に対処すべき重要事項のチェックリストを作成し、重要なトピックを忘れないようにしましょう。
      また、交渉中に契約内容が変更された場合は、何かあったときのためにすべてのバージョンを記録しておきましょう。たとえ暗黙の了解だと思っていても、重要な点を契約書から外してはいけません。複雑な問題を引き起こすだけです。法的な根拠を網羅し、機密性を確保します。
      このような細かい配慮は、双方が同じ見解を持ち、将来的に誤解が生じないようにするために不可欠です。
    7. 契約テンプレートと確立された言語
      契約書やパートナーシップの作成や承認が遅れる要因の1つに、技術的な言葉や詳細、プライバシーや機密性を確保するために盛り込まなければならない法的な言葉に囚われてしまう状況があります。
      このような遅延を避けるためには、使う言葉を標準化し、契約ごとに書き直す必要がないようにするのが重要です。技術的・法的な文言を都度考えずに済む分、パートナー候補との信頼関係の構築に集中できる時間が増えます。
    8. ワークフロープロセスの確立
      契約書のレビューや承認の遅れは、契約に関するワークフローが確立されていないことにも起因します。法務担当者や経営陣など、各パートナー企業で契約書を確認する必要がある人は、承認の順番や、フィードバックを受けてからの変更方法など、確立された手順が必要です。
      特にスタートアップ、ベンチャーにおいてはワークフロープロセスが確立されていないことが多いものです。特に優先度の高い契約前においては、早めに社内で調整を行いましょう。プロセスが確立されておらず、契約締結が遅れる危険性があります。
      ただ、すべての契約において同じフローをとる必要はないでしょう。リスクが少ない案件では、契約のワークフローを簡略化したり、半自動化してスムーズに進めることもできます。
    9. 既存の契約を更新または拡大する
      新規のクライアントを獲得するだけでなく、契約のライフサイクル管理の重要性も認識しておきましょう。既存の契約の状況を認識し、既存のパートナーとの強固な関係を維持し、将来の機会に基づいてパートナーシップを拡大できるかどうかを検討することが重要です。
      契約期間の終了前から数カ月前には遅くともパートナーシップの見直しを行い、プロジェクトの契約継続や終了について話し合いを行いましょう。パートナーシップの定期的な見直しが、関係性の安定につながります。

機密性が高く、かつ企業ごとに個別のシーンが想定できるため、具体的すぎるアドバイスは書ききれませんが、基本的に上記9つに気を遣いながら交渉を進められれば、少なくとも、両社にとって、大きなダメージを与えるような契約を交わしてしまうことはないでしょう。ぜひ参考に交渉を進めてみてください。

著者Sunny Leeについて:
 ペンシルベニア大学ウォートンスクールを卒業し、MBAを取得。先進運転支援システム(ADAS)向けのAIベースのカメラ認識ソフトウェアのパイオニアである韓国のテクノロジー企業StradVisionのCOOを務めている。現在Sunnyは韓国、米国、中国、インド、ドイツ、および日本での事業開発とグローバルオペレーションを担当しています。
 以前は、 NaverLabsのモビリティ製品のオーナーだった。彼女の以前の役割には、シカゴを拠点とする経営コンサルティングリーダーであるATカーニーのシニアビジネスアナリスト、およびエンタープライズソリューション部門のLGエレクトロニクスのサンディエゴオフィスのシニアマネージャーも含まれる。また彼女はFlex-KPMG AutomotiveSummitAutotechCouncilなど、数多くの自動車および技術イベントで講演および発表を行ってきた 。

 

カテゴリー:寄稿
タグ:StradVision自動運転先進運転支援システム

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