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靴箱サイズのモジュール式エネルギー貯蔵ブロックを開発するMGA Thermalが6.5億円調達

MGA Thermalの共同創業者であるエリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏

MGA Thermal(MGAサーマル)は、靴箱サイズの蓄熱ブロックで、電力会社の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を支援したいと考えている。同社によると、1000個のブロックを積み重ねると小型車ほどの大きさになり、27世帯の電力24時間分を蓄えられるという。これがあれば、太陽光発電や風力発電に適さない天候のときでも、電力会社は大量のエネルギーを蓄え、送電する準備が整えられる。また、ブロックがモジュール化されているため、石炭火力発電所などのインフラをグリッドスケールのエネルギー貯蔵へ転換することも容易になる。

MGA Thermalは現地時間8月2日、800万豪ドル(約6億4800万円)を調達したとを発表した。累計の資金調達額は900万豪ドル(約7億2900万円)となった。今回の資金調達を主導したのは、豪州の国立科学機関が設立したベンチャー企業のMain Sequenceで、最近2億5000万豪ドル(約203億円)のファンドを新たに立ち上げた。また、Alberts Impact Capital、ニュージーランドのClimate Venture Capital Fund、The Melt、CP Venturesの他、Chris Sang(クリス・サング)氏、Emlyn Scott(エムリン・スコット)氏、Glenn Butcher(グレン・ブッチャー)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Erich Kisi(エリッヒ・キジ)氏とAlexander Post(アレクサンダー・ポスト)氏はニューカッスル大学で約10年間、混和性ギャップ合金(MGA)技術の研究開発に携わった後、豪州のニューカッスルを拠点とするMGA Thermalを2019年4月に創業した。MGA技術を平易に説明するよう求められたキジ氏は「おいしい」例え話をした。

MGA Thermalのブロックは「基本的には、熱すると溶ける金属粒子を不活性のマトリックス材に埋め込んだものです。ブロックは、電子レンジで加熱されたチョコチップ入りのマフィンのようなものだと思ってください。マフィンは、加熱したときに全体の形を保持するケーキ部分と溶けるチョコチップで構成されています」とTechCrunchに話した。

「チョコチップを溶かすエネルギーは蓄積され、マフィンを噛んだときに口の中をやけどさせることができるほどです。融解エネルギーは、単に何かを加熱するよりも強力であり、融解温度付近に集中しているため、エネルギーを一貫して放出することができます」。

MGA Thermal社のモジュール式エネルギー貯蔵ブロック(画像クレジット:MGA Thermal)

MGA Thermalのブロックに蓄えられたエネルギーにより水を加熱すれば、蒸気タービンや発電機を動かすことができる。ブロックはこのシナリオにおいて、水を汲み上げたり沸騰させたりするための内部チューブを備えていたり、熱交換器と連動する設計となっている。キジ氏によると、MGA Thermalのブロックを使えば、長い日照時間や強風のときに通常ならスイッチを切ってしまう再生可能エネルギーによる発電を、老朽化した火力発電所とともに継続することができるという。

他の熱エネルギーソリューションとしては、ブロック状や顆粒状の安価な固体材料を断熱容器の中で高温に加熱する方法がある。だが、こうした材料の多くは、熱エネルギーの移動が苦手で、温度制限があるとキジ氏はいう。つまり、熱エネルギーは放出されると温度が下がり、効果が薄れてしまうのだ。

熱エネルギーを貯蔵する別の方法としては、再生可能エネルギー源で加熱された溶融塩をホットタンクに貯蔵する方法がある。高温の塩は熱交換器に送られて蒸気となり、低温の塩は冷たいタンクに戻される。

「このシステムは、集光型太陽熱発電では広く使われていますが、それ以外の場所ではほとんど使われていませんでした」とキジ氏は語る。「その理由の多くは、ポンプやヒーターを配管するために巨額のインフラコストが必要になるため、また、塩の凍結防止に大量の電力を浪費するためです」。

MGA Thermalはニューサウスウェールズ州に製造工場を建設中であり、商業レベルのブロック生産を目指している。また、今後1年間でチームを倍に拡大し、毎月数十万個のブロックを生産できるようにする。また現在、スイスのE2S Power ASGや米国のPeregrine Turbine Technologiesなどの提携先と協力して、豪州、欧州、北米での技術展開を進めている。例えば、E2S Power AGは、MGA Thermalの技術を利用し、欧州で運転を終了したか、稼働中の石炭火力発電所を再利用する予定だ。

MGA Thermalの技術は、発電所の改造、オフグリッドストレージの構築、遠隔地のコミュニティや商業スペースへの電力供給など多くの産業用途があるが、消費者の化石燃料の消費を抑えることもできる。例えば、MGAのブロックは、各家庭の屋根にある太陽光パネルや小型風力発電機が発電した余剰エネルギーの貯蔵に使える。そのエネルギーは暖房に利用することができる。

「世界では30億人もの人々が燃料を燃やして家を暖めていると言われています」とキジ氏は話す。「特に寒冷地では、それが大量の二酸化炭素発生の原因となっています」。

Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーチン・デュールズマ)氏は声明で「私たちの新しいファンドが特に力を入れているのは、科学的な発見を実際に使える確かな技術に変え、気候変動の影響を逆転させる支援を行うことです。エリッヒ・キジ氏とアレクサンダー・ポスト氏の印象深い研究経歴、彼らの専門家チームと革新的技術が、グリッドスケールのエネルギー貯蔵への道を開き、世界中で再生可能エネルギーの未来の可能性を広げると考えています」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:MGA Thermal資金調達再生可能エネルギー電力エネルギー

画像クレジット:MGA Thermal

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

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