パンデミックで、しかもロックダウンなら、およそあらゆる小売企業がオンラインのプレゼンスを作らなければならないし、しかも速くそれをする必要があった。大量の人びとがオンラインで買い物をするようになると、その体験を個人化することがなお一層重要になる。そのため、eコマースのマーケティングを個人化するプラットフォームであるBluecoreにとって、パンデミックは大きな転換期となり、今日は10億ドル(約1102億3000万円)の評価額によるシリーズEの1億2500万ドル(約137億8000万円)を発表する運びとなった。
これまでの投資家であるGeorgianがこのラウンドを仕切り、その他の既存の投資家FirstMarkとNorwest、そして新規の投資家Silver Lake Watermanが参加した。同社によると、これで同社の総調達額は2億2500万ドル(約248億円)になる。
BluecoreのCEOで共同創業者のFayez Mohamood(ファイズ・モハモッド)氏によると、これまでのリテールの行動範囲といえば、もっぱら多くの人流を物理店やウェブサイトに向けることだった。しかし多くの企業がオンライン化するにともなって、顔のない人流ではなく、個々の顧客との対話の仕方が重要になってきた。
モハモッド氏は次のように説明する。「この変化は本物であり、Bluecoreは今や、リテールに特化したマルチチャネルの個人化プラットフォームです。私たちは特に、基本的に3つのタイプのデータを結びつける。まず、顧客のアイデンティティ。そしてショッパー(買い物客)のビヘイビア。そして最も重要なのが、リテイラーの商品カタログだ。そしてそれを使って、さまざまなチャネルで個人化された体験を発動していきます」。
同社が創業されたのは2013年だが、その頃から個人化という概念を重視し進化させてきた。モハモッド氏によると、パンデミックでデジタルへの移行が決定的になり、そこは同社の土俵だ。そしてこの大きな流れがあるために、今回の調達を決意した。
「個人化は常に重要だったが、リテイラーがそれから得る価値はデジタル化の拡大とともに大きく加速されました。そしてそれは誰にとっても、収益のより大きな部分を占めるようになっています。特に2020年はその重要性が決定的になりました」とモハモッド氏は語る。
同社の成長は加速し、雇用も増えた。2020年5月にはBluecoreの従業員は236名だったが今は300を超え、年内に400を超えそうだ。モハモッド氏によると、会社が大きくなればなるほど、ダイバーシティとインクルージョンの重要性が増す。従業員たちが、彼らが仕える顧客のダイバーシティを反映していなければならないからだ。
「それは役員レベルから始まります。今私が誇りに思うのは、うちの役員チームが男女ほぼ半々であることです。私たちには、中心的な従業員を代表する委員会があって、常にダイバーシティと平等とインクルージョンをチェックしている。多様性と包容性のある職場といっても、考え方や発想のレベルだけでなく、毎日のアクションがそうなることが何よりも重要です。OKRって、そういうことだよね」とモハモッド氏は語った(OKR、具体的な成果と結果を重視する目標管理手法)。
今度のシリーズEで評価額が10億ドルになり、モハモッド氏の視野には上場がある。しかしそれは喫緊の目標ではなくて、今後もあくまでも利益より成長を追求していく。「私たちの考え方は、まずブランドの力というものがあって、それに支えられてプロダクトの改善や多様化に向けた投資が可能になります。そしてそれによって私たちの市場性が上がれば、上場も無理なく可能です。しかし私たちは、利益よりも成長を追っていくため、非上場のままの方が動きやすいかもしれません」とモハモッド氏はいう。
そして、手元に1億2500万ドルもあれば、そっちを選ぶ自由も十分にある。
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タグ:Bluecore、資金調達、eコマース、マーケティング
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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)