Space BD株式会社は、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」からの衛星放出事業などにおいて、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の民間パートナーに選定されています。2020年10月には、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機で行う超小型衛星放出技術実証ミッション事業を受託しました。
そしてこのたび、JAXAが実施する同技術実証ミッションに関して、超小型衛星の打上げに係る各種申請・安全審査サポートなどを含む準備作業全般に関する業務提携を日本大学理工学部 航空宇宙工学科と締結しています。
衛星の軌道寿命を延ばす
「HTV-X」は、宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV)」に続く新型無人補給船。ISSへの物資補給、軌道上技術実証や実験利用に係るプラットフォーム提供に加え、将来的には月周回有人拠点(Gateway)への物資輸送や国際宇宙探査への活用も期待されているようです。
大きな特徴は、ISSよりも高い軌道(最大約500km)からの衛星放出ができるということ。これにより、従来のISSからの放出では半年~1年程度とされていた衛星の軌道寿命を1年~数年程度に延ばすことができるといいます。この「HTV-X」1号機は2022年度に打ち上げられる予定です。
宇宙線観測や宇宙エンタメに挑む
そんな「HTV-X」1号機に搭載されるのが大きさ約30㎝×約20㎝×約10㎝、重さ約12kgの超小型衛星「てんこう2」。その中には、先進的なカメラ、通信機、マイクロコンピュータなどが搭載されています。なお「てんこう2」は、2018年にSpace BD協力のもと日本大学が打ち上げた地球低軌道環境観測衛星「てんこう」の後継機です。
「てんこう2」は「HTV-X」から放出後、 地球の周りを高エネルギーで飛び交う粒子(宇宙線)の分布などを観測し、未解明な部分が多い「宇宙線」の解明に貢献します。また、高解像度のカメラを用いた地球観測、アマチュア無線帯を用いた新しい宇宙通信技術の確立も行うとのことです。
さらに、日本大学理工学部と芸術学部の連携ミッション「N.U Cosmic Campus」も展開。これは、世界中の人たちと一緒に曲を作ったり、絵を描いたりすることで、世界と宇宙がひとつのキャンパスになったかのような体験を提供するアート活動です。
「きぼう」での実験事業にも参画
Space BDの直近の動向の中で注目したいのが、JAXAによるISS「きぼう」での高品質タンパク質結晶生成実験事業における唯一の民間パートナーになったことでしょう。同実験事業では、宇宙空間特有の微小重力環境を活用し、地上実験では得られない高品質なタンパク質の結晶生成に挑戦。高品質な結晶を用いてタンパク質の立体構造をより詳細に解明し、基礎科学の発展や創薬支援などライフサイエンスの産業に応用するようです。
同社は2021年5月6日にJAXAと基本協定書を締結し、同実験事業の運用準備作業を請け負います。その中でさまざまなノウハウをJAXAから継承しつつ、専用のスマートフォンアプリなどの新たなITシステムの導入によって実験システムの利便性向上・効率化を目指すとのこと。また、提供される一部の実験機会を活用して同社独自のサービスを展開し、国内外の市場を開拓していく構えです。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/159341
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口