2020年に全パワートレーンの電動化を達成したボルボ「XC60」。先日その最新モデルで300km超のロングドライブを楽しむ機会を得たのだが、そこではいくつかの新しい発見があった。
日本上陸から3年半あまり。その間、絶え間ない進化を続ける最新型XC60は、走りも安全性も、そして燃費も、まさに熟成の域に達していたのである。
■電動化=単なるエコじゃないのがユニーク
ロングドライブに出掛けると、何度か乗ったことのあるクルマでも新たな発見があることが少なくない。それは、長い距離を走ることでクルマの本質が現れるからだろう。先日ドライブしたボルボのXC60も、まさにそんな1台だった。300km以上ハンドルを握ってみたところ、改めて気づかされる美点が多々あったのだ。
現行のXC60がデビューしたのは2017年のこと。ターボとスーパーチャージャーで過給した2リッター4気筒エンジンにモーターを組み合わせた「T8 ツインエンジン」と呼ばれるPHEV(プラグインハイブリッド車)をフラッグシップとし、ガソリンターボの「T5」や「T6」、クリーンディーゼルターボの「D4」など、多彩なエンジンをラインナップしていた。
しかし2020年春、PHEVを除くすべてのパワートレーンが刷新された。ディーゼルターボのD4は廃止となり、T5とT6というガソリンターボは2リッター4気筒ターボという形式こそ不変だが、気筒休止機構を組み込むなどエンジン自体に大改良を施した上で、エンジンのクランクとベルトを結んだモーター兼発電機“ISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)”を搭載。低回転域からの加速をアシストしたり、スムーズなエンジン始動をサポートしたり、運動エネルギーを回生してバッテリーモジュールを充電したりするマイルドハイブリッド仕様となった。
そのベーシック仕様は「B5」と呼ばれるが、そこに電動スーパーチャージャーをプラスした300馬力の高出力版「B6」も用意。世の中のトレンドに反応して電動化を推進しつつ、電動スーパーチャージャー付きのパイパフォーマンスバージョンを投入して“単なるエコ”に走らない辺りが、最近のボルボの面白いところだ。
■なめらかなステアフィールに感動
そんな最新XC60の中から今回ロングドライブのパートナーに選んだグレードは「B5 AWD インスクリプション」。パワートレーンは、2リッター4気筒ターボエンジンにISGMを組み合わせたベーシック版だが、装備類は上級のレザーシートやフロントシートベンチレーション、19インチのタイヤ&ホイール、エクステリアのクロームパーツなどがおごられる。
今回のロングドライブにおける最初の発見は、走り始めてすぐに感じられた。ステアフィールがとてもなめらかだったのだ。ハンドルを回す際のタッチが軽く、フリクションが少なくて引っ掛かる感じが皆無。それでいて、ハンドルとタイヤとのダイレクト感や、タイヤが路面に接している感覚はしっかり感じられる。そのため、コーナリング時のタイヤの切れ角調整も緻密に行え、ハンドルを切るとドライバーが意図する通りにクルマがスッと向きを変えていく。それはまるで、サッとよく切れて扱いやすいナイフのような感覚だ。
XC60は、いつからこんなステアフィールを身につけるようになったのか? それとも最初からこうだったのか? 記憶をたどると、2020年4月に追加されたマイルドハイブリッド仕様は、それまでとは乗り味が大きく変わっていたことを思い出した。
デビュー当初のXC60は、乗り味にある程度の硬さがあり、それはそれでスポーティに感じられた。しかし、マイルドハイブリッド仕様が設定された後のXC60は、パワートレーンだけではなくクルマ全体がブラッシュアップされ、まるでハンモックに寝そべっているかのような優しい乗り味を手にした。その進化の際に、ステアフィールも変わっていたのだろう。
ただ当時は、進化の著しいパワートレーンのフィーリングを探るのに一生懸命で、ステアフィールの変化にまでは気づけなかったようである。しかし今回、改めてロングドライブに連れ出してみて、その自然なフィーリングに感動させられた。
■軽快かつしなやかなフットワークに変身
そしてもうひとつ「いいね!」と感じたのは、軽快なフットワークだ。今回の試乗車はエアサスペンションが装着されていたこともあり、車重は約1.9トンという重量級。にもかかわらず、交差点をゆっくりと曲がる時から高速道路でのレーンチェンジ、そして、峠道で深く曲がり込んだコーナーを曲がる際まで、どんなシーンでもクルマの重さを感じさせない軽やかな身のこなしが印象的だった。
2017年秋の上陸当初から、現行XC60のフットワークはキビキビとしていて、峠道などでもスポーティな走りを楽しめる味つけだった。けれど、今回の試乗車のように軽快だったかといわれれば、そうではなかったように思う。デビュー後熟成が進み、気がつけばしなやかな乗り味をも身につけていたようである。
そして、高速道路を巡行していて改めて発見したのは、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の秀逸さだ。まずは、ハンドルに付くボタンをひと押しするだけで作動する点が気軽でいい(日本車は自主規制により不可)。そして、作動時のフィーリングもドライバーの感覚に逆らうことがなく、安心して操作を任せることができる。
今では多くのクルマに搭載されるACCだが、その良し悪しを判断する基準は「どれだけドライバーの感覚に寄り添った制御を行えているか?」だ。前方を走るクルマがいなくなったり、逆に、前方にクルマが入ってきたりした時などに、ドライバーが「遅すぎる」とも「早すぎる」とも感じない絶妙なタイミングで加速/減速できるか否かが評価の分かれ目となる。
もちろん、ドライバーを不安にさせる動きなどは最も評価の低いパターンだが、XC60のACCにはそんな素振りが一切ない。まるでドライバーの意思を先読みするかのようにスマートに加減速してくれる。車線をトレースするよう制御してくれるハンドルアシスト機能も同様だ。
それらのおかげもあって、XC60で高速走行した際の疲労感は驚くほど少ない。ボルボは早いうちから先進運転支援システムの開発に力を入れ、ACCも他社に先駆けて搭載していた。それによる膨大なノウハウの蓄積が、ドライバーの感覚に寄り添った巧みな制御へとつながっているのだろう。
さて、新しい発見の多かったXC60でのロングドライブ。その行程は300kmを超えるものだったが、半分以上は街中から峠道まで含む一般道というルートだった。おまけに暑いから、エアコンだって全開だ。そんな厳しい条件の中、XC60がマークした平均燃費は11.7km/L。カタログ記載値のWLTCモード燃費が12.3km/Lであることを考えれば、わずかに劣るだけというのは立派な数値。約1.9トンという重量級SUVとしては、予想以上の燃費といえるだろう。
その上、XC60はキャビンもラゲッジスペースも十分広いから、ドライバーだけでなく同乗者も快適なロングドライブを楽しめる。キャンプを始めとするアウトドアレジャーのアシに、これほどマッチしたモデルはそう多くないはずだ。
<SPECIFICATIONS>
☆B5 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4690×W1900×H1660mm
車重:1940kg(エアサスペンション/サンルーフ付き)
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ+モーター
エンジン最高出力:150馬力/5400〜5700回転
エンジン最大トルク:35.7kgf-m/1800~4800回転
モーター最高出力:13.6馬力/3000回転
モーター最大トルク:4.1kgf-m/2250回転
価格:739万円
文/工藤貴宏
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/391953/
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