米国運輸安全委員会(NTSB)のJennifer Homendy(ジェニファー・ホメンディ)委員長は、Tesla(テスラ)に対し、同社の先進運転支援システムがドライバーに誤用されないように設計を変更するよう求めた。
TechCrunchが閲覧したこの書簡は、NTSBが4年以上前に出した2つの安全勧告をTeslaがまだ実施していないことに懸念を示している。これらの安全勧告に対応する緊急性は現在、Teslaがいわゆる「フルセルフドライビング(FSD)」ソフトウェアベータ版を通じて、より多くの自動運転機能を展開していることで高まっている。
ホメンディ氏は「貴社の車両に関わる我々の事故調査では、誤使用の可能性があるため、安全性を確保するためにはシステム設計の変更が必要であることが明確に示されています」と記している。Teslaにもコメントを求めているが、回答は得られていない。
NTSBは勧告を行うだけで、既存の法律を施行したり、政策を決定する権限はない。
ホメンディ氏は、NTSBが調査してきたさまざまな事故や事件の後、TeslaがNTSB調査官に協力していることに感謝しつつも、書簡の大部分を使って、Teslaが「NTSBの重要な安全勧告を実施していない」ことへの深い懸念を述べている。
一部抜粋する。
貴社はこれまで「Teslaの設計においては、常に安全性が第一の要件である」と述べてきました。ウィリストン、デルレイビーチ、マウンテンビューで発生した致命的な事故の原因となった設計上の欠陥をまず解決することなく、最近の発表では、Teslaのドライバーは、高速道路と市街地の両方で動作する「フルセルフドライビング(FSD)ベータ版技術」へのアクセスを要求できるということで、以前の発言は裏切られました。
Tesla車の設計において安全性を最優先することを真剣に考えているのであれば、4年前に私たちが出した安全性に関する提言を完全に実行していただきたいと思います。
NTSBは、道路における悲劇や負傷を防ぎ、人命を救うためのさまざまな技術の導入を長年にわたり提唱してきましたが、そのような技術を導入する際には、すべての道路利用者の安全を第一に考えることが極めて重要です。私たちの安全に関する提言についてのアップデートをお待ちしています。
2017年、NTSBは、Joshua Brown(ジョシュア・ブラウン)氏が乗ったTesla Model S(モデルS)セダンが、進路を横切ったトラクタートレーラーに衝突して死亡した事故の調査に基づき、同社に対して2つの安全勧告を出した。この事故では、Teslaの先進運転支援システムであるAutopilotが作動していた。同局は、ブラウン氏がAutopilotを、システムが想定していない道路で使用していたことや、長時間ハンドルから手を離し運転していたことを明らかにした。Autopilotはハンズフリーシステムではない。
NTSBは、TeslaのAutopilotシステムは、ドライバーがステアリングホイールを握る動作を効果的に監視し、それに対応してドライバーのエンゲージメントを確保していないと判断した。同局はTeslaに対し、Autopilotを設計時の条件に限定するセーフガードを設け、さらに「ドライバーのエンゲージメントレベルを効果的に感知し、自動車両制御システムの使用中にエンゲージメントが不足している場合はドライバーに警告する」方法を開発するよう勧告した。
Teslaは、Autopilotなどのいわゆるレベル2の運転支援システムについては、許容される動作環境をドライバーが決定するため、運用設計領域(ODD)の制限は適用されないと主張している。ホメンディ氏はマスク氏に宛てたメールの中でこの主張に反論し、当局の事故調査では「誤用される可能性があるため、安全性を確保するためにシステム設計の変更が必要であることが明確に示されている」と指摘した。
またホメンディ氏は、レベル2の運転自動化システムを搭載した車両を持つ他の自動車メーカー5社に、ドライバーの関与を促し警告する方法を適用するよう勧告を送ったことにも言及した。ホメンディ氏がマスク氏に宛てた書簡によると、これらのメーカー5社はNTSBに回答し、ドライバーのエンゲージメントレベルをよりよくモニターするために計画している、または実施している行動を説明したという。
「Teslaは、この勧告について公式に回答しなかった唯一のメーカーです」と同氏は書いている。
画像クレジット:Tesla
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)