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元アップル社員が起ち上げたBild、クラウド上でのハードウェア設計の共有・共同作業を行うツールを提供

Apple(アップル)でハードウェアエンジニアリング・プログラムマネージャーを務めていたPradyut Paul(プラデュット・ポール)氏は、eメールやスプレッドシートといった旧式のツールを使ってハードウェア製品を構築・共有することの難しさを身をもって体験した。


設計が遅れたせいで何十万ドル(数千万円)もの費用をかけて迅速な出荷を行った後、ポール氏はハードウェアをより早く開発し、より多くの設計を検証するために、他のチームと連携するもっと良い方法があるはずだと考えた。

このようなコラボレーションをクラウドで行えるようになれば、組織全体のチームが設計プロセスをより簡単にレビューできるようになり、製品リリースのスピードアップにつながる。そのためにポール氏はアップルを退社し、2020年にCTOのAvinash Kunaparaju(アビナッシュ・クナパラジュ)氏、COOのDerrick Choi(デリック・チョイ)氏とともに、Bild(ビルド)を起ち上げた。

Bild共同創業者のプラデュット・ポール氏とアビナッシュ・クナパラジュ氏(画像クレジット:Bild)

「私たちは、エンゲージメントをクラウドに移行するというアイデアを思いつきました」と、ポール氏はTechCrunchに語った。「それは単なるやりとりではなく、非常に多くの関係者が関わり、受信箱が基本的にコミュニケーションの保管場所になります」。

同社は米国時間10月25日、シードラウンドで300万ドル(約3億4000万円)を調達したと発表した。この資金は、顧客獲得、セールス、マーケティングの分野でチームを強化し、新規ユーザーに向けたセルフサービス体験を構築するなど、製品開発を継続するために使われる。今回の資金調達は、Tola Capital(トラ・キャピタル)が主導し、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Techstars(テックスターズ)が参加した。

ユーザーは、Bildのウェブベースのビューアを使って、3D CAD、ボードファイル、部品表、回路図、図面、シミュレーションデータなどを操作することができる。従来はこれを、スクリーンショットを共有したり、対面ミーティングでやっていた。

機械系エンジニアに特化したデザインレビュー管理や、ファイルの共同編集など、個々のペインポイントに取り組んでいる企業は他にもあるが、それらをすべて考慮に入れて、しかも会社全体で管理しているのはBildだけであると、ポール氏は確信している。

「別のチームに属している人々に、可視性を提供することは困難です」と、ポール氏は続ける。「私たちが注目していることの1つは、ハードウェアの将来性とソフトウェアとの連携をどのように強化し、両者がコラボレーションできる環境をどうやって作るかということです」。

これまでBildは、25社の企業を対象としたプライベートベータテストを行っていたが、今回の資金調達の発表に併せて、そのソフトウェアを一般にも公開した。初期の顧客の一部は有料顧客に変更されたが、価格戦略についてはまだ検討中であると、ポール氏は述べている。

Bildのコラボレーションツール(画像クレジット:Bild)

次に同社が取り組んでいることは、実際に見たときとコンピューター上で見たときのギャップを小さくするために、CADモデルをさまざまな視覚や方法で見せられるようにすることだ。

ハードウェア市場は500億ドル(約5兆7000億円)から700億ドル(約8兆円)規模の産業であり、まだデジタル化が進んでいないと、Tola CapitalのプリンシパルであるAkshay Bhushan(アクシャイ・ブーシャン)氏は述べている。

例えば、Autodesk(オートデスク)のような大企業は、これまでこの分野を壁で囲っていたが、リモートで働く人が増えたことにより、ハードウェアとソフトウェアが融合し始めていると、同氏は付け加えた。

「Bildは、すべてのエンジニアが抱えているであろう問題を解決し、ペインポイントを喜びに変えています」とブーシャン氏は語る。「プラデュットとアビナッシュは顧客志向で、顧客も認識しているこれらの問題を見据えていました。誰もが同じようなメールやプロセスのトラッキングに異なる名称を与えていましたが、Bildが行っていることに価値と機会を見出したのです」。

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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