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三菱「アウトランダー」はココがスゴい!存在感、上質感、走行性能が飛躍的に進化

三菱自動車の「アウトランダー」が8年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目へと進化した。新型における最大のトピックは、日本市場向けは全車PHEV(プラグインハイブリッド)仕様となったこと。さらに装備の充実や上質感のアップなど、見どころ満載だ。

そんな新型のプロトタイプを、発売に先立ちサーキットでドライブ。気になる実力を検証した。

■先代の好評を受けて日本向けはPHEVに一本化

先頃フルモデルチェンジで進化した新型アウトランダーの日本向けは全車PHEV仕様で、純粋なガソリンエンジン車の設定がなくなった。海外市場向けは引き続きエンジン車も用意されるが、日本向けはひとまずPHEVだけのラインナップとなる。

この先、日本向けにもエンジン車が投入される可能性はゼロではないが、三菱自動車によると「現時点では検討中」だという。こうした動きは、日本市場ではPHEV仕様が好調だったことの裏返しでもある。実際、先代の日本における販売比率は、約7割がPHEVだったそうだ。

2012年末、初代アウトランダーのPHEVを発表した際、三菱自動車はメディアに対して、まず「PHEVとは何か?」というところから説明しなければならなかった。PHEVは、大型のバッテリーを搭載し、外部からの充電を可能にしたハイブリッドカーのことだが、当時、市販されているPHEVといえばトヨタの「プリウスPHV」しかなく、まずはその概念から解説する必要があったのだ。

あれから9年が経ち、PHEVを取り巻く環境は大きく変わった。欧州メーカーからも多くのPHEVが登場し、彼らはその普及のために比較的割安な価格で提供している。その背景にあるのは、欧州メーカーにとって二酸化炭素排出量に応じた罰金を回避するのに、PHEVはEV(電気自動車)と並んで“都合のいいツール”だという事実だ(平均燃費のカウントにボーナスが生じるため)。

一方、ユーザー視点に立つと、PHEVは近距離ではEVのようにエンジンを止めてガソリンを使わずモーターだけで走れる一方、EVとは違って給油をすることで長距離移動をこなせるという魅力がある。つまりPHEVは、ユーザーに不便を強いることのないエコカーなのだ。

■パッケージング一新でPHEVにもサードシートを用意

そんな中、新しいアウトランダーはどのように進化したのだろうか?

まず注目は、パッケージングの進化である。先代アウトランダーのエンジン車には3列シート車が存在したが、PHEVには2列シート車しかなかった。それに対して新型は、PHEVながら3列シート車を用意。先代のPHEVに3列シート車がなかった理由は、PHEVシステムの搭載によってサードシートを組み込むスペースを確保できなかったからだが、新型はその点において工夫を施してきた。

気になるサードシートの居住性はどうか? ほめたいのはその着座姿勢だ。SUVのサードシートは、フロアと着座位置との高低差が不足し、“体育座り”のような着座姿勢を強いられるのが一般的だが、新型アウトランダーはそうではない。しっかりと高低差が確保され、ごく自然な姿勢で座れるのだ。ただし、ヒザ回りのスペースは十分とはいいきれず、あくまで近距離移動用なのは他のSUVと同じである。

加えて興味深いのはラゲッジスペースだ。サードシート展開時はフロアが低いこともあって、奥行きが不足気味ながら機内持ち込みサイズのスーツケースを3個積めるよう工夫されている。

また、サードシートを畳んだ状態では、まるでサードシートが始めから存在していなかったかのように、フロア下にスッキリ隠れてしまうのが魅力。巧みなシート設計であることがうかがえる。

中には、「全長が伸びたからサードシートを組み込めるようになったのでは?」といぶかしがる向きもあるかもしれないが、新型の全長は4710mmと、先代に対して15mmしか伸びていない。ただし全幅は、先代比60mmプラスの1860mmで、このクラスのSUV界の常識に合わせた国際サイズになっている。

■プレミアムブランドのPHEVに負けない充実装備

インテリアで印象的なのは、先進性と上質感が備わっていること。

例えば、インパネ回りでは9インチのセンターディスプレイを標準装備するほか、12.3インチのフル液晶メーターパネルも装備。さらに10インチのカラーヘッドアップディスプレイも採用するなど、先進感においては国産同クラスのSUVでダントツだ。

一方、インパネ表面には本物のステッチやレザーのソフトパッドを組み合わせるほか、「P」グレードのセンターコンソールには本物のアルミを組み合わせるなど、上質感が高い。

また一部グレードでは、シート表皮やドアトリムにダイヤモンドキルティングを施し、高級車の定番ともいうべきセミアニリン仕上げの本革をあしらうなど、クラスを超えた上質感に驚かされる。

さらに、左右のフロントシートとリアシートを3つのスペースに分け、それぞれ最適な温度設定が可能な3ゾーン式エアコンや、リアドアのウインドウをさえぎるサンシェードなど、このクラスとしては望外なほど快適アイテムが充実している。

では、なぜ新型アウトランダーはここまで上級志向なのか? その答えは、PHEVを搭載するSUVを取り巻く環境にある。北欧やオランダではPHEVの販売比率が高いが、そこでアウトランダーと競合するのはメルセデス・ベンツの「GLC」やBMWの「X3」など、欧州プレミアムブランドのモデルたち。ちなみに先代も、マイナーチェンジでフロントシートの設計を2度も変更し、表皮もどんどんラグジュアリーになった歴史があるが、新型も強力なライバルと戦っていくために、国産同クラスの水準を超える充実装備を採用したのである。

気になるメカニズムは、プラットフォームからPHEVのシステムまで全面的に刷新されている。

PHEVの要といえるバッテリーやモーターも大型化され、動力性能は大きく向上した。従来から継承されているのはエンジン(2017年2月の改良で排気量が2.4リッターへアップした)くらいだが、そのエンジン自体も各部がリファインされ、燃費と出力が向上している。

PHEVといえばさまざまな機構が存在するが、アウトランダーのそれは駆動力のほとんどをモーターで生み出す仕掛け。その時、バッテリー残量が十分ならば、エンジンは掛からない。しかし、バッテリーの残量不足など状況次第では、エンジンが発電機に徹し、電力の供給源となる。

ちなみに、走行環境によってはエンジンの力を機械的にタイヤへと伝えることもあるが、その範囲はかなり限定的。また、前後ツインモーターの4WDとし、前後の駆動力を自在にコントロールして走行性能を高めているのも特徴だ。

■コーナーをグイグイと曲がっていく様子はスゴいのひと言

先日、そんな新型アウトランダーのプロトタイプに試乗する機会を得た。正式発表前ということで舞台はサーキットだったが、SUVにはハードな試乗コースと思われたものの、新型は難なく駆け抜けてくれた。

まず驚いたのは走行中の“エンジン感”がないこと。サーキットは平均速度が高く、エンジンが掛かる領域も広い。しかし、新型アウトランダーはエンジンが存在を主張することなく、まるでEVのようなドライブフィールを味わわせてくれる。また、エンジンが掛かったとしても、とにかく静か。遮音ガラスや遮音材など、数々の工夫も静粛性向上に貢献しているが、車速に対して違和感のないエンジン回転数を保つなど、メカニズム自体がエンジンの存在を感じさせないように制御されている。

モーター駆動による加速のなめらかさと速さはさすがだが、走り味の魅力はそれだけではない。背が高く車両重量が重いSUVのPHEVであるにもかかわらず、まるで路面に張り付いているかのように走行中の安定感が高く、それでいてスッと曲がる俊敏さも兼ね備えている。

おまけに、コーナーをグイグイと曲がっていくさまは、スゴいのひと言。実はこれこそが、新型アウトランダーが搭載するPHEVシステムの真骨頂といえる。三菱自動車のPHEVシステムは、駆動力の前後配分に加え、“AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)”というクルマの曲がり方を管理する制御に基づき、ブレーキを使って左右輪の駆動力をコントロールし、旋回性能を高い次元へと磨き上げている。ちなみにAYCのブレーキ制御は、従来モデルはフロントのみだったのものを、新型ではリアまで支配下に置くことで、しっかり曲がるPHEVに仕上げている。

個性的なエクステリアに、ラグジュアリーで装備も充実したインテリア、そして、三菱自動車のDNAがしっかり息づく走りの楽しさ。その上で、使い方や走り方によっては、走行中に二酸化炭素を排出せず環境にも優しい。新しいアウトランダーは、そんな多彩な魅力を備えた注目の1台だ。

<SPECIFICATIONS>
☆P
ボディサイズ:L4710×W1860×H1745mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:2359cc 直列4気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:133馬力/5000回転
エンジン最大トルク:19.9kgf-m/4300回転
フロントモーター最高出力:116馬力
フロントモーター最大トルク:26.0kgf-m
リアモーター最高出力:136馬力
リアモーター最大トルク:19.9kg-m
価格:532万700円

>>三菱「アウトランダー」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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