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ナチュラルメタル感が魅力!メッキキット「飛燕」完成!【達人のプラモ術<飛燕>】

【達人のプラモ術】
タミヤ
「1/48 川崎三式戦闘機 飛燕1型丁」03/04

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

メッキキットならではの難しさをテクニックを駆使して仕上げてきた「飛燕」ですが、製作はいよいよ大詰め。大判の迷彩デカールを貼って、迷彩塗装を再現していきます。

*  *  *

今回製作した飛燕のキットは、ナチュラルメタル(無塗装)を再現したリアルなシルバーメッキだけでなく、第244戦隊の高島俊三少尉搭乗機として製作する場合の機体全面に施されたグリーンの蛇行迷彩を、塗装ではなくデカールで再現できてしまうのがポイントになっています。塗装のハードルが高い迷彩をデカールで再現できるのはありがたいのですが、複雑なフォルムの機体に大判のデカールを貼りこむのはなかなか大変。そこで今回はデカールの貼りのコツとフィニッシュワークを解説していきます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■デカールとは?

デカール(水転写シール)は、水に浸すことで吸水性の台紙の糊が溶けてデカール本体のフィルムが剥離し、使用できます。

▲キットには迷彩デカールと国籍マークや部隊マークが配された2枚のデカールが付属

デカールはある程度の柔軟性があるので、貼り込むパーツの形状に馴染ませられ、リアルな仕上がりを得られるのですが、フィルムは薄くラフに扱うと簡単に破けてしまうので扱いは注意が必要です。

では、「飛燕」にデカールを貼りながら、基本的な使い方や扱う際の注意点を見ていきましょう。

 

【デカールの基本①】水に漬けたままはNG

デカールを、水に漬けたままにして台紙からフィルムが浮いてくるまでそのままにしておくのは✕です。デカールの糊は水溶性なので、漬けたままにしておくと糊が水に溶け出してしまい、デカールフィルムの接着力がなくなります。

▲フィルムの糊成分が水に溶けてしまうのでデカールは水に漬けっぱなしにしないこと

フィルムは濡れているので貼ることはできるのですが、乾くと剥がれてしまうといったトラブルの原因になってしまいます。台紙全体に水が染み込む(30秒前後)まで漬けたら水から出して、そのままにしておけば糊が溶けて、台紙の上でデカールフィルムが動けば準備OKです。

 

【デカールの基本②】なるべく指で触らない

デカールは薄く破けやすいフィルムです。だから、指でつかむと破れる、小さなデカールは指側に貼りついてしまう、あるいは丸まってしまう、といったトラブルの原因になります。台紙から剥がす場合は、必ずピンセットを使います。

▲台紙からデカールフィルムを剥がす際にはできるだけピンセットを使いたい

ちなみにデカールがクルリと丸まってしまった場合は、慌てず騒がず、再度水の中に漬けてください。しばらくすると、ほどけてくれます。ただしそのまま持ち上げるとまた丸まってしまうので、水の中に剥がした元の台紙を入れてピンセットで台紙の上にフィルムを移してやればリセットできます。

 

【デカールの基本③】貼る際には台紙からスライドさせる

デカールはスライドマークとも呼ばれています。デカールフィルムを台紙ごと貼る位置まで持っていき、台紙からフィルムをスライドさせてパーツ表面を移すことから、スライドマークと言うワケです。

▲台紙は事前にデカールごとにカットしておく

▲貼る位置に台紙を持っていき、台紙を引き抜くようにデカールフィルムを機体の表面にスライドさせていく

細いデカールは台紙から剥がすと丸まってしまう、切れやすいといったトラブルが起こりやすく、また大きなサイズのデカールでは気泡が入ってしまうこともあります。台紙からフィルムをパーツ表面にスライドさせることで、こうしたトラブルを抑えられます。

▲主翼も同様に台紙からデカールをスライドさせていく。主翼は凹凸がほとんどないので貼りやすい

 

【デカールの基本④】大判デカールは分割してもOK

迷彩デカールは、胴体は上下2枚、主翼は1枚といった大判のデカールで、特に胴体下側のデカールは主翼の付け根部分を挟むようにラジエターまで1枚になっているので、貼るのもなかなか大変です。そこで回り込んだ部分を事前にカットして、別々に貼るようにしてやれば作業がグッと楽になります。

▲胴体デカールのラジエター部分(矢印の部分)はそのままでは貼りづらい

▲貼りづらい部分は事前にカットしておき別々に貼ることで作業が楽になる

 

【デカールの基本⑤】貼った後の位置修正はたっぷりと水をつける

デカールを機体に貼ったあと、正しい位置にスライド(移動)させるのですが、フィルムは糊が効いているのでスライドしにくい場合があり、無理に動かそうとすると破れてしまいます。デカールの位置を修正する場合は、たっぷりと水をつけてやれば、簡単に動かせます。

▲デカールを貼る部分にもたっぷりと水を塗りこんでおくことで貼ったとの位置修正を楽にできる

▲位置が決まったら綿棒やティッシュを使いデカールの内側から水分を押し出していく。その際にデカールの位置がずれてしまったら、再び水を含ませて修正する

▲主翼上面のフムナ等注意書き類は迷彩デカールの上から貼っていく

 

■貼付け後はしっかりと乾燥させる

デカールは貼った後に水分を拭き取りパーツの表面に密着させて、乾燥すればしっかりと定着します。しかし乾燥していない(水分が抜けていない)状態で触れてしまうと、しわが生じたり、気が付いたら曲がっていたなんてこともありがちです。なので貼ったデカールは乾燥するまで触らないのが基本です。ちなみに曲がった、しわが寄ったといったトラブルは、デカールが完全に乾いていなければ修正可能です。

▲凹凸のある部分は綿棒を使い馴染ませていく。デカールとパーツの間に空気が入っていたら針などで穴を開けて押し出す

▲デカールを貼ったあとヘアドライヤーの温風をあてることで、より密着させられ、乾燥も早くなる

 

■デカール軟化剤を使う

デカールのフィルムは質も良く、曲面にもよく馴染むのですが、機首左側の過給機用空気取口や主翼前縁の機銃口などは、凹凸があるためなかなかデカールが密着してくれません。

こうした場合は、デカール軟化剤(タミヤ「マークフィット」、Mr.ホビー「Mr.マークセッター」)を使うことで、しっかりと密着させられます。

▲タミヤ「マークフィット」はデカールを柔らかくする軟化剤。Mr.ホビー「Mr.マークセッター」は軟化剤に糊の成分も含まれている

▲垂直尾翼に貼るデカールにはパーツの凹凸に馴染ませるために軟化剤を使いたい

 

■キャノピーの枠はフィニッシュシートで再現

キャノピーは、塗装だとメッキ部分との質感の違いがでてしまうため、前回メッキパーツの合わせ目の修正で使用したフィニッシュシート(チタンフィニッシュ)を細くカットして、貼りこむことでキャノピーの枠を再現しています。

▲メッキの胴体と違和感が出ないように細くカットしたフィニッシュシート(チタンフィニッシュ)を貼ってキャノピーの枠を再現

 

■「飛燕1型丁」シルバーメッキ仕様完成!

駆け足で製作を紹介してきましたが、最後はデカールをしっかり乾燥(12時間~自然乾燥)させたのち、キャノピー、別に組み上げておいた主脚、主翼下増槽タンクを瞬間接着剤で取り付けていきます。

▲塗装とデカールで仕上げた主脚パーツ

プロペラは暗褐色に塗装後に、先端の黄色もあえてデカールを使って仕上げました。ナチュラルメタルな機体を再現したメッキ仕様のキットと迷彩デカールの組み合わせ、塗装はコクピットやプロペラなど最低限で抑えることでキットの魅力を最大限活かした仕様で仕上げています。

▲プロペラは塗装。先端の黄色はデカールを貼っている

メッキ仕様というと、オモチャっぽい仕上がりになってしまうんじゃないのと思われがちですが、いやいや喰わず嫌いはいけませんね。塗装では再現できない機体のナチュラルメタル感は実に魅力的。金属表現や迷彩塗装が苦手という方にもぜひ作っていただきたい良キットです。

▲機体の裏面は迷彩がないので、よりメッキによる金属感が強調された仕上がり。増槽のみシルバーで塗装している

 

★達人作「1/48 川崎三式戦闘機 飛燕1型丁」

 

★達人流制作のポイント!

①デカールはドライヤーの温風を使って密着

②貼りにくい場所はデカールを分割カットして貼る

③張った後のデカールの位置修正はたっぷりの水を使う

 

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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