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日本で2番目に売れてる輸入SUV「Tロック」がガソリンターボという武器を手に入れた

これまでディーゼル車のみのラインナップだったVW(フォルクスワーゲン)のミッドサイズSUV「Tロック(T-Roc)」に、スムーズな回転フィールと低回転域からの力強い走りを兼備したガソリンターボ仕様が加わった。

新たな心臓を得て、ますます人気がアップしそうなTロック・ガソリンターボ仕様の魅力を探る。

■2021年上半期に日本で2番目に売れた人気モデル

輸入車のSUVの中で、2021年の上半期に日本で最も多く売れた車種をご存知だろうか? 答えはVWの「Tクロス」。全長4.1mほどのコンパクトなモデルで、小さなボディからは想像もできないパッケージングの良さと、エントリーグレードで300万円を切るプライスタグが魅力となっている。

ではその次、2番目に売れたモデルはどれだろうか? 実は同じVWのTロックなのである。強豪ひしめくこのジャンルにおいてワン・ツー・フィニッシュを決めるとは、さすが日本で最も馴染みのある輸入車ブランドだ。

今回はそんなTロックに追加された新しい仕様をご紹介しよう。2020年7月から日本に導入されているTロックだが、上陸当初のパワーユニットはディーゼルエンジンしか用意されていなかった。そんな中、2021年5月に加わったのが、1.5リッターのガソリンターボエンジンだ。

■ディーゼルのみの設定が価格帯の上昇を招いていた

Tロックの立ち位置は、Tクロスよりひと回り大きく、「ティグアン」よりひと回り小さいという2台の中間。全長は4240mm(スポーティグレードの「Rライン」は4250mm)と短めで、SUVとしてはホイールベースに対してリアのオーバーハングが短く、同ブランドの主力モデルである「ゴルフ」をリフトアップしたようなプロポーションだ。

Tロックの室内空間は、全長が短い割にバランスよくまとめられている。実用性に定評のあるゴルフに近いレイアウトで、特にリアシートの足下スペースはしっかり確保されている。また、フロアに対して後席の着座位置が高く設定されていることで良好な乗車姿勢をキープでき、居心地がいいというVW車の伝統的な美点も継承している。

リアのオーバーハングが短いため、外から見た時には小さく思えるラゲッジスペースも、実際には445Lと結構広い。この数値は、全長がTロックより長いホンダ「ヴェゼル」やマツダ「CX-30」を上回るもので、Tロックの空間づくりがいかに巧みであるかを物語っている。こうした使い勝手の良さは、まさにゴルフ譲りといってもいいだろう。

このように、パッケージングの面で見どころの多いTロックだが、日本導入当初はディーゼルエンジンしか設定がなく、その弊害として価格帯の上昇を招いていたことは否めない。上陸当初のベーシックグレード「TDIスタイル」のプライスタグは384万9000円で、これは弟分に相当するTクロスのエントリーグレードに対し、約100万円も高かった。それでも、日本で2番目に売れた輸入SUVとなったのは立派である(TDIスタイルも装備類の見直しによって現在は375万円まで値下げされている)。

■デザインパッケージは断然ハイコスパ

そんなTロックのラインナップに新たに加わったのが、1.5リッターの4気筒直噴ガソリンターボエンジンだ。

小排気量とはいえ、ターボチャージャーの助けを借りることで最高出力は150馬力を発生。一方、一定速での巡行時などエンジンの負担が軽い状況では、気筒休止機構によって4つのシリンダーのうちのふたつの燃焼を止めるなど、ガソリンを節約するための機能も盛り込んでいる。単に「ガソリンエンジンを用意しました」というだけでなく、しっかりと環境にも配慮したセレクトなのだ。

ディーゼルターボを積む「TDI」に対して、ガソリンターボ搭載車はグレード名に「TSI」と表記される。グレードは「TSIスタイル」と「TSIスタイル デザインパッケージ」の2タイプが用意され、後者はブラックまたはホワイトのルーフカラーが選べたり、外装色がラヴェンナブルーメタリックの場合はインテリアもブルーでコーディネートされたりするのが特徴だ。

加えて、デザインパッケージはボディカラーが特別なだけでなく、タイヤサイズが1インチアップの17インチとなり、さらに、非接触式キーや電動リアゲートといった便利機能、LEDヘッドライト&ハイビームアシストやコーナリングライト、そして、リアビューカメラなど視認性を高める装備もプラスされている。それでいて、価格は19万円アップにとどめているのだから、Tロックのガソリン車を選ぶならデザインパッケージの方が断然ハイコスパだ。

ちなみに、ディーゼル車に設定されている「スポーツ」や「Rライン」といったスポーティグレードが、ガソリン車には設定されないのが面白いところ。スポーティ仕様といえば、一般的にはディーゼル車よりガソリン車といったイメージだが、Tロックではそうではないのだ。

■ガソリンターボ仕様も持て余すほどの加速力

そんなTロックのガソリン車に対して「ディーゼル車に比べるとトルクが薄く、走りが物足りないのではないか?」と考える人もいるかもしれない。確かに34.7kgf-mという極太トルクのディーゼルエンジンに比べると、ガソリンエンジンはトルクが薄いのは否めない。

しかし、実際に運転してみると、ガソリン車でも発進加速はグググッと力強く、「力強さは十分以上」というのが正直な感想だ。最大トルクは25.5kgf-mと、2.5リッターの自然吸気ガソリンエンジンに匹敵。そんな厚いトルクを1500回転という低い回転域から発生するのだから、コンパクトなTロックには十分以上である。むしろディーゼル車の力強さは過剰ともいえ、ガソリン車は“これでも持て余すほど”の加速力といっていいだろう。

一方、キビキビと向きを変えるハンドリングフィールや、高速域での安定感の高さはさすがドイツ車といったところ。しっとり系の乗り味のモデルが増えた最近のドイツ車と比べると、Tロックはむしろドイツ車らしさが濃密だ。古典的なドイツ車を望んでいる人にとって、魅力的なチョイスといえそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆TSI スタイル デザインパッケージ
ボディサイズ:L4240×W1825×H1590mm
車重:1320kg
駆動方式:FWD
エンジン:1497cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:150馬力/5000〜6000回転
最大トルク:25.5kgf-m/1500〜3500回転
価格:376万円

>>VW「Tロック」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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