現在販売されている新型車で通勤している人なら、いわゆる「ピンポン現象」というものを経験したことがあるかもしれない。これは先進運転支援システムを搭載したクルマが、車線の中央を維持することができず、その位置を見つけるまで何度も往復してしまう現象だ。
この問題は、クルマが本来いるはずの場所にいない場合に発生する。Point One Navigation(ポイント・ワン・ナビゲーション)は、2016年にこのような問題を解決する技術を発表して注目を浴びた。サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップ企業は、都市部のエアタクシーやドローンから、ADAS搭載車や自動運転車、さらにはスクーターや農機具まで、移動するあらゆる車両 / 機体に適用可能な、正確な位置情報を得るためのAPIを開発した。
「位置把握は、ロボット工学において解決しなければならない柱の1つです」と、CEO兼共同設立者のAaron Nathan(アーロン・ネイサン)氏は、最近のインタビューで語っている。「畑で雑草を刈り取るロボットを作ろうとしている企業でも、高速道路を走る自動運転車を作ろうとしている企業でも、エンジニアたちのチームは、それがどこにいるのかを把握するために苦心しています。ならば、我々がこの問題を解決し、すべてのユースケースに全般的に対応できるようにすれば、私たちの顧客はアプリケーションに集中できるようになるのではないか、と私たちは考えました」。
具体的には、Point Oneの技術は拡張された全地球航法衛星システム(GNSS)、コンピュータービジョン、センサーフュージョンをAPIに統合したものだ。これはつまり、ドローン製造会社やロボット工学スタートアップ企業、トラック運送会社などが、APIを通じて自社の車両や機体がどこにいるのかを、10cm単位で知ることができるということだ。Point Oneは10月に開催された自動運転車のイベントで、サンダーヒル・レースウェイ・パークのコースを逆走する自律走行車を使って、その技術を披露した。
2020年に出荷が始まった同社の製品は、交通機関だけでなく、家電製品などの他の産業にも、幅広く応用できると見た多くの投資家から注目を集めている。Point Oneは最近、UP.Partners(UPパートナーズ)が主導したシリーズAラウンドで、1000万ドル(約11億3000万円)の資金を調達した。このラウンドには、BOLT(ボルト)、IA Ventures(IAベンチャーズ)、Ludlow Ventures(ラドロー・ベンチャーズ)などの既存投資家も参加した。
既存のテクノロジーにも、ネイサン氏の表現によれば「部分的な位置情報サービス」を提供するものはある。それは広大な農地でロボットがいる場所を教えてくれるかもしれないが、ある地域では使えても他の地域では使えないかもしれない。Point Oneは、世界のどこでも、10cm単位の精度で顧客に位置情報を提供することができる。
約1年前に出荷が始まったPoint Oneの製品は現在、名前が明かされていない2つの自動車メーカーで量産されている。このような自動車向けアプリケーションでは、最近の新型車にはすでに必要なハードウェアが搭載されているため、Point Oneはこの技術をソフトウェア製品として展開することができる。他の顧客、例えばスクーター会社などでは、車両にチップセットを搭載する必要があるかもしれない。
Point Oneは当初、レベル2の先進運転支援システムに適用するなど、自動車分野に集中していた。20名の従業員を抱えるようになった現在、同社はマイクロモビリティをはじめとする新しい分野への拡大に力を入れている。農業分野の顧客とも生産契約を結んでおり「スマートな」トラクターや、ドローン配送の分野にも取り組んでいる。
同社はまた、ネイサン氏が「エマージングデベロッパー」と呼ぶ、まだ完全には開発されていない製品に携わる人々もターゲットにしている。
「問題は、これらの市場に迅速に拡大していくためには、どうすればよいかということです。Point Oneがこの問題を解決することができる、だから自分たちで無理なことをやらなくても済むのだと、皆に気づいてもらわなければなりません」と、ネイサン氏は語る。
画像クレジット:Point One Navigation
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)