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京都大学、高温超伝導線の交流損失を20分の1に低減しモーターなどの超伝導化に道を拓く

京都大学は11月16日、高温超伝導線に交流の磁界中で発生する「交流損失」を1/20に抑えることに成功したことを発表した。液体水素や液体窒素などの比較的高い温度で超伝導状態になる高温超伝導線は、大量の電気を効率的に流すことができるため、モーターなどの電気機器の高効率化やコンパクト化に貢献すると期待されているが、交流損失の問題が実用化のハードルになっている。

この研究は、京都大学工学研究科の雨宮尚之教授と古河電工グループからなる研究グループによるもの。交流の磁界の中で高温超伝導線を使うと、細い磁束の線「磁束量子線」が超伝導体の中に浸入し、それが移動するときに摩擦熱のようなものが発生する。そして、交流の磁界内で交流損失と呼ばれる損失が生じる。また高温超伝導線は、局所的な不良や外からの干渉によって超伝導状態が破れたり、それによって線が損傷したりすることもある。そのため、超伝導状態を保つ「安定性」と破損を防ぐ「保護性」を備える必要があるのだが、これまで、交流損失の低減と、安定性と保護性の両立は難しいとされてきた。

そこで研究グループでは、高温超伝導線の薄膜状の超伝導体を細いフィラメントに分割(マルチフィラメント化)することで、磁束量子線の移動距離を短くして交流損失を小さくした。さらに、フィラメントに短い部分があるなどして超伝導状態が破られないよう、銅メッキを施して電流が問題部分を迂回できるようにした。こうすることにより、標準的な薄膜高温超伝導線に比べて交流損失は約1/20に抑えられた。

現在、研究グループでは、この銅メッキした超伝導フィラメントを細い芯のまわりに螺旋状に巻きつけることで、数十mにもなるマルチフィラメント薄膜高温超伝導線「SCSC」(ダブルSC)ケーブルの開発を進めている。SCSCケーブルを使うことで、より高い密度で交流電流を流せるコイルが実現する。そうなれば、軽量コンパクトで大出力なモーターを作ることができるため、船舶や航空機の電動化や、風力発電機の軽量化による大容量化など、脱炭素に貢献できるとのことだ。

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