【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
「“ヒューストン、問題発生? ”アポロ13号宇宙船CSM(司令船/機械船)&月着陸船」01/04
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。
今回からは、連載初の宇宙モノである“アポロ13号”を製作していきます。映画化もされた、おそらくアポロシリーズで最も有名な13号。しかもキットは爆発で破損した状態を再現できるというマニアックなもの。いかにしてその悲惨な状況を作り上げるのか。達人の腕の見せ所です。
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プラモデルのジャンルのひとつに宇宙モノがあります。1970年4月11日、アポロ13号が3度目の人類月着陸を目指して打ち上げられましたが、打ち上げから2日後に支援船の酸素タンクが爆発、月着陸船を救命ボート代わりにして地球に生還しました。栄光ある失敗と言われ、実話に基づき1995年にはトム・ハンクス主演で映画にもなっています。
今回は酸素タンクの爆発でダメージを受けたアポロ13号宇宙船を最新キットで製作します。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
■今から半世紀前は宇宙ブーム真っ盛りだった
先日、アメリカ航空宇宙局(NASA)は、半世紀ぶりに月着陸を目指す「アルテミス計画」で宇宙飛行士を月に送り込むのが2025年以降に延期されたと発表しました。今から52年前アポロ11号が月に初めて人類を送りこんだのは1969年、僕は11歳の小学5年生でした。
当時は宇宙ブームの真っ盛り。NHKが日本時間の午後9時45分から衛星生中継で月着陸の瞬間をライブで放送したのを覚えています。
渋谷の東急デパートではRevell社から発売されたアポロのプラモデルを販売。行列に並んで買いました。屋上には実物大の月着陸船の模型が展示され、記念撮影ができるなど、今からは考えられないほどの盛り上がりだったのを覚えています。
当時の模型業界もアポロを中心に数多くのキットが発売されていました。本物は存在しないオリジナルのアポロ探検車やアポロ回収船なんてものもありました。当時、SF好き、プラモ好き、そして宇宙好き少年だった僕はプラモを作りまくり、アポロ関連の新聞記事をスクラップ。現在でも手元に残してあります。
20年ほど前になりますが、好きが高じてアポロを打ち上げたケープ・カナベラル宇宙基地の39番発射台、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで保存されている管制センターにも行っちゃいました。
というワケで今回は、元(現?)宇宙少年として初のキット化を記念?し、アポロ計画の中にあって唯一事故で月に行けなかった『栄光ある失敗』アポロ13号を製作します。
■アポロ13号のプラモデル
アポロブームの頃は多くのメーカーからプラモが発売されていましたが、近年では香港のプラモデルメーカー、ドラゴンモデルズが「サターンVロケット」や「宇宙船」などアポロ関連のニューキットを数多くリリースしていて、元宇宙少年(まだ現役)としてはうれしいかぎりです。
今回製作のアポロ13号も同社から新たに発売されたキットで、スケールは1/72、キットは司令船/支援船とドッキングされた月着陸船を「“Houston、we've had a problem APOLLO13”(ヒューストン、問題発生!! アポロ13号宇宙船CSM(司令船/機械船)&月着陸船)」 という長い名称でキット化。支援船の酸素タンク爆発で外板が吹き飛ばされてむき出しになった内部構造が、新規パーツで再現されています。
■今回もフィニッシュシートが大活躍
アポロ宇宙船の司令船は、宇宙空間の太陽光線の輻射熱を防ぐためクロームメッキ状態の外板を持っています。塗装ではリアルな再現が難しいため、前回の飛燕製作でも使用したハセガワトライツールのフィニッシュシートのミラーフィニッシュを使用します。
>> チタンフィニッシュシートでメッキ飛燕をディテールアップ!【達人のプラモ術<飛燕>】
指令船は形状が円錐なので、組み立て後に短冊状にカットしたミラーフィニッシュシートを貼りこんでいきます。シートは柔軟なので、綿棒などで圧着することでパーツの形状にも馴染ませられます。またシートの上から塗装することもできます。
■支援船のダメージパーツを自作
今回一番の見せ場になる支援船のダメージ(2個ある酸素タンクで内部の液体酸素を攪拌した際、配線の欠陥から火花が飛んで爆発。外板も吹き飛ばされる)を製作します。
キットは内部の酸素タンクや燃料タンクパーツが再現されていますが、なぜかダメージ表現はされていないので、酸素タンクを爆発した状態にそれらしく改造していきます。
とはいうものの、参考にできるのは、大気圏再突入時に切り離され司令船の窓から撮影された不鮮明な写真だけなので、あくまでもイメージで製作。また酸素タンクがあるブロックの隣の部分は内部が省略されているので、ジャンクパーツを使ってそれらしく再現しています。
また内部には金の断熱シートが張られている部分もあるので、ここはゴールドフィニッシュシートを使っています。
★達人流製作のポイント!
①司令船はミラーフィニッシュシートでリアル再現
②ダメージ再現はキットを改造して表現
③映画アポロ13を観てモチベーションアップ
次回は司令船と支援船の仕上げと月着陸船の製作編です。お楽しみに!
■アポロ13号の逸話
キリスト教では13という数字は忌み数と言われています。アポロ13号の打ち上げ日は’70年4月11日、数字を全部足すと13。打ち上げ時間は13時13分だった。打ち上げは39番発射台(13の3倍)からで、事故が発生したのは4月13日19時13分。科学的な根拠はなにもないのだけれど、映画『アポロ13』の中でもジムの妻マリリンが13号なのを不安がるシーンがあります。また記者会見でも話題となり、ケンがあらゆる不吉と言われることを試したが何も起こらなかったとジョーク交じりに語っています。それでも事故は起きたんですけどね。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/413559/
- Source:&GP
- Author:&GP