スペインのカタルーニャ生物工学研究所(IBEC)の研究チームは、人間の鼻とほぼ同じくらい鋭い「携帯型電子鼻(e-nose)」を開発したと発表。e-noseをドローンに搭載することで、廃水処理施設の臭気の強さを予測することなどが可能になります。
AIが廃水処理施設の臭気を分析
これまで廃水処理施設の臭気は手動で測定されることが多く、主に施設担当者が分析していました。この方法はスタンダードと見なされてきましたが、コスト・時間がかかるうえ実施できる頻度が低いため、運営者は問題に迅速に対応したり、悪臭の原因を特定したりすることが困難だったといいます。
「私は廃水処理施設からおよそ1kmくらい離れた場所に暮らしていますが、その臭いのせいで、時に窓を開けることさえできないことがあります。こういった施設のまわりで暮らしている人にとって、悪臭がいかに生活の質を下げてしまうかということを見過ごしてはいけません」と同研究所のSantiago Marco氏は話します。
廃水処理施設の臭気放出をこれまでより適切にモニタリングするために、Marco氏率いる研究チームは、人工知能(AI)を活用したリアルタイムモニタリング・データ視覚化を実現する「ポータブルe-nose」を開発しました。
ドローンに搭載できるほど軽量
まず、研究チームは廃水処理施設から空気を採取し、硫化水素・アンモニア・二酸化硫黄などの刺激性の化学物質を嗅ぎ分けるようe-noseにトレーニングを実施。また、バクテリアの活動を確認する指標である二酸化炭素のセンサーも搭載。人間の鼻とほぼ同じように機能することを確認したといいます。
その後、研究チームは約1.3キログラムのe-noseをドローンに取り付け、2021年1月〜6月にスペイン南部の中型廃水処理施設の上空に送りました。施設内のさまざまなエリアの上空を飛行しながら、10メートルのチューブを介して空気を吸い込み、施設内の空気を分析しました。
実験の結果、e-noseは廃水の臭気モニタリングに適していることがわかりました。フィールドテストで空気サンプルの分析を行った結果、e-noseからの13回の測定のうち10回が、人間の担当者による評価と一致したようです。また研究チームは、ドローンの機動性とAIアルゴリズムによって、時間的・空間的なにおいの濃度もマッピングすることができたといいます。
Marco氏は「私たちは結果に非常に満足していますが、今後より多くの検証が必要であり、実際に施設内にて操作をしていくためには、ドローンおよびe-noseをより堅ろうにする必要があるでしょう」とコメントしています。
Electronic nose on a drone sniffs out wastewater plant stink
(文・Takeuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/167147
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:takeuchi