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キットの主役「支援船のダメージ」を想像力を働かせて再現!【達人のプラモ術<アポロ13号>】

【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
「“ヒューストン、問題発生! ”アポロ13号宇宙船CSM(司令船/支援船)&月着陸船」02/04

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

支援船の酸素タンク爆発というトラブルに見舞われ、月着陸を断念。多くのトラブルに遭いながら、地球への帰還を果たして『栄光ある失敗』と言われたアポロ13号の製作。第2回は、司令船と爆発によりダメージを受けた支援船の仕上げを行います。

*  *  *

前回ミラーフィニッシュシートで仕上げた司令船を、5か所の窓などを塗装し、塗装図の指示に沿って細部にコーションマーク(注意書き)デカールを貼っていきます。ちなみに司令船のメッキしたような外観は、銀色のマイラーフィルムの耐熱コーティングが施されているため。フィニッシュシートは模型用塗料(今回はMr.カラーを使用)で塗装できます。

司令船底部は、大気圏突入の高熱を防ぐための耐熱シールドが使われていますが、今回は司令船と支援船を接着固定してしまうので、塗装していません。

キットにはカルトグラフ製(イタリアのデカールメーカー)のデカールが付属しています。ちなみに当初デカールの指示と塗装図が見当たらず「コーションマークどこに貼るんだ?」と困惑したのですが、よくよく見たら箱の裏側が塗装図になっていました(笑)。ちゃんと確認しないといけませんね。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

©NASA

この写真はアポロ15号です。真空の宇宙で撮影されているため、司令船と支援船、メインエンジンノズルの質感がシャープにわかるありがたい写真。外板が外されているのは破損ではなく、SIMベイ(Scientific Instrument Module)と呼ばれ、支援船内部に月面電磁サウンダー、赤外放射計、紫外線分光器といった観測機器が搭載されていためです。

▲ミラーフィニッシュシートのせいで分かりづらいが窓部分をツヤあり黒で塗装している

▲キット付属のデカールはカルトグラフ製。司令船と支援船、月着陸船用のコーションマーク(機体各部の注意書き)は小さいので、精度の高いピンセットの使用が必須となる

▲見つからなかった塗装図がコレ。箱の裏側にカラーで載っていた(笑)

 

■支援船の製作

ある意味今回のモデルの主役とも言えるのが、酸素タンクの爆発で大きなダメージを受けた支援船です。キットは支援船内部の酸素タンクや燃料タンクがパーツ化されていますが、酸素タンクの爆発(原因は酸素タンク組み立て時のネジの外し忘れでタンクが歪み、内部の配線にスパークが発生したため)によるダメージは再現されていません。

▲支援船内部はジャンクパーツを使い、爆発で吹き飛ばされた第3パネル内側と、その隣のユニット(完成後にはほとんど見えなくなりますが)内側をそれらしく自作

作例では、写真を参考に飛行機モデル等のジャンクパーツを利用してそれらしくダメージを再現。とはいうものの、真空中で酸素タンクが爆発したら周囲がススけるのか?とか分からないし、資料と言っても不鮮明なモノクロの画像1枚しかない。あとは、爆発したらこうなるだろうと想像力を働かせて、外板パネルが吹き飛んで、内部はジャンクパーツや配線コード等を利用して爆発のダメージを再現。エアブラシで焼け焦げた質感を塗装しています。

▲自作パーツで再現した破損した支援船内部。中央部分が爆発した酸素タンク。上部が燃料電池タンク、下側が水素燃料タンク。酸素タンクは爆発したイメージで、ちぎれたケーブルは配線コードを使用している。隔壁部分は、実機写真を参考にインテリアグリーンで塗装後、アルミホイルを使って断熱シートを再現

▲吹き飛ばされた第3パネルの隣のパネルは少し浮かせて、爆発により歪んだダメージを表現してみた

 

■アルミホイルを使ったダメージ表現

支援船内部は、真空中の太陽光線の輻射熱などから機器を保護するために耐熱シートが多く使われているので、家庭用アルミホイルをシワシワにして貼り付けることで、断熱シートの金属感を再現、爆発して吹き吹き飛ばされた部分にもちぎれたイメージでアルミホイルを使用します。プラ素材との接着には瞬間接着剤を使います。

▲メインエンジンはつや消し黒とガンメタで塗装。取り付け基部にはアルミホイルを張り付けて断熱シートを再現

 

■塗装、デカール貼り付け

支援船は司令船と違いマイラーフィルムは使われていません。通常のシルバーと白で指定通りに塗分け、デカールを貼ります。その後、後部の主エンジンノズルと機体4箇所に姿勢制御用のエンジンノズルを取り付けます。最後にエッチングパーツで再現されたハイゲインアンテナ(地球との交信に使用)を取り付けます。

▲支援船はツヤありの白部分を塗装してから、マスキングして銀を塗装する

▲支援船の機体4か所に取り付けられている姿勢制御用エンジン。ノズルはチタンゴールドで塗装

▲機体各部にコーションデカールを貼る

▲エッチングパーツでリアル再現されたハイゲインアンテナ

▲司令船と支援船を接着。出っ張っているのが司令船と支援船を繋ぐ結合装置。電力や酸素・水などのホースやケーブル類はここにまとめられており、切り離しの際には爆発ボルトが使用される

 

■付属の専用ディスプレイスタンド

キットには専用の、アルミ材とプラを使った、質感のある展示スタンドが付属しています。ベースを黒に塗装して仕上げます。画像は塗装が完了した司令船と支援船を借り組みした状態。宇宙船の模型はデスクトップモデルが良く似合う。

★達人流製作のポイント!

①ダメージ表現はイマジネーション全開で

②アルミホイルを使って断熱シートを再現

 

これで司令船と支援船は完成しました、次回はアポロ13号で救命ボートとして使われた月着陸船を製作します。お楽しみに!

 

■模型を作りながら知って驚くアポロ計画が残したテクノロジー

▲銀イオン浄水システム ©NASA

NASAが開発し、アポロに搭載されていた小型の軽量浄水ユニットは、銅と銀のイオンを水中に放出してバクテリアを殺菌するというもので、大腸菌・ブドウ球菌・サルモネラ菌など多様な病原菌に対して効果がありました。この浄水システムは、現在プールや噴水、スパ、病院、個人用浄水器などで広く使われています。ちなみに宇宙にもっていった飲料水はコップ1杯で30~40万円になるそうです。

 

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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