北陸先端科学技術大学院大学は11月26日、最先端のナノ素材グラフェンを用いた超小型電界センサー素子を開発し、雷雲が生み出す大気電界の検出に世界で初めて成功したことを発表した。襲雷予測のための広域雷雲監視ネットワークや落雷検出ネットワークの実現に期待が寄せられる。
グラフェンとは、炭素原子が蜂の巣状の六角形結晶格子構造で配列された単原子シートのこと。北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科のアフサル・カリクンナン研究員、マノハラン・ムルガナタン講師、水田博教授らによる研究グループは、音羽電機、東京工業大学地球インクルーシブセンシング研究機構と共同で、これを使った微細センサー素子「グラフェン電界センサー」を開発。雷雲が生み出す大気電界(大気中の微弱な電流)の時間的変化を検出することに、世界で初めて成功した。大気電界の極性も判別できるため、雷雲内部の電荷分布も推定でき、「複雑な雷現象のメカニズム解明に大きく寄与する」という。
研究グループは、このセンサーをモジュール化して屋外で雷雨時に動作試験を行ったところ、20km以上離れた地点での落雷を電界ピーク信号として捉えることができた。このとき同時に既存の電界検出装置(フィールドミル型)も使用したが、その検出タイミングの精度がほぼ一致した。また、測定結果の解析により、5km圏内の落雷を32分前に予測できることもわかった。重量が1kg以上と重く、外部電源も必要とするフィールドミル型と比較して、グラフェン電界センサーは太陽電池で駆動できる超小型であるため、これを広域に数多く配置すれば、落雷検出ネットワークが容易に構築できるという。