フランスのスタートアップJump(ジャンプ)は、アンブレラ型企業(一時的な契約業務に従事するエージェント契約者を雇用する会社のこと)の業界を破壊しようとしている。それら企業は、従来のフリーランスの仕事に新たに代わるものを提供している。彼らは労働者を正社員として雇用することで、労働力の安定性と正社員契約のメリットを得ることができる。しかし、労働者は独立性を保ち、複数のクライアントと仕事をしたり、自分で直接契約を交渉したりすることができる。
Jumpが従来のそれら企業と異なるのは、既存のサービスよりもはるかに低コストで、より自動化されている点だ。ユーザーは自動でアカウントを作成でき、最初の請求書も自動で送信されるため、Jumpのスタッフと話す必要もない。
登録すると、クライアントに自分への直接支払いではなく、Jumpへ支払いをするよう依頼し始めることができるようになる。ユーザーはいつでも未払いの請求書や、Jumpのアカウントにある金額を確認することが可能だ。
Jumpのユーザーは、給与明細書を作成し、給与を受け取ることができる。また、フランスの通常の正社員契約なので、国民健康保険制度に登録され、老後の生活資金を貯めることもできるのだ。顧客との関係がうまくいかない場合は、法定合意解約を申請し、失業手当を受ける権利を得られるようになる。
同社は、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)を中心に450万ドル(約5億1200万円)のシードラウンドを実施した。Kima Ventures(キマ・ベンチャーズ)と16人のエンジェル投資家もこのラウンドに参加しており、Nicolas Brusson(ニコラス・ブルソン)氏、Hanno Renner(ハンノ・レナー)氏、Laurent Ritter(ローラン・リッター)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエ)氏などが名を連ねている。
従来のアンブレラ型企業は、年間売上高の一部を徴収する。価格はさまざまだが5%、7%、場合によっては10%になることもある。例えば、Jumpの共同設立者でありCEOのNicolas Fayon(ニコラス・フェイヨン)氏は、かつてITGに勤務していたが、ITGでは売上に対して6%から8%の手数料を徴収していた。また、ITGにさらに2%の追加料金を支払うことで、経費を管理し、給与を最適化することもできる。
Jumpは現在、月額79ユーロ(約1万円)の定額制でサービスを提供している。顧客は、Axa(アクサ)の社会人・個人向け生命保険、Alan(アラン)の健康保険、フリーランスマーケットプレイス(Malt、Talent.io、LeGratin)、その他いろいろなサービス(Simbel、Secret、HelloPrêt)など、サードパーティのサービスにもアクセスすることができるようになる。
これまでに、Jumpは何百人ものフリーランサーと仕事をしてきた。これまでの請求は300万ユーロ(約3億8400万円)にのぼる。開発者、不動産業者、ドライバーなど、多くのフリーランサーがこの製品の恩恵を受けることができるだろう。また、フランスに子会社を作りたくない外資系企業でリモートワークをしている人たちにとっても特に便利なため、アンブレラ型企業にとっては大きな市場機会があるだろう。
画像クレジット:Romain Dancre / Unsplash
[原文へ]
(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)