東京大学と山口県産業技術センター、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門は、リンゴや赤系ブドウの果実に青色LED光を照射して果皮の着色を促す装置を開発した。リンゴやブドウの生産者は、地球温暖化などの影響で果物の着色が不良になる商品価値が下がる現象に悩まされているが、この装置で改善が期待される。
「果実発色促進装置」と呼ばれるこの装置は、幅50×奥行き40×高さ15cmの箱形をしており、中に青色LEDチップを多数配置した基板が内壁と仕切りに貼り付けられている。果皮に含まれる色素アントシアニンが青色光によってさらに多く蓄積されるために、着色が進むとのこと。この中で、直径12cmまでのリンゴなら12個を同時に処理できる。また、装置内は着色促進に適した温度に保たれる。
東京大学の実験では、装置内の温度を15度に設定して、リンゴ品種「ふじ」に青色光を5日間照射したところ、赤身が少なかった部分が赤くなり、色むらが改善された。糖度が13度以上ある果実で、着色促進効果が認められたそうだ。また、農研機構果樹茶業研究部門でも、赤色系ブドウの「クイーンニーナ」「甲斐路」「赤嶺」で着色の改善が確認された。ただし、こちらも糖度が低いと効果は見られないという。
山口県産業技術センターの吉村和正専門研究員は、量産すれば、1台あたり2万6000円程度で販売できると試算している。「将来的には、海外へ輸出される果実を運搬中や貯蔵中に着色促進して商品価値を高める手段にも応用できます。流通事業者だけでなく、生産者が活用すれば農業所得の向上も見込めます」とのことだ。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/12/01/fruit-tinting-box/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:tetsuokanai