【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
「“ヒューストン、問題発生! ”アポロ13号宇宙船CSM(司令船/支援船)&月着陸船」03/04
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。
支援船の酸素タンク爆発というトラブルに見舞われ、月着陸を断念。多くのトラブルに遭いながら、地球への帰還を果たして『栄光ある失敗』と言われたアポロ13号の製作。第3回は、月着陸船下降部の再現に挑みます。宇宙船らしい熱や小隕石から機体を守るブランケットシートの質感をいかに作り出すのでしょうか。
* * *
■LM(月着陸船)下降部の塗装と製作
前回完成させた、酸素タンクが爆発してダメージを受けた支援船ですが、少ない資料からさらに手を加えました。真空中の爆発では煤は出ないということを考慮して、塗装も一部変更。黒く焦げた塗装を抑えて、アルミホイルを追加し、爆発で飛散した断熱シートを追加。破損状態を強調しました。
▼Before
▼After
さて今回はいよいよLM(月着陸船)の製作です。酸素と電力不足に陥った司令船では地球に帰還できないアポロ13号では、地球軌道までの3日間をLMである「アクエリアス」(13号着陸船のコールサイン)をドッキングしたままにし、宇宙飛行士の生命維持のための救命ボートとして使用しました。そのためモデルでも、LMは上昇部と下降部が連結。着陸脚は折りたたまれた状態にしたままで、司令船にドッキングした状態を再現します。
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
■下降部の製作
LM(月着陸船)は上昇部と下降部に分かれますが、キットもそれぞれリアルに再現されています。キットはパーツの精度が高いので、サクサクと組み進められます。今回はまず下降部(月着陸用エンジンを搭載した部分)を製作していきましょう。
LMの下降部は、金色、銀色と黒色のシートのようなもので包まれているのが特徴です。 これは真空中の強烈な太陽光線からの耐熱および微小隕石から機体を保護するブランケットシートです。
キットはパーツにモールドでこのシートが再現されていますが、実物は金箔に近い質感で、これを塗装で再現するのは難しいため、今回もアルミホイルを使って、よりリアルな仕上げを目指します。
■アルミホイルが大活躍
前回も支援船の内側やダメージ表現にアルミホイルを使用しました。今回は、接着には筆塗りタイプの瞬間接着剤を使用し、LMの下降部全体と4本の脚パーツにアルミホイルの光沢がある面を表側にして貼っていきます。
貼りこんだアルミホイルは綿棒を使ってパーツの形状に馴染ませます。アルミホイルは柔らかいため工作自体は難しくないのですが、仕上がりが薄くなるように心がけます。
■アルミホイルの塗装
下降部船体のブランケットシートは、金色の部分と黒の部分があります。金色の部分は、かなり赤みが強いゴールドといった色味なので、タミヤラッカー塗料のクリアーオレンジにクリアーイエローを20%程度加えたカラーで塗装することで、金箔と同等の質感を再現できます。
クリアーオレンジの塗装が乾燥したら、マスキングをして黒の部分を塗装します。子供時代からアポロマニアを自負して、何度もプラモ作っていますが、LMの正確な塗分けは今回初めて知りました。ちなみにシートの張り方はミッションによって異なっていて、LMのカラーリングもミッションごとに微妙に違うのだそうです。
■下降部の組み立て
塗装が完了したらLM下降部本体に、折りたたんだ状態の4本の脚を取り付けていきます。アルミホイルを貼った部分はプラスチック用接着剤が効かないので、瞬間接着剤を使用します。
いよいよ完成が見えてきました。次回はLMの上昇部を製作します。お楽しみに!
★達人流製作のポイント!
①アルミホイルでブラケットシートをディテールアップ
②アルミホイルにクリアーオレンジで金箔の質感を再現
■月着陸船(Apollo Lunar Module)とは
月着陸船は、何とも言えない独特なスタイルをしています。宇宙飛行士からはバグ(虫)とかスパイダーと呼ばれていました。アポロ10号ではSNOOPYの愛称で呼ばれていたそうです。
設計と開発はグラマン社(現ノースロップ・グラマン社)で、複雑な多面体構造の船体は、究極の軽量化の結果生み出されたもの。2人の宇宙飛行士が乗るキャビンはアルミ合金ですが、ほとんどの部分はアルミの骨組みに断熱のための薄い金属箔(最も薄い分は0.25mmのアルミ板のみで月の真空から飛行士を隔てていた)のハリボテみたいな構造でした。
室内は電話ボックスふたつ分くらいのスペースしかなく、宇宙空間および月面でしか運用されないため、操縦席には椅子もありません。
そして船体は上昇部と下降部に分かれ、月からの帰還の際には、下降部は発射台となり月面に残されます。
お値段は1機7000万ドル。アポロ13号では、この月着陸船を救命ボート代わりに使いました。LMは本来2人の飛行士を45時間生存させるだけの設計でしたが、バッテリーや酸素をギリギリまで切り詰めて、3人の飛行士を地球軌道までの90時間生存させることに成功しました。
映画『アポロ13号』の中で、破損した機械船のエンジンが使えないためLMの降下用エンジンを使って地球帰還のための加速を行うとなった際、グラマン社のスタッフが「そんな使い方は前例がなくて安全性は保証できない」と管制官に喰ってかかるシーンが印象的でした。
ちなみにアポロ計画は捏造で、実は人間は月にいっていない陰謀論がよく話題になりますが、2007年に打ち上げられた日本の月面探査衛星「かぐや」が、1971年に月面着陸を果たしたアポロ15号が月面“雨の海”に残したLMの下降部を撮影しています。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/417254/
- Source:&GP
- Author:&GP