スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。
なんて1週間だったのだろう。いや、本当に。もう12月後半も目前だというのに、どういうわけかニュースは起き続けている。ホリデイシーズンなのにこの多さとは!今回はまず始めに、先週の重要なニュースに関するいくつかのメモ、次にベクトル検索と、2021年のお勧め本についてお話しする。さあ始めよう!
- 私たちが知るSPACの終焉:Trump Media SPAC(トランプメディアSPAC)を取り巻く煙はスモッグレベルの濃さに達している。またBuzzFeed SPAC(バズフィードSPAC)の取引は、あらゆる手を尽くしたが失敗し、結局は世間の評判を落とし、その価値を半分近くまで下げただけに終わった。
- 暗号資産 vs 従来の金融商品:宗教戦争の真っ只中に割り込むつもりはない、しかしテクノロジー市場は、暗号資産企業に資金を提供して育成する方法を真剣に決めていく必要がある。そしてその答はおそらくベンチャーキャピタルではないのかもしれない。先週私たちは、OpenSea(オープンシー)のIPOへの期待が、ユーザーから歓迎されるのではなく、軽蔑されている様子を見た。公開だって?トークンを発行して暗号資産の世界に留まっていればいいのでは?なぜなら、大量の従来資金がOpenSeaに流れ込んだので、それらの投資家は、デジタル硬貨ではなく、彼らに対する投資家たちにドルで返済する必要がある。これを解決する方法は?はっきりしない、だが私は、長期的には、暗号資産企業は完全に従来の金融レールから外れたものになるのではないかと思っている。そうならない理由はない。
- SaaSの状況:これを書かなかったことをお詫びしたい、だがソフトウェアの評価額に関する最近の記憶の中でも最も急激なマイナスの動きの1つが見られた。確かに価格はまだ高いものの、以前ほどではない。現在過剰高値のユニコーンは注意が必要だ。
- そして最後に、Instacart(インスタカート)は社長が辞任した:入社してからわずか数カ月後で、Instacartは注目を集めた人材を手放した。The Exchangeは、11月にInstacartについて少し書いている。パンデミックでの急増が落ち着いたあと、Instacartの成長率が元に戻ったことを示す報告に注目したのだ。ゆっくりではあるが、会社は今でも成長している。しかし、成長が遅いままでは、理にかなった価格で会社を公開することはできない。この先なにが待ち受けるのだろう?わからない。
会社をメディアにとりあげてもらう方法、そしてベクトル検索
テクノロジー分野での記者になることの最も良い点の1つは、未来を説明してくれる賢い人たちと時間を過ごせることだ。私たちが、すぐにはメタバースの住民になるわけではないものの、将来的なの意味での情報処理方法を変えるテクノロジーがここにはある。
Semi Technologies(セミ・テクノロジーズ)の共同創業者Bob van Luijt(ボブ・ファン・ラウト)CEOをご紹介しよう。この企業はWeaviate(ウィビエイト)を開発している。現在すでに多く存在するスタートアップと同様に、Semiは営利目的のOSS企業だ。簡単にいえば、同社はオープンソースプロジェクトWeaviateの上にビジネスを構築しているのだ。
ボブは数時間の時間を割いて、彼の会社、非構造化データの検索市場、Weaviateの仕組みについて話してくれただけでなく、TechCrunchの2021年分の記事をスクレイピングして小さなGUIに入れて、私が遊べるようにしてくれた。
ちなみに、これは記者にあなたの会社のことを気にかけてもらうためのすばらしい方法だ。これはお気軽な作業ではない、実に手間のかかる厚意で、相手の記者が基礎の基礎から知りたがっているような場合でも、初歩的な質問に忍耐強く答え続けることなのだ。
A reallllly underrated skill that some founders have is the capability to teach me stuff with patience
writing about a co later this week because the CEO has spent a good bit of time slowly taking me through a bit of tech I had previously never touched/learned about
— alex (@alex) December 1, 2021
一部の創業者が身につけていて本当に過小評価されているスキルとは、私に忍耐強く何かを教える能力です。
今週後半にある企業について書くつもりですが、それは同社のCEOが私がこれまで触れもぜず、習ったこともない技術について時間をかけてゆっくり教えてくれたからです。
とにかく、ベクトル検索だ。Weaviateで可能になるのは、非構造化データをすばやく検索することだ。Microsoftの説明によればベクトル検索とは「深層学習モデルを使用して、データセットを意味のあるベクトル表現にエンコードします。ベクトル間の距離はアイテム間の類似性を表します」ということになる。
ボブは例を挙げて、これをもう少し簡単に説明してくれた。従来のデータベースでは、自由の女神がニューヨーク市にあり、エッフェル塔がパリにあることを示すデータを持っているだろう。しかし、こうしたデータを取得するには、対象を正確に検索をする必要がある。Weaviateまたは関連するソフトウェアを介したベクトル検索を使用すると、データベースの中になるフランスのランドマークについて、データを表示するように依頼することができる。そして、エッフェル塔のデータが取得される。
クールだよね、とても。ボブと彼のチームが親切にもセットアップしてくれたTechCrunchのポータルをいじくり回したが、私は彼らが提案した質問に最もこころ惹かれた。このようなものだ「Alex Wilhelmが外出中にTecCrunchニュースレターを書いたのは誰か?」率直にいえば、これはその曖昧さゆえに楽しい質問だ。どのTechCrunchニュースレターのことだろう?そして「外出中」とはどういう意味だろうか?結局、検索結果は、私が休みを取ってAnnaがニュースレターを処理していることを書いたちょっとしたテキストをこのコラムからなんとか見つけることができた。
とてもすばらしい。Semi Technologiesはかなり若い会社だが、私がずっと注目している会社の1つだ。それにはいくつかの理由がある。第1の理由は、オープンソースのスタートアップはクローズドコードの同業者よりも多くの場合興味深いからだ。そして、OSSテクノロジーを使用した構築を進めている創業者は、ビジネスに対するアプローチにやや余裕があることが多いし、個人的にボブが好きなことも理由だ。
Semiとの対話から書き起こした未整理の約3000語のノートを、もう少し一貫性のあるものに整理できたら、さらにお伝えする。
画像クレジット:Semi
本のお勧め2021
先週2部構成になったベンチャーキャピタルからの推薦図書リストにかなりの時間を費やした後、私たちは自分たちのお気に入りの何冊かをリストに追加しようとしている。もちろん、本の好みは絵画の好みと同じように個人的なものだが、2021年読んだもののうち最高だったもののいくつかを共有せずにはいられない!
Annaの2021年のお気に入りは以下のようなものだ:
フィクション:
「Born to be Mild:Adventures for the Anxious」Rob Temple(ロブ・テンプル)著
記録によれば、これは私が2021年に読んだ最初の本だったが、12カ月経っても本当に私を魅了してやまない。著者のRob Temple(ロブ・テンプル)はご存知かもしれない。陽気なソーシャルメディアアカウントを運営し、書籍シリーズである「Very British Problems」(ベリー・ブリティッシュ・プロブレム)の作者でもある。だがこの本はこれまでとは違うテイストだ。それは彼の不安との闘いと、自身のコンフォートゾーンから抜け出そうとした努力についての物語だ。それは感動的で、非常に親しみやすく、とてもおもしろい──あなたが私のようなSue Townsend(スー・タウンゼント)のファンなら、あなたもこれを気に入る可能性が高い。
ノンフィクション:
「How to Read Numbers:A Guide to Statistics in the News (and Knowing When to Trust Them)」 David Chivers(デビッド・シバース)、Tom Chivers(トム・シバース)著
これは私が今読んでいる本で、まだ読み切っていないという注意はしておくものの、とてもおもしろい本だ。それはメディアからの反発を招くかもしれないが、重要なポイントを提示している。私たちがニュースで目にする多くの数字は注意深く吟味される必要があるということだ。これは、ジャーナリストとニュース読者の双方にとってすばらしい読み物になる。読者が数字の読み方に精通すればするほど、分析の精度も上がっていく。
Alexの2021年のお気に入りには以下のようなものがある:
「The Salvation Sequence」Peter F. Hamilton(ピーター・F・ハミルトン)著
最高の空想科学小説(SF)は、私たちが住んでいる世界の上に宇宙船を登場させて充実した1日にしてくれるだけではない。実際、最高のSFは、経済学から人類、科学、物理学に至るまで、あらゆるものを再定義するのだ。2021年私が読んだシリーズ「The Salvation Sequence」は、まさにそのような本だ。経済学やエイリアンへの対処から、真の人間である意味や将来の政治まで、すべてがここに含まれている。とんでもない読み物だ。次の巻が出るのが待ちきれない、そうしたらこのすごいシリーズ全体をもう一度読み返すことができる。
「A Memory Called Empire」と「A Desolation Called Peace」Arkady Martine(アーカディ・マーティン)
未来を描く方法は1つではない。マーティンが描くのは、文明と野蛮の概念が、芸術と帝国に衝突する未来だ。そして記憶に。そして隠された技術と戦争に。短い説明文ではとても説明しきれないが、マーティンがSF世界に構築したものは、科学というよりもアートに近いものという他はない。これは激賞に値する。
「Black Sun」Rebecca Roanhorse(レベッカ・ローンホース)
ファンタジー小説は、ヨーロッパの封建時代の歴史を背景に描かれることが非常に多い。登場する公爵が◯◯野郎だって?農奴たちに反逆させたほうが良いぜ!そんな感じだ。そして登場したのが「Black Sun」だ。これはまったく異なる方向にファンタジーをとり込んだ作品だ。南米ならびに中米の伝統に触発されたように見えるものの、本作はジェットコースター並のすばらしさである。必読だ。
「The Last Graduate」、Naomi Novik(ナオミ・ノヴィク)著
ノヴィクは本当にすばらしい作家だ。「Uprooted」(邦訳:ドラゴンの塔)と「Spinning Silve」(邦訳:銀をつむぐもの)はどちらも傑作だった。しかし、私の個人的な意見では、彼女の最高傑作は「A Deadly Education」だ。これは2020年後半に発売された。そして、その続編「The Last Graduate」へのカウントダウンが始まった。本が出るまでの日数を数えることはめったにないが、そうせずにはいられなかったのだ。そして「The Last Graduate」はすばらしい作品だった。今まで読んだことのない主人公に出会い、すべてが歯を持つ世界に入りたいなら、これらの本を読もう。それらを読めば、幸せを味わえるだろう。
画像クレジット:Nigel Sussman
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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/12/13/2021-12-11-2246180/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Alex Wilhelm,sako