2014年に登場した初代「NX」は、グローバルで累計約100万台のセールスを記録。今では世界95の国と地域で販売され、レクサスのSUVラインナップにおける中核モデルへと成長した。
先のフルモデルチェンジで2代目へと進化した新型NXには、レクサス初の技術や機能が盛りだくさん。そんな新しいレクサスNXの魅力を深掘りする。
■ルックスから主張する新しいレクサスの流儀
新型NXは、エクステリアデザインからしてレクサスの新たな世界観が感じられる。
フロントマスクは、レクサス車の個性ともいうべき“スピンドルグリル”を継承するが、先代NXよりに比べて垂直にそびえ立つような押し出しの強い形状に変身。さらに、グリル回りのフレームからメッキ類が廃止され、塊感がより一層強調されている。
一方、リア回りで目立つのはエンブレム類の変化だ。初代「LS」(=トヨタの初代「セルシオ」)から継承されてきた中央の“L”ロゴがなくなり、新たに“LEXUS”のレタリングが配される。
またコンビネーションランプも、一文字のランプを水平にレイアウトし、その左右にL字型ランプを独立配置することで、個性あるリアスタイルを演出している。
■イマドキ珍しく4種類のパワートレーンを用意
そんな新型NXのトピックのひとつが、パワートレーンの多彩なバリエーションだ。純粋なガソリンエンジンだけでも、2.5リッター自然吸気と2.4リッターターボの2本立てとなる。
「NX250」に搭載される2.5リッター自然吸気は201馬力を発生。従来、ハイブリッド車のエンジンとして、トヨタの「カムリ」、「RAV4」、「ハリアー」、レクサスの「ES」などに積まれていたもので、エンジン単体としての搭載は、NX250が日本仕様では初となる。一方、「NX350」に積まれる2.4リッターターボは、新型NXの誕生を機に登場した新開発ユニット。279馬力というハイパフォーマンスが自慢だ。
先代モデルのガソリンエンジン車は2リッターターボの一択だったが、新型では「そこまでパワーは求めない」というユーザー向けに2.5リッター自然吸気を、「パワフルな走りが好みだ」という人向けに2.4リッターターボを、といった具合に、ガソリンエンジン車の選択肢を増やしている。
一方、ハイブリッドにも2タイプの心臓部が用意される。
NXの最量販ユニットになると予想されるのが、「NX350h」に搭載されるハイブリッド。2.5リッター自然吸気エンジン(190馬力)に、182馬力の前輪用モーターを組み合わせる(4WDは後輪用に54馬力のモーターを搭載)。
さらに、レクサスブランド初のプラグインハイブリッドとして「NX450h+」も用意される。こちらは、NX350hと基本的に同じエンジン(チューニングは異なる)と同じモーターを組み合わせながら、大容量バッテリーの強みを生かし、一気に強い電気を送ることで鋭い加速を実現。日常的な移動範囲なら、エンジンを止めてガソリンを使わず、モーターだけで走れるエコ性能を備えながら、いざとなれば動力性能にも優れる文武両道のパワーユニットだ。
では、なぜ新型NXは4種類ものパワートレーンを用意したのか? その問いに対する開発陣の答えは「お客さまの多様な好みに応じて選んでいただけるように」というものだった。確かにそれも正解だろうが、やはりNX自体、販売台数の多い量販モデルだということも大きいだろう。それくらい、4種類のパワートレーンを用意するというのは、イマドキのクルマにしては珍しいことなのだ。
■電子プラットフォームの刷新で次世代装備も充実
新型NXのもうひとつの特徴は、新しい機能や装備がふんだんに盛り込まれていることだ。
その一例が、前後ドアの開閉操作に採用される“e-ラッチ”と呼ばれる電子制御。これはレクサス初の装備であり、後方から車両が接近している場合には、万一の接触事故を防ぐべく操作してもドアが開かないなど、安全装備としても機能する。
また、スマホをキーの代わりとしてドアロックの解除やエンジンの始動が行える“デジタルキー”も採用。それに合わせて、スマホ操作で乗車前にエアコンをオンにしておける“リモートエアコン”機能や、盗難防止のためにスマホ操作でエンジンを始動できなくする“マイカー始動ロック”なども用意される。
さらにステアリングスイッチは、ドライバーが触れている位置を検出し、ヘッドアップディスプレイやメーター内に操作ガイドを表示するのが新しい。これにより、ひとつのスイッチに複数の機能を与えることができるようになった。と聞くと、操作が煩雑になるように思えるが、実際に使ってみたところ、スムーズに操作できることに驚いた。手元のスイッチを注視することなく操作できるので、とても自然に扱える上、安全性にも優れている。
このほか、前走車に近づいた時や急な坂を下る時、また、コーナーに進入する手前などに減速操作をサポートし、頻繁なペダル踏みかえを軽減してドライバーをサポートする“プロアクティブドライビングアシスト”など、新しい概念に基づいたメカも組み込まれている。
これら多彩な機能の背景には、電子装備の基礎となる“電子プラットフォーム”が新型NXから最新版にアップデートされたという要因がある。電子機能は電子プラットフォームに依存するものが多いが、新型NXは最新版プラットフォームを導入した結果、最新機能の搭載が可能になったのだ。
ちなみに、最新版の電子プラットフォームが新型NXに初搭載されたのは、単にタイミングによる偶然ではない。開発陣によると、新型NXのデビューに間に合うよう、電子プラットフォームの開発を当初の予定より早めたというのだ。いかにNXという存在がレクサスにとって大きく、また、新型NXが力の入ったモデルであるかを象徴するエピソードといえるだろう。
■RAV4やハリアーにはない走り味向上のためのこだわり
クルマに詳しい人ならば、新型NXはトヨタのRAV4やハリアーと基本設計を共用するモデルだということをご存じかもしれない。しかし、“すべて同じ”かといえば、そんなことはないのである。
例えば新型NXのボディは、アッパーボディとフロアの両面において、走りのレベルを引き上げるべく、より強固に仕上がるよう設計されている。アッパーボディでいえば、リアのクォーター部を環状構造とすることで、一段と剛性アップを図っているのだ。
またフロアのメンバー(補強部品)は、発売まで1年を切ったタイミングで設計変更を実施。より強固なものへとレベルアップさせている。「走りのレベルを引き上げるために変更した」と開発陣は笑って振り返るが、発売まで残された時間が限られた中での設計変更、そして、そこからの煮詰め作業は、想像以上の困難があったはずだ。
いずれにしろ、これらの構造や設計はRAV4やハリアーには見られないこだわりであり、レクサスが新型NXの走りのレベルをトヨタ車よりも引き上げようとした努力の跡が見える。
走りへのこだわりといえば、新型NXはボンネットフードを開けた部分にも驚きがある。車体側でボンネットフードの“ツメ”を受け止めてロックする“ボンネットキャッチャー”と呼ばれる部品が、左右2カ所に設けられているのだ。
このツインフードロック機構は、レクサス車では初の採用となる。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州のプレミアムカーではすでに採用されている機構だが、実はこれも、ボディ剛性向上のための一環なのだ。加えて、新型NXは単にボンネットキャッチャーをふたつにしただけでなく、ボンネットフードに付く左右のツメを結ぶように丈夫な骨を通すことで、ボンネットフードを閉じた際の車体剛性アップを実現している。
乗り味などに“効く”ことは以前から分かっていたツインフードロック機構だが、生産やコストなどのハードルにより、従来のレクサス車では採用が難しかったという。しかし、2020年に登場したマイナーチェンジ版「IS」に採用された“ハブボルト”によるホイール締結方法しかり(もちろん、新型NXにも採用されている)、今回のツインフードロック機構しかり、最近のレクサスはかつてできなかったことをどんどん採り入れることで、走りのブラッシュアップを実現している。「いいクルマを作ろう」という開発陣の意気込みが、これら小さなパーツにも現れているのだ。
ミドルサイズながらやや大きめの新型NXは、トヨタのハリアーやマツダ「CX-5」などと同じクラスに属し、海外勢ではメルセデス・ベンツ「GLC」やBMW「X3」、アウディ「Q5」辺りがライバルとなる。競合モデルはいずれも手強いが、豊富なパワーユニットによる多彩な選択肢や、てんこ盛りの新技術&新機能により、きっと有利に戦いを進めることだろう。新型NXに実際に触れてみて、筆者はそう確信した。
<SPECIFICATIONS>
☆NX250“バージョンL”(AWD)
ボディサイズ:L4660×W1865×H1660mm
車重:1710kg
駆動方式:4WD
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC
最高出力:201馬力/6600回転
最大トルク:24.5kgf-m/4400回転
価格:570万円
<SPECIFICATIONS>
☆NX350“Fスポーツ”
ボディサイズ:L4660×W1865×H1660mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:2393cc 直列4気筒DOHCターボ
最高出力:279馬力/6000回転
最大トルク:43.8kgf-m/1700〜3600回転
価格:599万円
<SPECIFICATIONS>
☆NX350h“Fスポーツ”(AWD)
ボディサイズ:L4660×W1865×H1660mm
車重:1810kg
駆動方式:4WD
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC
エンジン最高出力:190馬力/6000回転
エンジン最大トルク:24.8kgf-m/4300〜4500回転
フロントモーター最高出力:182馬力
フロントモーター最大トルク:27.5kgf-m
リアモーター最高出力:54馬力
リアモーター最大トルク:12.3kgf-m
価格:635万円
<SPECIFICATIONS>
☆NX450h+“バージョンL”
ボディサイズ:L4660×W1865×H1660mm
車重:2010kg
駆動方式:4WD
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC
エンジン最高出力:185馬力/6000回転
エンジン最大トルク:23.2kgf-m/3600〜3700回転
フロントモーター最高出力:182馬力
フロントモーター最大トルク:27.5kgf-m
リアモーター最高出力:54馬力
リアモーター最大トルク:12.3kgf-m
価格:714万円
>>レクサス「NX」
文/工藤貴宏
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/419161/
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