Rocket Lab(ロケットラボ)がついにNeutron(ニュートロン)ロケットの覆いを外した。ニュートロンは、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏が「2050年のロケット」と呼ぶ中型機である。Rocket Labは、現在SpaceX(スペースX)が支配する打ち上げ市場でシェア拡大を目指している。
今回、3月のニュートロンのアナウンス以来、同社のプロジェクトに関する最初のメジャーアップデートである。3月以来、Rocket Labは、特別買収目的会社を使った合併による株式公開、Electron(エレクトロン)再利用計画の開発継続、宇宙サービス部門の拡大で忙しい。その間ずっと、今に至るまで、ニュートロンに関しては沈黙を保ってきた。
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炭素複合材
ニュートロンの特徴は、運用と開発の両面で同クラスの他のロケットとは異なる、いくつかの意外なイノベーションにある。まず素材である。約40メートルのロケットは、姉妹機のエレクトロン同様、特別な炭素複合材で作られる。
これは興味深い選択である。特に、周知のようにスペースXがStarship(スターシップ)システムで炭素複合材を捨ててステンレス鋼を取ったことを考えるとそうである。しかし、Rocket Labが炭素複合材を使うのはこれが初めてではない。ベック氏は、ニュージーランド政府の研究施設でキャリアをスタートさせて以来、エレクトロンロケットの大部分で使うだけでなく、高度な複合材や素材に取り組んできた。
「金属の扱いに慣れてきた場合、実際に複合材をてがけるのは本当に困難です。でも、ずっと複合材と関わりがあって経験があるなら、実際のところ、複合材はシンプルな素材です」とベック氏はTechCrunchに語った。
金属の構造体は重くてパフォーマンスが低い。高パフォーマンスエンジンで補うことはできるが、再利用の点で大きな余裕や高い信頼性にはつながらない、と氏は付け加えた。構造体が軽くなれば、氏が「ロケットの破綻のスパイラル」と呼んだものを避けることができる。構造体が重くなると必要な推進剤が増え、推進剤が増えると必要な推進剤タンクが大きくなり、タンクが大きくなると重量が増えて必要な推進剤がさらに増える、という終わりのないせめぎ合いだ。際限がない。
「これは、私のキャリアで破綻のスパイラルが逆転する最初の時です。軽量の構造体で破綻のスパイラルが逆転します。このことは、打ち上げの観点から重要なだけでなく、実際のところ再突入の観点からも本当に重要です」と氏は言った。なぜなら、ベック氏によれば、約7メートルというニュートロンの大きな直径と軽い重量によって、弾道係数、つまり空気抗力に対する物体の抵抗の大きさが大きくなるからだ。それで、構造体を重視することで、再突入で消費する推進剤は少なくなり、空気抗力は小さくなり(結果として熱も少なくなり)、エンジンはシンプルになる。
また、ニュートロンは新しいタイプのグラファイト複合材で仕上げられるので、耐熱性が向上する。これは、今後のエレクトロンロケットにも新たに導入される。
「口を大きく開けたカバ」
従来のロケット設計と大きく異なる別の点はニュートロンのフェアリングだ。この機材は、ノーズコーンのように伝統的にロケットの先端に取り付けられ、内部のペイロードを保護する。歴史的には、フェアリングは分離されて地球に落下し、使い捨てになるものと一般に見なされている。もっとも、スペースXでは、修理調整して再利用するために海から回収している。
Rocket Labではその代わりに、4枚のフェアリングが1段目に装着され、機械的に開く(ロボットのような風変わりな花を想像して欲しい)。これもまた、複合素材の使用によって導かれた設計上の決断であるとベック氏は述べた。
「通常、フェアリングを付けたままにしたり、それと似たようなことをしたりする質量上の余裕はない。フェアリングはできるだけ早く切り離さねばならない。そのような寄生質量を抱えている余裕はないからだ。しかし、寄生質量が本当に小さければ、この種のことができる」。
ニュートロンは、最大1万5000キログラムのペイロードを低地球軌道に運ぶことができ、ちょうどスペースXのFalcon 9(ファルコン9)やRelativity Space(レラティビティースペース)が開発中のTerran R(テランR)ロケットと競合する。
しかし、2段目はどうだろうか?
Rocket Labは、ペイロードのノーズコーンフェアリングを無くすだけでなく、2段目も徹底的に見直すことにした。従来のロケットの設計では、1段目とペイロードの間に2段目を入れる。しかし、ニュートロンでは、2段目は1段目の中に置かれる。ロケットがペイロードを展開するときになると「口を大きく開けたカバ」のようなフェアリングが開いて、2段目とペイロードの両方を軌道に送り出す。
Rocket Labは、有人宇宙飛行を含むさまざまなタイプのミッションにニュートロンを使うことを意図している。ベック氏によれば、有人打ち上げの場合は、ただフェアリングを取り外して、クルーを乗せたカプセルを打ち上げることができるということだ。
2段目は使い捨ての設計である。他のロケット企業は完全な再利用に取り組んでいるが、ベック氏によれば、2段目の再利用が理に適っているかどうか、まだ結論は出ていないとのことである。特に、再利用にともなう質量要件の増大と回復に関連する運用コストを考えるとそうである。
地球への帰還
2段目が展開されると、1段目は地球に帰還し、正確に発射台に戻る。つまり、洋上のはしけに降りるのではない。この選択もまた、運用コストを節約するものになる、とベック氏は言った。
ニュートロンは、Rocket Labが開発した7基の新しいエンジンを使って軌道に上がり、戻ってくる。Rocket LabはこのエンジンをArchimedes(アルキメデス)と呼んでいる。この低圧エンジンは液体酸素(LOX)とケロシンではなくLOXとメタンで作動する。ちょうど1段目を打ち上げ場に戻すという決断と同様、推進剤の選択はミッション間のターンアラウンド時間が最小になるように行われた。
「これまで、エンジンには通常膨大な修理調整が必要とされてきました。また、推進剤としてLOXとケロシンが選ばれることから、膨大な修理調整が必要です。ケロシンからは大量のすすとコークスが発生するんです。それで、メタンを使う決定をしました。メタンでエンジンを作動させることは可能で、そうすればエンジンはまったくクリーンで、燃焼後もまだピカピカです」とベック氏は語った。
ニュートロンは結局、米国内のどこかから打ち上げられるだろう。Rocket Labは、打ち上げ場と製造所の選定をめぐる競争のさなかにある。多くのことが行われてきたが、ニュートロン打ち上げの具体的な期日は不明だ。Rocket Labは以前、2024年だと言ったが、今回のアップデートでは言及がなかった。しかし、ベック氏によれば、それは意図的なものではないとのことだ。
「私たちは、2024年にニュートロンを発射台に載せ、2025年に企業顧客を宇宙へ送るつもりです。しかし、私たちはこれがロケットの計画であることも認めています。膨大な仕事ですが、懸命に努力を続けること、それが私たちの計画です」とベック氏は断言した。
ここで、Rocket Labのニュートロンに関するアップデートをもう一度視聴してみよう。
画像クレジット:Rocket Lab
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)