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グレー重ね塗り&線塗りで特徴的な質感を再現!【達人のプラモ術<SR-71Aブラックバード>】

【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
1/144 SR-71A ブラックバード
02/03

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

今回からは、アメリカ空軍の戦略偵察機として20世紀後半に活躍したSR-71“ブラックバード”の製作に入ります。キットはいたってシンプルなのですが、だからこそいかにリアルに再現するかがポイントになります。まずはブラックバードという飛行機がどういうものだったのかの解説から。

*  *  *

★達人流製作のポイント★

①面塗装ではなく線塗装で色を描く

②意識して機体の焼けた質感を表現

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■SR-71はなぜ黒い?

SR-71はブラックバードの愛称で呼ばれており、機体は黒で塗装されています。この塗装は、放熱効果を高めるために鉄粉が混ぜられたフェライト系の特殊塗装で、当時としては画期的なステルス性能も持たされていました。

一般的に考えたら、熱を反射する白で塗装した方が太陽光線を反射して機体が熱くならないんじゃないかと思いますよね。旅客機に白い塗装が多いことからも、それが分かります。

しかしSR-71は、マッハ3で飛行するため、機体は圧縮断熱で300℃近く(キャノピーの前縁や垂直尾翼は700℃)にもなるそう。そして超高高度2万5000mでは熱を逃がすのに白よりも黒の方が適しているのだそうです。

機体の写真を見るとマッハ3という超高速で飛行するSR-71は、機体表面が高温に曝されることとフェライトを含んだ特殊塗料のためなのか、黒というよりも濃いグレーに見えます。この特徴的な質感を塗装で再現できるか、モデラーの腕の見せ所です。

▲NASAの試験機として使用されていたSR-71。テスト機材を背中に装備している。機体が黒ではなく複雑なグレーのグラデーションになっているのが良く分かる ©NASA

 

■圧縮断熱ってなに?

超高速で飛ぶSR-71は圧縮断熱で機体が高温になります。空気との摩擦で熱くなると言われますがそれは間違い。気体(空気)は圧縮されると熱が発生し、拡散すると冷えるという性質があります。マッハ3で飛行すると機体前方の空気は避けることができず、機体にぶつかり空気分子が押し潰されます。その押しつぶされた空気分子同士が激しくぶつかり合って熱が発生する。それを圧縮断熱と言います。空気入れで自転車のタイヤに空気を入れる時にタイヤが熱くなるのも同じ理屈です。

 

■グレーを重ねて質感を出す

今回のメインである機体塗装では、3色のグレーを重ねることでSR-71の特徴的な高速飛行による熱焼けの質感を再現していきます。

使用するのはタミヤ製ラッカー。「LP-27ジャーマングレー」(以下GG)、「LP-65ラバーブラック」(以下RB)、そしてRBとGBに混ぜるカラーとして「LP-5セミグロスブラック」(以下SB)を使いますが、これは直接は使用しません。つまり黒は塗っていないということです。

またキットの繊細な凹モールドを潰さないために、下塗りのサーフェイサーは塗装していません。塗装はまずGGで機体全体を塗装して、RBをベースにSBを調色して明→暗といったトーンの違うグレーをエアブラシで塗り重ねて質感を再現しています。

▲機体の基本パーツとなる円錐状のマッハコーン、垂直尾翼、エンジンノズル。これらパーツはすべて機体と同色で塗装する

▲キャノピーは窓部分をマスキングして機体に取り付けておく

▲サーフェイサーによる下地塗装をしないかわりにタミヤラッカーのLP-27(ジャーマングレー)をベースカラーとして機体全体を塗装

▲ジャーマングレーで塗り上げが完了した機体

▲エンジンのアフターバーナーはエナメルのスミ入れ塗料の黒で塗装することでディテールを強調できる

 

■塗装のコツは線で色を描くこと

グレーを重ねて塗装する際にベタに面塗装してしまうと、グレーは隠ぺい力が強いため下地を塗りつぶしてしまいます。面塗りではなく、エアブラシの細吹きで線を描くように塗り重ねることで、SR-71の特徴でもある熱焼けによる質感を表現できます。

▲ジャーマングレーで塗装した機体にラバーブラックをパネルラインに沿って、エアブラシの細吹きで色を吹き機体のパネルごとにコントラストをつけていく

▲今回使用したカラー。ジャーマングレーをベース色として、ラバーブラックで塗装の質感を描いていく。セミグロスブラックをラバーブラックに加え明→暗とトーンの違うグレーを3色自作する

▲実機写真を参考にしながらラバーブラックとセミグロスブラックを混色して自作したグレーで機体に濃淡のコントラストをつけていく

▲機体のパネルラインに沿って、エアブラシの細吹きで、機体のパネルラインに沿って、矢印の方向に線を描くように塗装していく。この際に敢えてムラになるように意識して塗装していく

▲ラバーブラックと自作したグレー2色を使い、熱で退色したグラデーションの効いた質感を再現した状態

▲塗装が完了したのち、リアルタッチマーカーのグレー2を使いパネルラインにスミ入れをする

▲機体の左側がリアルタッチマーカーでのスミ入れをした状態。入れていない右側に比べディテールが際だっているのが分かる

▲垂直尾翼やマッハコーンといった機体パーツも個々に塗装

▲塗装とスミ入れが完了、キャノピーのマスキングテープはまだ剥がしていないが、用意したディスプレイスタンドに仮組みした状態。実機のイメージを再現したリアルな質感に仕上がった。先にも書いたように機体の塗装には黒は使っていない

*  *  *

塗装は、実機のリアルを再現するためのものですが、今回は1/144のSR-71としてのリアルさ、模型的に見栄えがする(要するにカッコ良い)塗装を心がけて仕上げてみました。次回はデカールを貼りと、ディスプレイスタンドを使ってのデスクトップモデル仕上げを紹介していきます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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