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【コラム】テック企業は採用の場で恵まれた学生が持つ魅力とその潜在能力を混同するのをやめるべきだ

大学に通う低所得の学生の数は増加している。Pew(ピュー)研究所からの2016年のレポートによれば、低所得の家庭出身の各部学生が占める割合は、1996年の12%から2016年には20%に増加している。ただし、6年以内に学位を取得できるのは、収入が上位4分の1の学生の場合は58%に達しているのに対し、下位4分の1の学生の場合はわずか11%にとどまっている。

この不一致に対して思いを馳せる必要がある。なぜ低所得層の学生の多くが大学に進学しても学位を取得できず、労働力としての潜在能力を十分に発揮できないのだろうか?この疑問への手短な回答は、個別のターゲットを絞り込んだサポートとリソースの不足である。そして、特にテクノロジーの分野では、このようなサポートの欠如が存在する原因は、採用のエコシステムが、学生や将来の従業員候補者に対して、ある種の「特典」や豊かさを持っていることを仮定している問題ある構造になっているからなのだ。

こうした仮定(無意識的であるか否かに関わらず)は、門戸を開いてくれるはずの教育やキャリアの機会から、低所得の学生を間違ってそして一貫して排除してしまい、結果的にテック業界が重要で実りある人材プールにアクセスできない状況を続けさせている。

こうした技術系の教育からキャリアへのパイプラインが、学位を取得して私たちの経済の中で最も給料の高いセクター(この部分についてはここでは触れない)の1つに入ろうとしている低所得の学生を、途中で挫折へ追い込んでいるのは明らかだ。社会経済的地位は「多様性」の議論の一部でなければならないが、それは過小報告され、十分に議論されていない。

「特典」の産物と潜在能力を混同するとはどういう意味だろうか?

多くの業界と同様に、技術者の採用(インターンシップからフルタイムの仕事に至る)は卒業のかなり前の段階で行われる。この採用構造は、実際の才能や潜在能力よりも、環境的に恵まれていることとリンクしがちな特徴を過大評価し採用する傾向がある。しかし潜在能力が高いにも関わらず低所得の学生は、この採用構造が求める「理想的な候補者」の型には適合しないことがよくある。それはどのように発生し、どうすればそれを止めることができるのだろう?

たとえば採用担当マネージャーにテクノロジー業界で成功するために必要なスキルを尋ねてみよう。彼らは以下のような新しい候補者を探していると口にするかもしれない。

こうしたスキルは、たくさんの異なる経験から得られる。例えば技術系学位を目指しつつフルタイムまたはパートタイムの仕事をしている学生は、強い労働倫理、時間管理能力、そして弾力性を身につける。また家族の知識や社会的ネットワークに頼ることなく、大学での経験を自力で切り開いている移民二世の学生は、優れた問題解決能力を身につけている可能性が高い。主観的ではあるが、これらはテクノロジー業界で成功するための非常に貴重なスキルである。

しかし、採用活動では、こうした実証されたスキルが実際に考慮されることはほとんどなく、次のような基準によって不平等の影が落とされているのだ。

先のスキルセット(問題解決、時間管理、回復力etc……)とは異なり、これらの基準は採用活動の世界では「潜在能力」のマーカーと見なされている。しかし、これらのマーカーを取得するには、多くの学生が利用できないある程度の特典と豊かさが必要なのだ。こうした経験はいずれも時間とエネルギーを必要とするため、家族の世話をしたり、学費を払うために働いたり、その他学校以外での重要な責任を果たさなければならない人間にとっては得ることが難しい。これらの経験の多くは個別に支出を必要とするし、またこれらの経験のほとんどは、課外ネットワーク、事前知識、準備を行うことができる恵まれた環境を必要とする。

だがこれは、企業にとって大きな機会損失であり、悲惨な結果がもたらされているのだ。テクノロジー業界は、イベントへの参加、受賞歴、そして通った学校という特性を、業界で実際に成功するための能力から切り離さなければならない。それらは同じものではないからだ。このまま恵まれた環境の産物と潜在能力を混同し続けると、実際に潜在能力の高い学生のコミュニティにアクセスできなくなり、人材不足が続き、技術セクターの多様性が低下する。

では、どうすればよいだろうか?

低所得の学生がその技術の旅全体を通して個別にサポートされるようにするためには、技術コースをどのように修正していけば良いのだろうか?

低所得の採用候補者の競争の場を平準化する

大学生の半数以上が住宅不安を経験していることを口にしている。率直な話、家賃を払えなければコンピュータサイエンスの試験で優をとるのは難しく、高速のインターネット接続がなければ課題を完了するのはほぼ不可能だ。

こうした積年の障壁に対処するには、それらをまず理解してから、解決するためのリソースに投資する必要がある。

まず、低所得のバックグラウンドを持つ学生のために、こうしたギャップを埋めるために働く組織を支援し投資する。次に、すべての新規採用者のための公平な競争条件を整える。テック企業の意思決定者または人事担当者である場合は、すべてのインターンと新規採用者に対して転居と採用のための移動費用を支援する。

学生がこれらの費用を前もってまかなうためのクレジットや家族の支援を持っていると仮定して、支給まで数週間待つべきではない。これを解決することで、候補者はベストな状態で訪問することができる。

多様性に投資するために大学生に投資する

テック業界はテクノロジーパイプラインの開始部分に投資する傾向がある。その結果、企業がK-12(幼稚園から高校まで)プログラムに慈善基金の66%を集中させているのに対し、大学レベルのプログラムに投下されているのはわずか3%である

K-12への投資は重要だが、必要な人材を生み出すには、高等教育レベルでのフォローも必要だ。私たちは、学生が学位を取得できるように支援する必要がある(そうするための過程全般を通してサポートを行う)。これによって、技術革新に貢献する準備ができた技術者と、私たち全員に利便性をもたらすより多様なマインドの形でリターンが得られるのだ。

これは実際にはどういう形をとるのだろう?1つの例を次に示そう。現在まだ学部4年生の新入社員を雇用する場合は、その春学期の間支援を行うのだ。つまり将来の従業員に投資するということだ。最終的な高レベルのクラスに集中するための余裕を提供することで、最後の数カ月の重要な時期に授業料、家賃、その他の費用を支払うことを心配するのではなく、仕事へとより良く備えることができるようになる。

コンピューティングの学位を取得して卒業する現在の学生の人口、およびテクノロジーセクター全体は、人種や性別だけでなく、社会経済的地位の観点からも、私たちの多様な社会を反映していないそしてそれは、テクノロジー業界が恵まれた環境により産まれたものと潜在能力を混同し続けているからなのだ。

その結果、重要なテクノロジーを生み出す役目を負いながら、決してすべての人に平等に役立つとは限らない、多様性に欠けたテクノロジーセクターが生まれるのだ。技術パイプライン全体を通じて低所得の学生を個別にサポートし投資していこう。

編集部注:執筆者のDwana Franklin-Davis(ドワナ・フランクリン=デイビス)氏は生涯現役の技術者だ、現在Reboot Representation(リブート・レプリゼンテーション)のCEOを務めている。同組織は、慈善活動のリソースをプールして、2025年までにコンピューティングの学位を取得する黒人、ラテン系、ネイティブアメリカンの女性の数を2倍にすることを目指しているテクノロジー企業の連合体である。もう1人の執筆者のRuthe Farmer(ルース・ファーマー)氏は、Last Mile Education Fund(ラスト・マイル・エデュケーション・ファンド)の創業者でCEOであり、テクノロジーとエンジニアリングにおける公平性とインクルージョンの世界的な擁護者であり伝道者である。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

原文へ

(文: Dwana Franklin-Davis、Ruthe Farmer、翻訳:sako)

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