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高評価の理由とは?2021-2022日本カーオブザイヤーで各賞を獲得した6台の真価

“今年の1台”を決める日本カー・オブ・ザ・イヤー。60名の選考委員による厳正な審査の結果、6台のモデルが栄冠を勝ち取った。

各賞を受賞したモデルは、どんなところが評価されたのだろう? 2021-2022シーズンの選考委員を務めた工藤貴宏氏が振り返る。

■日本カー・オブ・ザ・イヤーは「自信を持って人におすすめできるクルマ」

2021-2022シーズンの日本カー・オブ・ザ・イヤーは、日産「ノート」シリーズが受賞した。

何を隠そう、筆者もノートシリーズに票を投じたひとり。なぜノートを高く評価したかといえば、「自信を持って人におすすめできるクルマ」だからだ。

まず注目したいのはパッケージング。全長4m強の運転しやすいコンパクトボディながら、リアシートやラゲッジスペースは広く、実用性が高い。ファミリーユーザーでも安心の使い勝手が光る。

ノートシリーズは走りもいい。価格を抑えられる純ガソリンエンジン車を用意していない点については意見が分かれるところかもしれないが、エンジンを発電専用としてモーターだけで駆動力を生み出すシリーズ式ハイブリッド“e-POWER”は、加速感が爽快で運転する歓びを感じられる。エンジン車から乗り換えると、まるで魔法の絨毯にでも乗っているかのような、スムーズな加速フィールに衝撃を受けるだろう。

個人的には、スポーティなハンドリングに加えて、専用のパワートレーン制御を盛り込むことでスポーティな走行フィールを実現した、スポーティな「ノート オーラNISMO」の加速感に魅力を感じる。

その上、ノートシリーズは燃費もいい(カタログ記載のWLTCモード燃費で23.8〜29.5km/L)し、音も静かで快適性が高い。乗る人に感動を与えてくれることだろう。

さらに、標準車のノートに加え、上級タイプの「ノート オーラ」、スポーティなノート オーラNISMO、そしてクロスオーバーSUVの「ノートAUTECH(オーテック)クロスオーバー」と、好みに応じて選べるバリエーション展開で幅広いニーズに応えられるのも見逃せないポイントだ。

そんなノートよりもさらに室内が広くて実用的で、走りのレベルも高く、装備が充実しているクルマも多い。しかし、多くの人が手の届きやすい価格帯という条件下で見た場合、やはりノートシリーズのトータルバランスの良さが光る。つまるところ「これを買っておけば間違いない!」と自信を持って推せるクルマがノートシリーズなのである。

■インポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞は「コンパクトカーの基準」

最も多くの票を得た輸入車に贈られるインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは、VW(フォルクスワーゲン)の「ゴルフ」だった。

ゴルフは世界中の自動車メーカーから“コンパクトカーの基準”と評され、欧州市場で最も多くの販売台数をマークする偉大なモデルだ。それだけに、新型の上陸には誰もが注目した。一般的に、そういうモデルは皆の期待が大きい分だけ、ちょっとしたネガで評価を落とす恐れもある。しかしゴルフは、その優れた商品力と完成度の高さから高い評価を獲得した。

かつては他を圧倒する商品力を誇示していたゴルフも、近年はライバルの激しい追い上げによってアドバンテージが失われつつあるというのが実情だ。しかし新型ゴルフは、やはり高く評価すべき美点を備えていた。

それは例えば、大人4人が快適に移動できる室内空間だったり、次元の高いハンドリングだったりするが、それ以外の領域でも、完成度の高さをひしひしと感じさせてくれる。どこかが特別優れている、というわけでなく、トータルバランスでライバルよりも出来がいいクルマなのだ。

しかも日本人として驚くのは、価格がドイツ本国よりも安いこと。これはVWが正直な商売をしていることの証であり、日本市場でも“国産車と同じ感覚で選んで欲しい”というインポーターの願いでもある。そうした点も、ゴルフが高い評価を得た理由のひとつだろう。

■パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーは「アメ車のシンボル」に

走りの魅力に焦点を絞ったパフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーは、アメ車のシボレー「コルベット」が勝ち取った。「なぜアメリカ車が?」と感じた人も多いだろうが、その理由は新型コルベットに乗ってみれば誰もが分かることだろう。

単にパワフルというだけでなく、音もレスポンスも、そして高回転域でのパンチ力も、刺激に満ちあふれたエンジンは、ちょっとドライブしただけでドライバーを笑顔にしてくれる。単に動力性能や走行性能が優れているだけでなく、コルベットは人の五感を刺激する官能性能こそが素晴らしい。

エンジンの搭載位置がミッドシップとなった新型は、歴代モデルで初めて右ハンドル仕様を設定。しかもそのデリバリーは、日本市場が世界で最も早かった。そんなゼネラルモーターズの心意気も日本のクルマ好きの心に響いたし、1000万円を超える価格設定だって、もしも欧州のスーパーカーな倍以上の価格になったはず。そう考えれば、新型はハイコスパなスポーツカーなのだ。

■「優れたPHEV技術」でテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞

注目すべき技術を採用したクルマに贈られるテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーは、三菱「アウトランダー」が受賞した。その要因となったのは、やはり高度なPHEV(プラグインハイブリッド車)技術だろう。

PHEVといえば環境性能ばかりがフォーカスされがちだが、従来モデルに対してモーターをハイパワー化しつつ、コーナリング性能にも磨きを掛けるなど、三菱は新しいアウトランダーで走りの楽しさも訴求。単にエコな乗り物というだけではつまらないが、アウトランダーは走る楽しさをも提供してきた点を筆者も高く評価した。

この先、PHEVやEV(電気自動車)が市場にどんどん増えてくるだろう。だからこそ「エコだけじゃない何か」が強く求められるようになると思う。アウトランダーはそんな流れを先取りし、納得できる形で提供してきた点が高評価につながった。

■デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー「大胆な提案を行った精神性」を評価

デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーはその名の通り、優れたデザインや話題性のあるデザインに対して贈られる賞。2021-2022シーズンに受賞したBMW「4シリーズ」のルックスは、誰もが肯定できるものでないことは筆者も十分理解している。そのフロントマスクは今も賛否両論を集めており、「大胆すぎて馴染めない」という声が多いのも事実だ。

ただ筆者は、そうした否定的な意見を恐れずチャレンジングなデザインを採用した、BMWの精神性を高く評価した。デザインの批評は最終的に個人の主観に基づくが、世の声ばかりを気にして守りに入っているだけでは、凡庸なカタチのクルマになってしまう。時には大胆な提案が必要なのだ。そんな視点に立った時、4シリーズは気になる存在というわけだ。

BMWは、先頃上陸したEVの「iX」でもチャレンジングな顔つきで世間をざわつかせた。BMW車のデザインからはしばらく目が離せそうにない。

■「走行性能が高く評価された」K CAR オブ・ザ・イヤー

日本独自の規格である軽自動車を対象としたK CAR オブ・ザ・イヤーは、スズキ「ワゴンRスマイル」と一騎打ちの末に、ホンダ「N-ONE」が栄光を手にした。

この2台の評価は、ひと言でいえば“使い勝手”と“走行性能”の争い。前者は室内が広くてスライドドアも備わるワゴンRスマイルで、後者は軽自動車とは思えない優れた走行性能が自慢で、ターボエンジンや6速MTも用意するN-ONEだ。

筆者としては、日常生活に寄り添うパートナーとしてのポジショニングを考えてワゴンRスマイルを高く評価。しかし、走りに重きを置く選考委員も多く、結果としてN-ONEが受賞した。

いい換えれば、N-ONEは軽自動車にも走行性能を求めるユーザーとのマッチングがいいモデルだ。サーキットでもイキイキと走る姿は、とても軽自動車とは思えないレベルに達している。

* * *

2021-2022シーズンのカー・オブ・ザ・イヤー各賞に選ばれたモデルは、いずれも高く評価されるだけの理由がある。それぞれの賞によって選考の方向性に違いはあるが、その理由を理解することができれば、きっと愛車選びの助けになることだろう。来るべき2022-2023シーズンもまた、素晴らしいクルマと出合えることに期待したい。

>>日本カー・オブ・ザ・イヤー公式サイト

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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