The New York Times Company(ザ・ニューヨーク・タイムズ・カンパニー)が、スポーツメディアのThe Athletic(ザ・アスレティック)を5億5千万ドル(約637億円)で買収することで合意したとThe Informationが報じている。
数カ月間、憶測が飛び交っていたこの買収では、一時はThe AthleticのCEO、Alex Mather(アレックス・マザー)氏がAxios(アクシオス)に合併を持ちかけたが、実現には至らなかった。今回の買収で、The New York Timesは購読ビジネスを強化しようとしている。同社の購読者数は2021年に800万人を突破し、2025年までに購読者数を1000万人に増やすという目標を上回る勢いだ。
2016年に設立されたThe Athleticは、2021年11月時点の購読者が120万人で、購読費は年間約72ドル(約8300円)だ。しかし、The Athletic単体ではまだ黒字ではなく、2023年まで黒字を見込めていなかった。同社は600人のスタッフを抱え、2019年から2020年にかけて1億ドル(約115億円)近くを費やしたが、同時期の収益は約7300万ドル(約84億円)にとどまった。
With $550M the NYT could have just subsribed to The Athletic for 46 million years.
— Winging It In Motown (@wingingitmotown) January 6, 2022
The New York TimesによるThe Athleticの買収は、多くの媒体が統合を経験している最近のメディア業界の傾向と一致している。直近では、BuzzFeed(バズフィード)が上場前にComplex(コンプレックス)とHuffPost(ハフポスト)を買収した。しかし、メディア関係者はこうした潮流の変化に懐疑的だ。例えばBuzzFeedがHuffPostを買収した後、190人のHuffPost社員のうち47人を解雇し、HuffPostカナダ部門をすべて閉鎖してさらに23人が職を失った。パンデミック発生時、多くのメディア企業同様に、The New York TimesとThe Athleticも従業員を解雇した。
パンデミックの前から、この業界では常に脅威となっていた突然の解雇や給与カットから身を守るために、組合契約を求めるメディア労働者が増えている。さらに過激なアプローチをとるジャーナリストもいる。2019年末に、Deadspin(デッドスピン)のスタッフ全員が経営陣への不満から同サイトを辞め、労働者が所有するメディア企業Defector(ディフェクター)を立ち上げた。Defectorは初年度に320万ドル(約3億7000万円)の収益を上げ、運営コストは300万ドル(約3億4000万円)だった。
The Athletic買収に比べるとはるかに小規模な取引だが、The New York Timesは2016年に製品レビューサイトのWirecutter(ワイヤーカッター)を3000万ドル(約34億円)で買収している。しかし、ここ数カ月、Wirecutterと親会社の間には大きな緊張があった。2年間にわたるスローペースの組合契約交渉の末、経営陣が感謝祭前に合意しなかったため、Wirecutterのスタッフはブラックフライデーとサイバーマンデーを含む5日間連続のストライキを実施した。その後、The New York Timesがストライキ中の給与を差し止めたことを受けて、Wirecutter組合は全米労働関係委員会に不当労働慣行の苦情を申し立てた。12月14日までに、The NewsGuild of New Yorkが代表を務める組合はThe New York Timesと合意に達し、賃上げと労働条件の改善を確保した。しかし、The New York Timesは、反組合的な行動に対する監視の目を今も向けられている。
買収のニュースが流れた後「やあ、@TheAthletic、私たちの友人@nyguildに会って欲しい」とWirecutter組合はツイートしている。
The Athleticの購読がどう変わるのか、買収によってスタッフがどのような影響を受けるのかについては、まだ言及がない。
画像クレジット:samchills / Flickr under a CC BY 2.0license.
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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi)