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デカールのシルバリングを抑えてフィニッシュワーク【達人のプラモ術<SR-71Aブラックバード>】

【達人のプラモ術】
ドラゴンモデルズ
1/144 SR-71A ブラックバード
03/03

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

マッハ3で飛行する“黒き怪鳥”、世界最速の戦略偵察機である「SR-71Aブラックバード」の製作もいよいよ佳境。ミリタリーモデルの重要なポイントとなるデカール貼りを行うのですが、ここでも達人のワザが登場します。

*  *  *

2022年、明けましておめでとうございます。今年も『達人のプラモ術』をどうぞよろしくお願い致します。

さて2022年第1弾は、1/144 SR-71Aブラックバード製作の完成編です。今回は機体へのデカールの貼り込み、さらに展示スタンドと組み合わせて、飛行状態を再現したデスクトップモデルとして仕上げていきます。

★達人流製作のポイント★

・クリアー塗装でシルバリングを抑える

・デスクトップモデルで飛行状態を再現

ミリタリーモデルでデカール貼りは、一般的には塗装を終わらせた後の工程となります。デカールを貼るとモデルが一気にリアルになることもあって、プラモ製作のモチベーションがアップする楽しい作業です。しかし同時に作品の仕上がりを大きく左右する重要な作業でもあるので、シルバリング等のトラブルをおこさないようにデカールの特性を理解しておく必要があります。

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■デカールを理解しておこう

スケールモデルに付属しているデカールは水転写シールのことを言います。薄いフィルムにさまざまなマーキングを印刷したものです。

台紙を水に浸すことで水溶性の糊が溶けてフィルムが浮くことで、貼れるようになります。デカールのフィルム自体は水溶性の糊なので、乾燥すればキット表面に定着します。ただし薄いフィルムなのでラフに扱うと破れたり丸まってしまったりといったトラブルを起こすことも。また古いキットで保管状況が悪かったりすると、デカールフィルムに黄ばみやクラックが入る、カビが生じるといった劣化が起こる場合もあるので注意が必要です。

▲キットの付属するカルトグラフ製デカール。シルクスクリーン印刷なので、黒い塗装の上に貼った白や赤といったデカールでも透けることがない

 

■シルバリングとは?

デカールは薄く柔軟性のある透明なフィルムです。密着度が高くキットの表面に定着するようになっていますが、ミリタリーモデルの多くにみられる艶消し塗装(塗装面が梨地仕上げ)の場合、フィルム自体に光沢がある場合が多く、塗装面との質感の違いで、いかにも貼りましたという仕上がりなるのが悩みどころです。

またつや消し塗装の場合、塗膜表面の凹凸によりデカールのフィルムが表面に密着できず空気が入り込み、デカールの乾燥後にフィルムが白く浮いたように不自然な仕上がりになってしまうことがあります。これをシルバリングと呼びます。定着力も低下するので乾燥後に剥がれてしまうといったトラブルの原因にもなります。

 

■セミグロスクリアーでシルバリングを防ぐ

今回製作している「1/144 SR-71A ブラックバード」のキットにはイタリアのデカール専門メーカー、カルトグラフ社の色透けやにじみなどもない高品質デカールが付属しています。とは言うものの、機体の塗装をつや消しで仕上げているため、このままデカールを貼るとシルバリングを起こす可能性があります。

そこで予防措置としてセミグロスクリアーで塗装面をオーバーコートして平滑(ツルツル)に仕上げておきます。平滑な塗装面であればデカールが密着するのでシルバリングを防げるからです。

▲オーバーコート塗装に使用したタミヤラッカーのセミグロスクリアー。より光沢のあるクリアーでも構わない。要は塗装面を平滑にするためのもの

▲セミグロスクリアーを薄め液1:塗料1で希釈してエアブラシでオーバーコート塗装することでデカールのシルバリングを防ぎ、密着度をアップさせることができる

▲セミグロスクリアーで平滑となった機体にデカールを貼っていく

▲艶消し塗装のままだとデカールと塗装面の間に空気が貼り込みやすくなり、シルバリングの原因となる

 

■デカール軟化剤で密着度をアップ

キットは、シャープなモールドで細かなディテールが再現されています。しかしこれが悩ましい存在で、デカールが密着しにくく、シルバリングの原因になる場合があります。そこでMr.マークセッター(GSIクレオス)やマークフィッター(タミヤ)を使ってデカールをしっかりと密着させます。

▲SR-71はマッハ3飛行時の熱で膨張する機体の歪みを防ぐため主翼の外板が波板構造になっている。1/144ということもあって細かなモールドで波板構造が再現されているのだが、ここに赤いラインのデカールを馴染ませるのが難しい

▲Mr.ホビーのマークセッターはデカール軟化剤に加えて接着力をアップさせる糊の成分が含まれている。タミヤ製マークフィッターは軟化剤のみだ。どちらもデカールのフィルムを軟化でき、波板を再現したパーツ表面でもデカールを密着させられる

 

■フラットクリアーによる仕上げ

デカールをしっかりと乾燥(常温で最低24時間)させたら、デカールの保護と仕上げ塗装としてフラットクリアー(つや消しクリアー)を塗装して仕上げます。

【Before】

▲デカールを貼り終わった状態。密着はしているもののデカールのフィルムが不自然に目立ってしまっている

【After】

▲フラットクリアーでオーバーコート塗装をすることで、デカールの不自然な光沢が消えて塗装と均一な艶消しの仕上がりとなる

▲オーバーコート塗装は耐候性の弱いデカールの保護の意味もある

▲写真左がデカールを貼っただけの状態。右がフラットクリアーでオーバーコートした状態。塗装により透明な余白フィルムが目立たなくなっているのが分かる

 

■デスクトップモデルに仕上げ完成!

キットは脚を出した着陸状態と、脚を収納した飛行状態を選択できるようになっています。今回は飛行状態を選択。別売の展示用スタンド(ICM製)を使いデスクトップモデルとして仕上げることで、黒い怪鳥と呼ばれたSR-71の特異なシルエットがよく映えるのと、何よりカッコよくなります。

▲今回使用した展示用スタンドはICMが発売している『エアクラフトモデルスタンド』だ。1/144のSR-71だと中サイズがオススメ。取り付けには機体側にスタンドを固定するための穴を開ける工作が必要となる

▲スタンドはセミグロスブラックで塗装している。機体と比較すると、機体の塗装に黒を使っていないことがよくわかる

 

■完成!

1/144スケールでもSR-71は20センチ近いサイズがあり、デスクトップモデルとしたことで、存在感のある仕上がりとなりました。製作は難しくないのでビギナーにもオススメの優良キットです。ぜひチャレンジしてみてください!

 

★NEXTアイテム★

MENGモデル「1/35 イスラエル軍 装甲ブルドーザー D9R」

イスラエルが開発した軍用ブルドーザーで、バリケードや地雷の除去、一時的な道の作成、敵の建造物の破壊などに活躍しています。自衛のために、7.62mm機関銃も備え装甲を纏った特異なスタイルが魅力的な建機です。お楽しみに!

 

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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