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【もうすぐ出ますよ!注目の日本車】ホンダ「ステップワゴン」は原点回帰のスマートなルックスが好印象

2022年春の正式発表・発売に先立って、ホンダ新型「ステップワゴン」のスタイルやコンセプトが公開された。

ステップワゴンは、1996年に日本車初の前輪駆動ミニバンとして誕生。新型はそれから数えて6世代目となるホンダの定番モデルだ。

今回は、先頃お披露目されたプロトタイプの写真などから、新型ステップワゴンの魅力と実力を検証する。

■ミニバン市場に一石を投じそうなシンプルデザイン

新しいステップワゴンのプロトタイプをひと目見て、まずは「1周回って原点回帰したな」と感じた。

3代目以降のステップワゴンは、丸みを帯びたエクステリアデザインを採用したり、メッキモールなどの装飾を増やして上級感を演出したりと、時代に応じた変化を重ねてきた。しかし新型は“ハコ”であることを強調した四角くクリーンなスタイルを追求。プレーンな魅力を押し出しているのが印象的だ。

全体的なフォルムも原点回帰を思わせるが、中でも、初代や2代目モデルを想起させるのがリアスタイルだ。単に四角いだけでなく、縦長のテールランプがかつてのステップワゴンをイメージさせる。

潔いまでのシンプルなルックスは、押し出しの強い、いわゆる“オラオラ系”モデルが幅を利かせる現在のミニバン市場に一石を投じそうな予感がする。

■新型はエアとスパーダの2シリーズ展開に

2代目モデルから、標準仕様と上級&スポーティな「スパーダ」というふたつのシリーズを展開してきたステップワゴン。しかし新型は、ふたつのシリーズを展開し、スパーダを継承するところまでは従来と同じだが、標準仕様のポジショニングが変化し、「エア」と呼ぶ新シリーズへと生まれ変わったのが特徴だ。

エアのポイントは、徹底的にシンプルさを貫いていることだ。エクステリアからは最大限に装飾を排除。フラットな形状のバンパーなど、クルマとしての存在感よりも、その名の通り、空気のような自然な存在感を狙っている。

デザイナーによると「単にシンプルさを追求しただけでは商用車っぽく見えてしまうため、実は細かいところまでこだわった」のだとか。例えばフロントグリルの造形は、一見、シンプルでありながら上質感を感じられるよう巧みにデザインされており、フロントドアと両側スライドドアのドアハンドルがつながっているように見えるのも、シンプルに見せるための工夫である。

また、ヘッドライトのL字型シグネチャーランプに、デイタイムランニングライトとスモールランプに加え、ウインカーまで集約したのもシンプルなフロントマスクの実現にひと役買っている。3つの機能を併せ持つランプを備えた車種は最近では珍しくないが、ウインカーの点灯箇所が内側から外側に流れるシーケンシャルタイプとなる車種はそう多くない。

一方スパーダは、フロントグリルや前後バンパーが専用形状となり、エアに対して全長が20㎜伸びている。ボディ下部を覆う部品をエアロパーツのような形状とすることでしてボリューム感を増しているほか、フロントグリルやボディ下部にクロームのアクセントを加えることで上質感を高めた。

とはいえフロントマスクは、イマドキのエアロ仕様ミニバンと比べると控えめな印象で、ヤンチャではなく大人の雰囲気にまとめているのがライバルとの大きな違いといえる。

■ひとクラス上の機能性と快適性を実現した室内

インテリアもエアとスパーダとでは差別化が図られている。

エアはグレーもしくはブラックの色調で、シート表皮には撥水機能を持たせたファブリックを採用。対するスパーダは、ルーフライニングまで含めて空間をブラックで統一し、“プライムスムーズ”と呼ばれる肌触りのいい合成レザーとファブリックを組み合わせたシート表皮をあしらっている。プレミアム感という点ではスパーダに軍配が上がるものの、エアのカジュアルな雰囲気もなかなか居心地がいい。

インテリアといえば、新型ステップワゴンはシートのつくりやアレンジがひときわ上級になっているのが印象的である。

シートレイアウトは従来通り、2列目にセパレートシートを採用した2名掛けの7人乗りと、2列目がベンチシートになった3名掛けの8人乗りを設定するが、新型の主力はあくまで前者。セパレートシートは、先代モデルにはなかったオットマンが追加されて快適性が高まっているほか、シートベルトが背もたれ内蔵式となり、スライド位置にかかわらず最適に装着できることで安全性も向上している。

また、2列目シートに左右スライド機構や最大865㎜のロングスライド機構も採用し、シートアレンジの幅が広がったのも新型ステップワゴンのニュースといえる。実はそれらは、2021年末に生産を終了した「オデッセイ」に搭載されていたもの。つまり、従来はより上級なオデッセイが担っていたポジションや快適性を、新しいステップワゴンは実現しているのである。

ちなみに3列目シートは、座面のクッション厚を20㎜アップさせて座り心地を改善している。にもかかわらず、このクラスのミニバンで唯一の床下収納機構は継承。その分、ラゲッジスペースの使い勝手が高いなど、3列目シートをあまり使わないユーザーにとっては利便性が高いといえる。

■“わくわくゲート”は泣く泣く廃止に

気になるパワートレーンは従来通り、2リッターの自然吸気エンジンにモーターを組み合わせた“e:HEV(イー・エイチイーブイ)と呼ばれるハイブリッドと、1.5リッターのガソリンターボエンジンが用意される。ただし、先代のハイブリッドはスパーダ専用だったが、新型はエアも含めた全シリーズに用意される。そのため新型では、ハイブリッド仕様が売れ筋となりそうだ。

一方、先代ステップワゴンの象徴的な装備、リアゲートに横開きドアを組み合わせた独自機能“わくわくゲート”は、新型には受け継がれなかった。その理由について開発陣は、「購入いただいた方からは好評だったが、“買っていただけなかった人”からは敬遠される理由になっていたため」と語る。

リアデザインが左右非対称になること、リアウインドウに“柱”が入ってしまうことなどが敬遠された主な理由だというが、「それを解消するためにさまざまなアイデアを試して残そうと努力したが、解決できなかった」のだとか。わくわくゲートを便利だと感じていたユーザーにとっては残念だが、市場の声に耳を傾けた結果の取捨選択といえるだろう。

直接的なライバルであるトヨタの「ノア」と「ヴォクシー」も新型へのフルチェンジを控えているなど、2022年はこのクラスのミニバンが熱くなりそうだ。スタイルを見ただけで、独自路線で勝負に打って出たことが分かる新型ステップワゴンが、市場でどのような評価を得るのか? 今からその行方が楽しみだ。

>>ホンダ新型「ステップワゴン」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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