挑戦的で押し出しの強いフロントマスクが話題を集めているBMW「4シリーズ クーペ」の4ドアバージョン「4シリーズ グランクーペ」が上陸した。
美しいシルエットは、ベースモデルである4ドアセダンの「3シリーズ」以上。さらに、4枚のドアを備えたことにより、使い勝手では4シリーズ クーペ以上を実現した欲張りなモデルだ。
果たしてその魅力や存在意義はどこにあるのだろう? 実車に触れて乗って確かめた。
■クーペのように流麗なスタイルを採用した4ドアモデル
昨今、4ドアクーペというジャンルが人気なのをご存じだろうか? クーペといえば一般的に2ドアモデルを指すが、4ドアクーペはその名の通り4枚のドアを持つ。リアピラーを寝かせ、まるでクーペのように流麗なスタイルを採用した4ドアモデルで、クーペセダンも同様のジャンルを指す。
その起源は、1985年にトヨタから登場した「カリーナED」の初代モデルとされるが、日本車ではカリーナEDのフォロワーが多く誕生した後、人気が陰って消滅。しかし海の向こうでは、2005年にメルセデス・ベンツ「CLS」が登場すると人気に火がつき、今では多くのブランドが4ドアクーペをラインナップするに至っている。
ここに紹介するBMWの4シリーズ グランクーペも、そんな4ドアクーペのジャンルに属す1台だ。ネーミングから分かる通り、このモデルは「4シリーズ」の一員。4シリーズといえば、4ドアセダンの「3シリーズ」をベースとした2ドアクーペであることから、4シリーズ グランクーペは“4ドアセダンの2ドアクーペ版をベースに開発された4ドアクーペ(もしくは4ドアクーペセダン)”という、ちょっと分かりにくいポジショニングとなる。
ちなみにこの手法は、兄貴分である「8シリーズ グランクーペ」が、“4ドアセダンの「7シリーズ」から派生した2ドアクーペ「8シリーズ」をベースに開発された4ドアクーペ”なのと同じである。
■4ドアながら堂々と“クーペ”を名乗れる美しさ
ということで、立ち位置はちょっと曖昧だが、BMWのグランクーペは、4ドアながら堂々と“クーペ”を名乗るのが潔い。その理由は、4シリーズ グランクーペの実車を目の前にするとすぐ理解できる。
正統派セダンである3シリーズとの違いは一目瞭然。基本構造を同じくする4ドアモデルながら、4シリーズ グランクーペはなめらかで優雅なスタイルが印象的だ。3シリーズはとことんフォーマルなのに対して、4シリーズ グランクーペはエレガントで遊び心を感じさせる。
4シリーズグランクーペのルックスが、3シリーズに比べてスマートかつ伸びやかに見えるのは、デザインはもちろんのこと、ベースとなるボディサイズの違いも大きい。3シリーズに比べると、4シリーズ グランクーペは全長が70㎜長く、全幅は25㎜ワイド。より長くワイドな分、シルエットが伸びやかなのだ。
また4シリーズ グランクーペは、エクステリアのディテールが3シリーズや4シリーズと作り分けられている点にも注目したい。
その一例がドアハンドルだ。これまでBMWは、手で握ったハンドルを引っ張ってドアを開ける“グリップタイプ”を採用。3シリーズや2ドアの4シリーズクーペもそのタイプを採用している。しかし4シリーズ グランクーペは、なぜかドアパネルとフラットになっていて、下から手を差し込んで引き上げる“フラップタイプ”のドアハンドルを採用する。
また、高性能バージョンの「M440i xDrive グランクーペ」では、これまで「M4」などの“Mハイパフォーマンスモデル”だけに採用されていた、レーシングカーを想起させる形状のドアミラーを取り入れている。もしかしたら新しい4シリーズ グランクーペから、BMWのデザイン言語に変化が生じているのかもしれない。
■居住性や荷室の使い勝手はフツーのセダンと同感覚
流麗でオリジナリティのあるルックスをまとった4シリーズ グランクーペは「つまらないセダンはイヤだ」とか、「本当はクーペが欲しいけれど家族がいるからセダンを選ばなきゃ」なんて人に、ちょうどいい1台といえそうだ。
でも中には、「リアウインドウが寝ているからリアシートの居住性や荷室の使い勝手はイマイチでは?」と危惧する人も多いのでは? しかし、それは誤った解釈だ。
実際リアシートに座ってみると、標準体型の大人であれば座って移動するのに苦労しないだけの頭上空間が確保されていて、窮屈な思いをする心配はない。もちろん着座姿勢も自然なものだ。多くの人にとっては想定外かもしれないが、4シリーズ グランクーペには4ドアセダンの3シリーズとそん色のない居住性が確保されていて、フツーのセダンと同じ感覚で乗ることができる。
そして、もうひとつの想定外といえるのが、このクルマは単なる4ドアクーペではないということ。トランクリッドがリアウインドウまで含めてガバッと大きく開くのだ。厳密には“5ドアハッチバック”と呼ぶべき設計で、ラゲッジスペースの開口部が大きい分、大きな荷物なども出し入れしやすい。
470Lという荷室容量は3シリーズのそれに比べて10L小さいが、開口部の大きさもあって、使い勝手の面では逆に3シリーズをリードするケースも多い。
■シャーシの強度や重量バランスは3シリーズを上回る
4シリーズ グランクーペは、184馬力を発生する2リッター4気筒ターボエンジンを搭載する「420i グランクーペ」と、387psの3リッター直列6気筒ターボエンジンを積むM440i xDrive グランクーペの2グレードが用意されている。今回、試乗したのは後者の方だ。
3シリーズや4シリーズクーペにも搭載される3リッターの直列6気筒ターボエンジンは、単にハイパワーというだけでなく、エンジン回転数が高まっていく際のツヤっぽさ、よどみなくパワーがわき出るような力強さ、アクセル操作に対する反応の良さ、そして、高回転域でのパンチ力など、エモーショナルな魅力に満ちあふれている。
また、ハンドルを切るとスッと俊敏にクルマが向きを変えるハンドリングフィールも、ドライバーの期待を裏切らない仕上がり。エンジンやフットワークの心地よさは、まさにBMWの面目躍如といったところだ。
その一方、これまた想定外だったのは上質な乗り味。路面に凹凸があることを感じさせないフラットなライドフィールや、車線変更時の挙動の落ち着きぶりなどは、完成度が高いと思えた3シリーズのそれを上回っている。
その理由は、おそらく車体構造にあるのだろう。実は4シリーズ グランクーペは、シャーシやサスペンションの取り付け部などが3シリーズよりも強化されている。また、エンジン周辺パーツの素材をアルミ化するなど、車両重量減と前後重量バランスのさらなる最適化も図られているのだ。
4シリーズ グランクーペは、定番セダンの3シリーズに対し、実用性を損なうことなく美しいスタイルをまとっているのが最大の特徴だ。しかし魅力はそれだけにとどまらない。各部を磨き上げることでひときわ完成度の高い走りを手に入れた4ドアの理想型とも呼べる1台だ。
<SPECIFICATIONS>
☆M440i xDrive グランクーペ
ボディサイズ:L4785×W1850×1450mm
車重:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:2997cc 直列6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:387馬力/5800回転
最大トルク:51.0kgf-m/1800~5000回転
価格:1005万円
文/工藤貴宏
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/424642/
- Source:&GP
- Author:&GP