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2021年、モバイルアプリは新型コロナパンデミックにどう適応したのか

アプリ情報分析会社のSensor Tower(センサー・タワー)が米国時間1月10日に発表した年次報告書によると、新型コロナウイルス感染拡大は、引き続きモバイルアプリのエコシステムに影響を与えているようだ。

ウイルス感染拡大初期の頃には、オンラインショッピング、エンターテインメント、ビジネス、教育などを目的とした多くのアプリの利用が急増した。その後、世界の多くの地域で日常が戻りつつあるが、アプリストアではまだ通常の状態には戻っていない。アプリのカテゴリーによっては、依然としてウイルス感染拡大前の水準をはるかに上回るダウンロード数を記録しているものもあれば、まだ以前の状態には完全に回復していないカテゴリーもあることが、今回のレポートで明らかになった。

旅行系アプリは、各国が国境を閉鎖したり、対面式のイベントが中止になったりしたため、当然ながら新型コロナウイルスの影響を大きく受けた。また、リモートワークの増加にともない、ライドシェアアプリなど、毎日の通勤に関連するアプリのニーズも減少した。その結果、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受けたカテゴリーは、旅行系アプリとナビゲーション系アプリであり、2020年4月のインストール数は2019年の月平均と比較して約40%減少した。

画像クレジット:Sensor Tower

旅行カテゴリー全体が、ウイルス感染状況の波に左右されていることは明らかだ。例えば、夏の間に状況が好転し始めると、旅行アプリは成長を取り戻し始めた。そして夏の旅行がピークに達する2021年7月には、旅行アプリは2019年の平均値にほぼ達していたと、Sensor Towerは述べている。しかし、オミクロン株が出現すると、旅行アプリは増加が収まり始め、2021年12月の時点では2019年の水準と比べて再び14%減少、ナビゲーションアプリは22%減少している。

他のアプリカテゴリーは、ウイルス感染の急上昇との日々の戦いによる影響が少なく、むしろ長期的にシフトする傾向を表している可能性がある。ビジネス系アプリはその最たる例だ。このカテゴリーのインストール数は、多くの企業がフルタイムのリモートワークを導入したり、オミクロン株の急増を受けてオフィスへの復帰計画を延期したりする中、高い水準を維持している。2021年のビジネスアプリのダウンロード数は、ウイルス流行前の2倍以上(102%)の伸びを示した。

画像クレジット:Sensor Tower

ウイルス感染拡大時には、当然ながら医療用アプリの利用が増えた(そしてそれが新型コロナウイルスとの戦いにおける成果を代弁しているのであれば、状況は良くないといえるだろう)。このカテゴリーは、2019年のレベルから大きく上昇しており、2021年12月のダウンロード数は、2019年の月平均と比較して187%増となっている。

他にもウイルス感染拡大による成長の恩恵を受け続けているカテゴリーはあるものの、その程度は低くなっている。ゲーム、健康・フィットネス、教育の各アプリカテゴリーは、2019年の水準と比較して、それぞれ39%、31%、19%の増加となっている。スポーツ系アプリは、2020年後半にリーグ戦が再開されるとすぐに立ち直り、2021年には2019年の水準よりも3%と控えめながら増加した。

アプリのダウンロード数が正常化したかどうかは、国によって異なると報告書は指摘している。北米では、他の地域に比べて最も早く2019年の合計数に戻っている。一方、新型コロナウイルスの影響が長く続いたのはアジア市場で、2021年第4四半期の時点で、ゲームはウイルス感染拡大前の水準よりもまだ40%近く増えており、旅行アプリのインストール数はまだ25%も減少している。

また、米国では、ナビゲーションアプリやライドシェアアプリが依然として低迷しているにも関わらず、航空会社、バケーションレンタル、旅行代理店など、一部の上位の旅行アプリはウイルス流行前の水準を上回っている。欧州市場は成長が復活しつつあるものの、旅行系の各サブカテゴリーの上位アプリは、ナビゲーションアプリやライドシェアアプリと同様に、ウイルス流行前の合計値を下回っている(以下参照)。

画像クレジット:Sensor Tower

画像クレジット:Sensor Tower

なお、この数字にはApple(アップル)やGoogle(グーグル)が提供するプリインストール・アプリや、Google Play(グーグル・プレイ)以外のサードパーティによるAndroidアプリストアからのダウンロード数は含まれていないことを、Sensor Towerは注記している。

同社の報告書では、2021年のその他の注目すべきトレンドについても詳しく説明している。例えば、過去1年の間に暗号資産がモバイルに移行したことから、金融カテゴリーでは2021年第4四半期までに前年比35%の成長が見られた。ゲームでは「Garena Free Fire」が、2020年の最大ヒット作だった「Among Us」や、2019年のトップゲーム「PUBG Mobile」を抑えて、ついにダウンロード数でトップに立った。

もちろん、インストール数の増加は、新型コロナウイルス感染拡大がアプリ経済に与える影響を検証するための1つの方法に過ぎない。アプリ全体の利用率が高まったことから、アプリに対する消費者の支出も新たなレベルに達している。2021年第3四半期、アプリストアは消費者支出から280億ドル(約3兆2300億円)という記録的な収益を上げ、通年では1330億ドル(約15兆3500億円)に達する勢いを見せた。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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