農林水産省の発表によると、国内における令和元年度の食品ロス量の推計値は570万トン。そのうち、企業などが排出するものが309万トン、消費者が排出するものが261万トンとされ、企業および消費者の排出量はおよそ半々となっています。
食品ロス削減への注目が高まるなか、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)は、一般家庭における食品消費の最適化を起点にフードチェーン全体の効率化の方策を検討する「SFC(スマートフードコンサンプション)構想研究会」を2019年に設立しました。
そしてこのたび、同研究会の活動の一環として、食品ロス削減に資する3つの実証実験を開始すると発表。フードチェーン全域を、産地~小売店舗、小売店舗、小売店舗~消費者という3領域に分け、それぞれ検証を行います。
なお同実験には、日本総研のほか、同研究会の参画企業であるシルタス株式会社、株式会社イトーヨーカ堂、今村商事株式会社、株式会社サトー、凸版印刷株式会社、株式会社日立ソリューションズ西日本が参加するとのことです。
青果物のさまざまな情報をタイムリーに提供
また、凸版印刷が開発したLPWAの規格“ZETA”を組み込んだ電子タグ「ZETag」を生産出荷時のコンテナに取り付け、青果物の流通状況をリアルタイムで追跡しながら、消費者への販促のタイミングを最適化する検証も行われます。
実験1は、1月12日(水)~1月31日(月)の計20日間、イトーヨーカドー曳舟店にて、イトーヨーカ堂・凸版印刷・日本総研主体で実施予定です。
電子棚札とダイナミックプライシング
対象商品は、同一SKU内でも賞味・消費期限のバラツキが発生することの多い10SKU。商品の入荷時に、賞味・消費期限別のコードが印字されたラベルを貼り付け、ラベルのデータを専用ツール「サトー・ダイナミック・プライシング・ソリューション(SDPS)」に取り込むことで、賞味・消費期限別の在庫状況を踏まえたダイナミックプライシングを行います。
電子棚札を活用することで、手作業による値引きラベルの貼付などでは難しかった、より細かな金額幅での値段変更ができるようです。また、電子棚札での価格表示によって店舗業務の効率化にも期待できるでしょう。
実験2は、1月12日(水)~1月31日(月)および2月9日(水)~2月28日(月)の計40日間、イトーヨーカドー曳舟店にて、イトーヨーカ堂・サトー・日本総研主体で実施されます。
購買データと消費・廃棄データを活用
まずは、参加者のスマートフォンに買い物リストや栄養バランスを考慮した商品レコメンドを表示することで、購買行動をサポートできるかを検証します。
また、Bluetoothタグと重量センサの組み合わせ、あるいは手入力により消費・廃棄データを取得。このデータを購買データと連携させ、家庭内の在庫管理が可能かを検証します。加えて、商品購入などに使えるポイントを付与することで、消費者による消費・廃棄データの登録作業が促進されるかも検証するようです。
さらに、家庭の在庫情報と各食品のおおよその賞味・消費期限を勘案したレシピ提案で、期限の近い食品の優先消費を支援できるかを検証。このレシピは、栄養バランスを考えたものであり、不足する栄養素を含む食材の購買を促すものでもあります。加えて、購買データをもとに予測した健康状態をキャラクターに反映し、健康的な買い物の支援と購買促進が可能かを検証するとのことです。
そして、川下の情報源である消費・廃棄データを活用し、小売りにおける需給予測が可能かどうかも検証します。実験3は、1月12日(水)~1月31日(月)および2月9日(水) ~2月28日(月)の計40日間、イトーヨーカドー曳舟店と参加者(20~60代の男女、約100名)の自宅にて、イトーヨーカ堂・今村商事・サトー・シルタス・日立ソリューションズ西日本・日本総研主体で実施されるとのことです。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/170745
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口