試してみたいアプリやツールはたくさんある。大半の企業は試用したい人に対して標準的なフォームへの入力、その後にユーザー名とパスワードの作成を求める。手続きをすべてした後で、そのアプリは評判通りではないことがわかったりする。
Arcadeはこの状況を変えようとしている。米国時間1月11日に正式に発表されたこのインタラクティブデモの会社は、企業が「アーケード」と呼ばれるデモビデオを簡単に作成してツールの動作を紹介できるようにする。
以前にAtlassianの同僚だったCaroline Clark(キャロライン・クラーク)氏とRich Manalang(リッチ・マナラン)氏が創業した同社は、シードラウンドで250万ドル(約2億8800万円)を調達したことも発表した。このラウンドを主導したのはUpfront Venturesで、SequoiaとBondの他Mathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Laura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏、Jaren Glover(ジャレン・グラバー)氏、Eric Wittman(エリック・ウィットマン)氏、Jonathan Widawski(ジョナサン・ウィダウスキー)氏、Lenny Rachitsky(レニー・ラチツキー)氏などのエンジェル投資家も参加した。
クラーク氏とマナラン氏は2021年前半にArcadeを創業し、2021年7月にプライベートベータ版を公開した。これまでに約300社が順番待ちに登録した。そのうち90社は無料版の使用を開始し、125以上のアーケードが制作された。
Arcadeではクリックする場所を記録したデモを作り、それをプロダクトのスニペットとしてウェブサイトやブログ、ツイートに埋め込むことができる。このようにして、プロダクトを使ったことのない人が試用版を申し込む前に動作を見ることができる。
マーケティング畑のクラーク氏はTechCrunchに対し、プロダクト・レッド・グロースというコンセプトの先駆者であるAtlassianに同氏とマナラン氏が在籍していたときに、顧客の多くはウェブサイト以外のところでAtlassianのプロダクトを発見していることに気づいた。問題は、そうした発見をより良いものにするための解決策がわからないことだった。
クラーク氏は「プロダクトから何を得られるかを明確に示し、人々が簡単に楽しく発見できるようにしたいと考えました」と述べた。
顧客は購入するプロダクトやツールに常に期待を持っているが、クラーク氏によれば、やみくもにサインアップすることはもうしたくないというようにここ数年で考え方が変化しているという。
これまで販売はデモの背後に隠れて関与し、企業は誰かの情報を獲得すると「やった!」と喜んでいた。クラーク氏の説明によれば、Arcadeの顧客の1つであるClockworkは財務の専門家と関わる企業で、見込み客に対して請求書をClockworkのプロダクトと関連づければClockworkの動作を確認できると説明することが多かったが、これはハードルが高い。Arcadeを利用することでClockworkは見込み客に対して請求書のデータをアップロードすることなくプラットフォームの動作を見てもらえるようになった。CartaもArcadeを利用している企業の1つで、アーケードを自社のさまざまなソーシャルメディアで展開しているとクラーク氏は述べた。
Arcadeは新たに調達した資金でプロダクトとウェブサイトを構築し、エンジニアリングとプロダクトデザイナーも増員する。クラーク氏は、3人のチームで90社をサポートしてきたが2022年中にはスタッフを倍増したいと語る。
同社は今後、マーケティング、機能、展開に力を入れていく。
クラーク氏は「自社のデータを実際に使う前に動作がわかるようにしていきます。プロダクトのアップデート、他のプロパティとの統合、顧客がさらにパワフルなツールを作れる機能に投資する予定です」と述べた。
Upfront VenturesのパートナーであるAditi Maliwal(アディティ・マニワル)氏はメールで、クラーク氏とは数年来の友人で「5年から、長くて10年のジャーニーをともにすることを大変うれしく思っています」と記した。
マリワル氏はさらに次のように述べた。「クラーク氏はバリュードリブンで、知的で誠実な創業者です。私は力のある創業者に投資をします。ファウンダーマーケットフィットで本物のビジョンを作れる創業者です。私は極めて早い段階で、キャロライン(・クラーク氏)が何を作っているにしても投資したいと思っていました。PLG(プロダクト・レッド・グロース)の市場も成長が早く、また現在の私たちの世界はほとんどバーチャルになっています。ベンダーのプロダクトを試すために営業担当者とZoomや電話をするという考え方は、ユーザーのニーズやフローに混乱をもたらすと思います。ユーザーにとっては、ベンダーのランディングページで自分のデータの実例をシンプルに見ることができればもっとずっと手軽であるはずです。Arcadeによってクリエイターは魅力的なエクスペリエンスを作り、自分の仕事に誇りを感じられるようになります」。
Arcadeを創業した2人は顧客になる可能性のあるデザインパートナーを見つけようとしていたと、マリワル氏は最初から考えている。Atlassianで仕事をしていたころ、創業者の2人はプロダクトを見込み客や顧客に見せる効果を実際に体験していた。
マリワル氏は「2人はペインポイントを極めて早い段階で理解していました。2人は、差別化は結局デザインの楽しさであり、マーケッターとエンドユーザーにとってできるだけシンプルにすることであると認識しています。キャロラインとリッチ(・マナラン氏)は強力な会社を作ることに努めていて、まずデザインに優れたプロダクトと優秀なチームを作ることからスタートしました」と述べた。
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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)