Amazon(アマゾン)は、決済手数料をめぐる論争で、英国でのVisa(ビザ)カード決済のサポートを終了すると公に脅していたが、撤回したようだ。
同社は現地時間1月17日、Amazon.co.ukのユーザーに電子メールを送り、1月19日に予定されていた「見込まれる変更」が、同日から実施されないことを知らせた。
ただ、AmazonとVisaが手数料について持続的な条件に達したかどうかはまだ明らかではない。
「Amazon.co.ukでのVisaクレジットカードの使用に関して予定されていた変更は、1月19日には行われなくなりました。当社は、顧客がAmazon.co.ukでVisaクレジットカードを使い続けられるような潜在的な解決策について、Visaと緊密に連携を取っています」と、Amazonは英国のユーザーに宛てた電子メールに書いている。
「Visaクレジットカードに関連する何らかの変更を行う場合は事前にお知らせします」と続け「それまでは、Visaクレジットカード、デビットカード、Mastercard、American Express、Eurocardを現在同様に使い続けることができます」と付け加えた。
AmazonとVisaにコメントを求めたところ、この動きを認めたが、それ以上の詳細については説明しなかった。
Amazonは、今のところ何も変わらないというユーザーへの簡潔な声明以上のコメントを却下した。
Visaの広報担当者も「潜在的な解決策」が実際に何を意味するのかについては詳しく説明しなかった。「Amazonの顧客は、我々が合意に達するために緊密に協力している間、1月19日以降もAmazon.co.ukでVisaカードを使用できます」と記した声明の中で、手数料に関する交渉が続いていることを暗に示している。
2021年末にAmazonは英国のユーザーへの電子メールで、Visaのクレジットカード決済に課す高い決済手数料を理由にVisa決済のサポートを終了し、Amazon.co.ukでの買い物の支払いに代替手段を用意するよう警告していた。
関連記事:英Amazonで1月19日から英国発行Visaクレジットカードが使えなくなる
その際の大量の電子メール送信というやり方は、Amazonが自社の市場パワーを利用してVisaからより良い条件を引き出そうとしたように思われた。
それが功を奏してVisaにクレジットカード手数料を引き下げさせることができたのか、それともAmazonが英国の買い物客に大きな混乱をもたらす瀬戸際から一歩下がることにしたのかは不明だ。
後者であれば、Amazonはすでに、Visaベースの支払い方法に依存する英国のユーザーに、近い将来、同社のサイトで買い物を続けられるかどうか、数カ月にわたって不安を与えていたことになる。
Visaは2021年11月に、Amazonが「将来的に消費者の選択肢を制限すると脅している」ことを残念に思うと述べ「消費者の選択肢が制限されて得をする人はいない」とも主張していた。
Visaは当時、Visaカード保有者が英国で発行されたVisaクレジットカードを引き続きAmazonのウェブサイトで使用できるよう、解決に向けてAmazonとともに取り組んでいると述べていた。
それから数カ月経ったが、Amazonが英国発行のVisaカードの利用を停止する期限が迫っている中でも交渉は続いているようだ。
Amazon.co.ukでのVisa決済の手数料上昇は、英国のEU離脱と関連している。ブレグジットにより、英国と欧州経済領域 / EU間の取引で課される手数料の上限が撤廃されたからだ。
しかし、この問題はおそらく、Amazonが英国のビジネスをどのように構築しているかという点にも関わっている。同社は、英国の顧客にEU拠点の法人を通じて請求し、英国のウェブサイトを通じて計上した収益をルクセンブルグの欧州本社に移しているためだ。
City AMの2021年8月のレポートによると、Amazonはこの企業構造によって、かなり高額な英国の税金の支払いを免れることができたという。しかし、同じ「利益移転」構造によって、AmazonはVisa「税金」をかなり多く負担しているようだ(というか、負担してきた……)。
画像クレジット:David Ryder/Stringer / Getty Images
[原文へ]
(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi)