アクセス管理とアイデンティティ管理の大手Oktaが提供するクラウドアプリケーション / サービスの利用に関する2022年(2020年11月1日-2021年10月31日)の「Business at Work」リポート(第8巻)によると、ユーザーの多くは従来のように単一ベンダーに固執するのではなく、各種業務のための最良のサービスを選ぶようになっているという。
やはりMicrosoft Office 365は依然として最も人気のあるサービスで、2位はAWS、3位はGoogle Workspaceで、前年比38%増と急成長している。しかし興味深いことに、単一ベンダーに縛られないようにしたいという願いが表れておりOffice 365を利用している企業の38%がGoogle Workspaceも利用しており、45%がZoom、33%がSlackも利用している。
Microsoftには、Zoomのビデオ会議機能とSlackの内部コミュニケーション機能を担当するTeamsがあり、Google WorkspaceがOffice 365と直接ライバル関係にあることを考えると、たとえMicrosoftが同様のツールを提供していても、企業は納得のいく競合製品を選ぶだろうことということを示している(少なくともOktaのユーザーはそうするだろう)。
とはいえ、このレポートは、マルチクラウドの利用やベンダー主導からの脱却など、市場で以前から耳にしているトレンドを反映している。
このことは、急成長中のツール(Notion、TripActions、Postman、Keeper、Airtable、Fivetran、Gongなど)の多くがBusiness at Workレポートデビューを果たした理由を説明しているかもしれない。なお、Fivetranは9月に56億ドル(約6374億8000万円)の評価額で5億6500万ドル(約643億2000万円)を調達している。Gongは2021年6月、75億ドル(約8538億2000万円)の評価額で2億5000万ドル(約284億6000万円)を調達。Airtableは2021年3月に57億ドル(約6489億1000万円)の評価額で2億7000万ドル(約307億4000万円)を調達しており、これらの企業が(少なくともOktaの世界で)主流になりつつあると同時に、投資家の目にはその価値が急上昇していることを示している。これが偶然だとは考えにくい。
AWSはクラウドインフラストラクチャ市場のトップだが、Oktaのデータでも同様で、ユーザーの32%がAWSを利用という数字はそのままAWSのマーケットシェアでもある。そもそもAWSは近年、毎年ほぼい3分の1というシェアを安定的に維持している。
クラウド市場のマルチクラウドへの移行を受けて、Oktaのユーザーも14%がマルチクラウド方式を実装している。14%は、市場全体の動向よりやや小さいかもしれないが、でも2017年の8%よりは大きい。しかし意外にも、単独で人気の高いインフラストラクチャベンダーであるAWSとGCPの組み合わせは2.6%と小さい。
クラウドはもちろん、米国だけの現象ではない。このレポートによると、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、中東などそれぞれで、さまざまなクラウドアプリケーション / サービスが使われている。その中で断トツはGoogle Workspaceで、APAC市場では前年比で68%伸びている。そしてSlackとZoomは、EMEA市場でそれぞれ49%と45%ユーザーが増えた。
このレポートの対象となっているOktaのユーザーはおよそ1万4000、彼らが上記期間に使ったクラウド / モバイル / ウェブアプリケーションは7000種だ。もちろんこれは、クラウド利用の全体の数字ではない。しかしそれでも、今日の企業とその社員たちのクラウド利用の実態が伺える。
OktaのCEOであるTodd McKinnon(トッド・マッキノン)氏によると、同社はこのレポートのための小さな専門チームを作ってデータの収集や整理を行っているという。
「5、6人ほどで、さらにデータウェアハウスの担当者2人がクエリと分析をやっている。私とコンテンツとPRの担当が、何がおもしろいか、口出しをすることもあります。そしてもちろん、ここに登場するユーザー企業はすべて私たちのパートナーであるため、彼らの話も聞きます。彼ら自身も、このデータに関心を持っています」。
画像クレジット:sorbetto/Getty Images
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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)