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ブルドーザーといったらゴツイ履帯でしょ!【達人のプラモ術<D9R装甲ブルドーザー >】

【達人のプラモ術】
モンモデル
1/35 イスラエル陸軍 D9R装甲ブルドーザー
03/06

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

イスラエルの魔改造ブルドーザー「D9R」のキット製作も3回目。いよいよ履帯(キャタピラ)に取り掛かります。昔はゴムっぽいものをびよーんと伸ばして取り付けていたのですが、最近はリアリティ重視。ちゃんと重さを感じられるように、取り付けると垂れ下がるようになっているんですね。とはいえこの組み立て、本当にめんどくさそう…。

*  *  *

戦うブルドーザー「D9R」の製作もいよいよ佳境に突入! 今回は、戦車模型(ブルドーザーだけど)のキモともいえる履帯の製作です。キットはプラ製の組み履帯が付属していますが、今回はよりリアルを追及。アフターパーツで発売されているホワイトメタル製連結可動キャタピラを奢ってみました! その成果やいかに!?

★達人流製作のポイント!★

①履帯は別売のディテールアップパーツを使用

②金属履帯の組み立ては根気が大事

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■転輪(足まわり)の製作

車体の左右の転輪はそれぞれ独立しており、駆動力を伝えるスプロケットホイールが高い位置に取り付けられているなど、一般的な戦車とは違った、建機なのだなと思わせてくれる構造がなかなか面白い「D9R」。

転輪は基本的に接着ですが、スプロケットホイールは履帯を噛み合わせる関係で可動(回転)します。しかしこの足まわりって某アニメのガン〇〇クに似ている…いやあっちが似せているのかも(笑)。

▲足まわりがユニットになっていて、左右が独立している。キットは胴体と別に組めるので作業しやすい

▲転輪が収まるH3、H4、H5、H6のパーツは裏側に突き出しピンの跡が大きく出っ張っており(矢印の部分)、そのままでは転輪を組みつけられないのでカットする必要がある

▲転輪が収まるパーツの裏側は後から塗装できないので、この時点で黒に塗っておく

▲塗装とアイドラーホイールの取り付けが終わった状態

▲左右を合わせてしっかりと接着しておく

▲組み上がった左右のユニットとスプロケットホイール。足回りはこの4点で完成。これに履帯が組み合わさる

 

■履帯の製作

いよいよ今回のハイライト、履帯を製作していきます。キットはプラ製の組み履帯が付属。それなりにリアルな仕上がりになりますが、今回はフリウルモデルの金属製履帯を使います。

パーツ構成自体はキットと同じで、3個のパーツで1枚の履帯を再現。それを片側43枚、両側で86枚連結していきます。

想定外だったのが、フリウルのパーツは連結用のピンを貫通させる穴が小さく、そのままでピンが差し込めなかったこと。そのため、笹刃タイプのきさげカッターで穴を削って広げることに(粛々と172個のパーツの穴を広げました…)。

▲キットのプラ製組み履帯。もちろんそのまま使用しても十分鑑賞に耐えるディテールを再現できる

▲フリウル製履帯も構成はキットと同じ。片側で43枚、左右で合計86枚使用するが、セットには10枚程度多めに入っている

▲フリウル製履帯の組み立てガイドはこれだけ(笑)。でも図解で理解できるので大丈夫

▲パーツを3個一組で組んで連結していき履帯1枚を再現。これを左右それぞれ43枚繋いでいく

▲パーツは連結用の穴が小さくピンが通らなかったため、きさげカッターで穴を削り広げる必要があった。ホワイトメタルなので簡単に削れるが、左右合わせて172個もの穴を削らなくてはいけない

▲パーツの穴を広げるのに使用した笹刃きさげカッター。本来はパーティングラインを削るなどの作業で使用する。ホワイトメタルはプラよりも柔らかいので削れる。童友社製:価格1980円

▲組み立てが完了した金属(ホワイトメタル)製履帯

▲実物同様にカクカクと折れ曲がるのがリアル

▲フリウルの金属性履帯を使ってディテールを大幅にアップ!

パーツはホワイトメタルなので接着には瞬間接着剤を使用します。ちなみに左右の履帯を組み上げるのに半日かかりました。組み立ては苦労しますが、車体に仮組みしてみると、やはり各段にリアルさがアップ。金属製ということもありますが、見た目の重量感も増し増しになりますよ。

 

■キャビンの仕上げ

前回はD9Rの特徴的なキャビンを製作しました。キットは車体、キャビン、足回り、さらにドーザー部分がそれぞれブロック化されており、独立して組めます。複雑な形状の車体ですが、思いのほか組みやすいのがありがたいですね。

足回りが完成したら、インスト(説明書)に従って、さらにキャビンの外側の装甲板や外装パーツを取り付けていきます。

車体やドアの各部にはコの字型の手すりが多数付きますが、細く折れやすいので注意が必要です。

車体左側のジェリ缶(予備燃料)のステーはエッチングパーツ折り曲げて製作します。車体下側には後部のリッパーを作動させる油圧パイプが軟質素材で再現されています。

▲組み上がったキャビンブロック

▲ジェリ缶ラックはエッチングパーツで再現されている

▲キャビン下側のリッパーに繋がる油圧パイプは軟質素材で再現されている。接着には瞬間接着剤を使用する

▲メタル履帯を仮組した状態、このままでも良い感じだが最終的には履帯も塗装する

 

■天板は接着しない

天井パーツは1枚で再現されていますが、接着してしまうとせっかくリアルに塗装して仕上げたキャビン内部がほとんど見えなくなってしまうので、あえて接着せず、外して内部のディテールが見えるようにしました。

▲精密再現した運転席内部

▲天板を接着してしまうと運転席内部がほとんど見えなくなってしまうので、あえて取り外せるように

 

■フリウルモデルとは

フリウルモデルはハンガリーのAFVモデル用アフターパーツメーカーで、タミヤをはじめ各社から発売されている1/35、1/48の戦車の金属製の履帯を発売しています。履帯はホワイトメタルを鋳造して1枚ずつ成型されており、組み上げると実物の戦車と同じリアルなディテールを再現できます。

昔の戦車モデルといえば、ゴム製あるいは軟質樹脂製の履帯が使われていました。当時、戦車の模型はモーターライズでの走行が当たり前でした。しかし走行性能を重視して履帯に常にテンションがかかった状態なので、本物の戦車に見られるような自重で垂れ下がった履帯を再現するには無理があったんですね。

近年のキットでは、ディテール重視でプラスチックの連結履帯、あるいは一体成型でも履帯のうねりまで再現したりと、足回りのリアルさが増しています。

しかし「戦車のアイデンティティといったら履帯だろ! そこにこだわらずになんとする!」「より実物に近いディテール再現したい!」「重量感を出したい!」というモデラーに愛用されているのがフリウルモデルの金属製連結履帯です。

▲フリウルモデル1/35スケール 金属製可動履帯シリーズ D9Rブルドーザー用:価格5170円。現在はなかなか入所困難な模様

本物と同じように金属ピンでホワイトメタルの履帯を1枚ずつ繋いでいく構造なので、手間はかかるのと、いささか高価ではありますが、よりリアルな戦車の履帯を再現できます。

さて足回り完成しました! 金属履帯もリアルで雰囲気もアップ。ここまでくるとモチベーションもぐっと上がりますね。

次回はブルドーザーの顔でもあるドーザーブレードを組んで、車体の完成を目指します。お楽しみに!

 

【戦車模型豆知識】戦車模型はなぜ1/35なのか?

プラモデルがブームとなった1960年代に発売されていた戦車のプラモデルは、1/20、1/24、1/21などメーカーごとでスケールがバラバラでした。これらのキットは全てモーターライズで、“走らせて遊ぶ”プラモデルでした(当時は走らないと売れなかった)。

こうした中、タミヤが1962年に発売した1/35スケールの「パンサータンク」が大ヒット。もちろんも電動走行する製品でした。

1/35という縮尺は、モーターと単2電池を内蔵するためにちょうどいいサイズだったことから採用されたといわれています。

その後もタミヤは1/35スケールで数々のモーターライズの戦車キットを発売。これらが人気を集めたことから、他社の戦車モデルも1/35スケールに統一されていきました。

1969年にはタミヤがミリタリーミニチュア(MM)シリーズを発売。ドイツ歩兵セットをはじめ、兵士たちのフィギュアが発売されるようになり、AFVモデルというジャンルを確立。戦車モデルもディテールが重視されるようになり、徐々にモータライズモデルは姿を消していったのです。

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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