Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)が、注目を集める「空飛ぶタクシー」の連続飛行をサンフランシスコ湾上で行う許可を求めていることが、FCC(米国連邦通信委員会)に提出された書類からわかった。
このスタートアップ企業が開発した「S4」と呼ばれる第2世代の試作機にとって、これが初めて衆人環視の中、都市環境で行う飛行テストとなる。
サンフランシスコで計画されているテストは、サンフランシスコ湾の2つの主要な観光スポットを中心に行われる。1つはゴールデンゲートブリッジとアルカトラズ島の中間地点、もう1つはベイブリッジの南側、アラメダに近い地点だ。
Jobyのマーケティングコミュニケーションブランド部門で責任者を務めるOliver Walker-Jones(オリバー・ウォーカー・ジョーンズ)氏は「私たちは現在、限られた回数のフライトを行う可能性を検討している初期段階にあります」と述べている。「確定した計画はまだなく、飛行許可を確実に得るためには、地方自治体や連邦政府のさまざまな機関と協力する必要があります。とはいえ、これは非常にエキサイティングなことです」。
Jobyは2021年、電動垂直離着陸機(eVTOL)による数々の記録を打ち立てた。最長飛行距離155マイル(約250キロメートル)、最高時速205マイル(約330キロメートル)、さらに最高度記録も更新したと、同社はTechCrunchに述べている。
「私たちは最近、海抜高度7000フィート(約2.1キロメートル)を超えるフライトを何度か行いました」と、ウォーカー・ジョーンズ氏は語る。これらの飛行はすべて、カリフォルニア州サンタクルーズ周辺の人里離れた沿岸部や私有地の上で行われた。今度の湾上飛行は、これらの記録に続くマイルストーンとなる。
最近の記録的なフライトと同様に、完全電動マルチプロペラ式で5名乗車可能なS4は、人を乗せずに今度のテストを行う予定だ。FCC、FAA(米国連邦航空局)、および市当局の許可が必要となるこのテストは、近くの地上コントロールステーションから遠隔操作で行われる。
Jobyが提出した申請書によると、飛行時間は通常1時間で、主に水上を飛行し、最大高度は海抜5000フィート(約1.5キロメートル)となる予定だという。この翼幅約40フィート(約12.2メートル)、重量4400ポンド(約2000キログラム)の航空機が、どこで離陸、着陸、充電を行うかは明らかにされていないが、それは地上で行うことになるだろうと、ウォーカー・ジョーンズ氏はTechCrunchに語った。
Volocopter(ボロコプター)はシンガポールの水上で、eHang(イーハン)は南アジアの都市の上空で、それぞれeVTOLのデモンストレーション飛行を行っているが、Jobyの飛行が承認されれば、米国の都市では初の本格的なエアタクシーの飛行となる。
今回のテスト飛行は、実物大の航空機を遠隔操作するために使う無線機器の評価が目的とされている。「飛行試験は、Jobyが開発中の新しい航空機技術が、FAAの飛行認証を取得するための継続的な取り組みに不可欠で必要な要素である」と、FCCの申請書には書かれている。
2021年夏にSPAC(特別買収目的会社)による11億ドル(約1270億円)の株式を公開を行ったものの、それから株価が50%も下落した同社にとって、このドラマチックな公開テストはメディアに大きく取り上げられることが期待できる。
「無線機のテストが、この地域で行う実証飛行の目的です」と、ウォーカー・ジョーンズ氏はいう。「もちろん、将来的にはポジティブなメリットもあります。都市部で技術を実証すれば、最終的に運用することになる場所に、これがどのように適合するかを、人々に見て理解してもらえますから」。
今回のテストは、最先端のeVTOL機を「戦略的能力ポートフォリオ」に加えたいと考えている米空軍との複数年にわたる4500万ドル(約52億円)の契約の一環でもある。
現在、Jobyが所有する2機のS4量産前試作機が、FAAと米空軍から実験的運用の認定を受けている。
2021年4月にFAAに提出された書類によると、2019年10月から飛行している最初の量産前試作機は、562回のテスト飛行を終え、約27時間の飛行時間(平均飛行時間が3分未満という意味になる)を記録しており、時速80マイル(約時速129キロメートル)を超える速度や1000フィート(約305メートル)以上の高さでは飛行していない。
ウォーカー・ジョーンズ氏によると、Jobyは航空機の可能性を徐々に追求する「限界範囲拡大活動」の一環として、これらの過去の記録を塗り替えているという。同社は先日、S4が公称最高速度の時速200マイル(約時速322キロメートル)をわずかに超え、時速205マイル(約330キロメートル)のテスト飛行を行ったと発表している。ウォーカー・ジョーンズ氏によると、試作機はこの1月だけで20分以上のミッションを17回行ったという。高度7000フィートの記録が確認されれば、一般的にエアタクシーが都市内や都市間における短距離飛行の運用で期待される高度を、はるかに上回ることになる。
Jobyが2021年4月にFAAに提出した書類によると、同社は今後2年間で最大4機のS4試作機を製作し、最大600回のテスト飛行を行うことが予定されている。その後、商業運航のために必要なFAAの型式認証要件を満たす最終設計に移行する。
Jobyは2022年中に航空会社としての認定を受け、2024年には旅客輸送サービスを開始する予定だ。この時点では、資格を持ったパイロットが搭乗することになる。同社は2021年、都市不動産会社であるReef Technology(リーフ・テクノロジー)と契約を結び、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンフランシスコ・ベイエリアの都市部にある駐車場の屋上に離着陸場を開発することになった。
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2021年9月には、NASAがJoby S4の離陸・飛行・着陸時の音響テストを行っている。
SECに提出した書類によると、同社の航空機は従来のヘリコプターの100倍以上の静粛性を備え「都市の背景の騒音に溶け込みながら、密集した都市部を中心に運用できる」ことが期待されるという。NASAとJobyにTechCrunchが尋ねたところ、音響テストの結果はまだ公開されていないとのこと。
2021年1月、Jobyは配車サービス大手のUber(ウーバー)による7500万ドル(約86億4000万円)の投資の一環として、Uberの航空輸送事業であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)を買収した。Jobyは11月のSEC提出書類で、Elevateの資産をわずか2000万ドル(約23億円)と評価しており、その価値のほとんどは自動化、マルチモーダル、シミュレーションのソフトウェアによるものと表していた。
サンフランシスコで行う飛行テストについて、JobyのFCC申請はまだ保留されている。
画像クレジット:Joby Aviation
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(文:Mark Harris、翻訳:Hirokazu Kusakabe)