インド中央銀行の高官は、暗号資産を「ねずみ講」になぞらえ、極めて厳しい批判とともに全面的な禁止を示唆した。インド政府はわずか数週間前に、世界第2位のインターネット市場である同国で仮想デジタル資産への課税を提案し、法定通貨として認める道を開いたばかりだ。
インド準備銀行(RBI)副総裁のT. Rabi Sankar(T. ラビ・サンカー)氏は会議で、暗号資産は「規制された金融システムを回避するために特別に開発された」もので、基盤となるキャッシュフローに裏付けられていない、と語った。
「私たちはまた、暗号資産が通貨、資産、商品として定義できないこと、基盤となるキャッシュフローがないこと、本源的価値がないことから、ねずみ講に似ているか、もっと悪いものだと見ています」とサンカー氏は語った。
サンカー氏の発言は、インド政府が仮想デジタル資産を法定通貨として認める方向で動く中でのものだ。同国の財務相Nirmala Sitharaman(ニルマラ・シタラマン)氏は2月上旬の連邦予算で、暗号資産とNFT(非代替性トークン)の譲渡によって発生する所得への課税を提案した。
インドでは2021年、規制の不透明さにもかかわらず、暗号資産とNFTの販売が急速に広まった。調査会社Chainalysisの分析によると、世界第2位のインターネット市場であるインドでは、暗号資産投資の導入率が2番目に高い。
「こうした取引の規模と頻度から、特定の税制を設けることが不可欠になっています」とシタラマン氏は予算演説で述べた。
インド中銀はこれまで、暗号資産に対して非常に慎重だった。2018年には、金融会社が暗号資産を扱うことを禁止した。この禁止令は2年後、インド最高裁によって覆されたが、ほとんどの銀行はRBIの指示に従い続けてきた。
シタラマン氏は2月14日、政府とRBIがルール策定に向けて話し合いを行っており、両者は「準備を進めている」と述べた。
サンカー氏の演説により、RBIが長年のスタンスを変えていないことが明らかになった。「ビットコインのような暗号資産は、価値貯蔵手段として、これまで印象的なリターンを生んできましたが、17世紀のオランダのチューリップもそうでした。暗号資産は、ねずみ講のような仕組みの投機やギャンブルの契約と非常によく似ています。実際、1920年にCharles Ponzi(チャールズ・ポンジ)が考案した元々のスキームの方が、社会的な観点からは暗号資産よりも優れているという議論もあります」と話した。
暗号資産は、通貨制度、通貨当局、銀行制度、そして一般的には政府の経済統制能力を「破壊」する可能性があるとサンカー氏は警告した。
「暗号資産は一国の金融主権を脅かします。通貨を作る民間企業や通貨を管理する政府による戦略的な操作の影響を受けやすくします。こうしたことから、暗号資産を禁止することが、おそらくインドに開かれた最も望ましい選択であるという結論に達しました」と同氏はいう。「私たちは、暗号資産を規制すべきだと主張する人々が提示した議論を検証し、基本的な精査にさえ耐えるものではないとの見解に至りました」。
画像クレジット:PUNIT PARANJPE/AFP / Getty Images
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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi)