産業技術総合研究所(産総研)は2月19日、低ノイズ、広帯域な磁気センサーを開発したと発表した。従来の方式であるフラックスゲート型磁気センサーと比較して、アナログ回路の動作エネルギー効率を示す性能指標「正規化エネルギー」が1000倍改善され、正規化エネルギーの低い(電気効率が高い)集積化フラックスゲート型磁気センサーに比べて、ノイズは1/100を実現した。生体磁気計測や産業用計測における、小型、高感度、低消費電力のセンシングシステムが期待できるという。
これは、産総研デバイス技術研究部門先端集積回路研究グループ(秋田一平氏)と愛知製鋼との共同研究。低ノイズで広帯域な磁気センサーは、脳磁図、筋磁図などの生体磁気、自動運転、非破壊検査、電流センシングといった多くの分野で求められているが、これまで使われてきた集積化フラックスゲート型の磁気センサーはチップサイズと小型ながら磁気ノイズが大きい。また、低ノイズな磁気センサーはサイズや駆動電流が大きくなるという難点がある。
そこで研究グループは、低ノイズ化、低消費電力化、小型化を同時に実現するものとして、愛知製鋼が開発した磁気インピーダンス素子(MI素子)に着目した。この素子を、産総研が研究してきた低消費電力で高精度な計測用のアナログ特定用途向け集積回路(ASIC)の知見を応用して実装したのが、今回開発された磁気センサーだ。
MI素子は、アモルファス合金ワイヤーの周りにコイルを形成したもの。このワイヤーに電流パルスを通すと、ワイヤー表層で外部磁気に比例した磁束が生じる。この磁束の変化をコイルを通じて誘導電圧として検出する。この誘導電圧は、適切なタイミングでサンプリングされた後、信号処理回路により増幅され、出力される。低ノイズ化を行おうとすると、信号処理回路に多くの電流が流れることになるが、回路構成と動作を最適化することで、低ノイズを低消費電力とを両立させることに成功した。
また、低ノイズ化と広帯域化のためには、誘導電圧のサンプリング処理をナノ秒単位で制御する必要がある。このサンプリングのタイミングが狂えば、MI素子の感度が低下し、ノイズや帯域にも影響が出る。そこでデジタル自動補正技術を開発し、高い時間分解能でサンプリングのタイミングを調整できるようにした。
今後は、さらなる高感度化と電力効率を向上させ、製品として組み込むための開発を進めるということだ。
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/02/22/magnetoimpedance-based-magnetometer/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:tetsuokanai