【男前マルチツールの世界】
マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。
そんなマルチツールの男前な魅力を紹介する連載第18回は、knog(ノグ)「FANG マルチツール」(4070円)です。
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knogは自転車やアウトドアのライトやギアをリリースするオーストラリアのブランド。以前はバッグなども販売していましたが、現在はライト関連が中心のようです。
今回紹介するのは、同じくオーストラリアのタクティカルギア ブランド TACTICA(タクティカ)とのコラボアイテム。これまでにないスリムでスタイリッシュなデザインのマルチツールです。
自転車用の安全灯火類は、安全性や信頼性といった性能面が最も重要視されるアイテムです。knogはそこに「おしゃれ」を持ち込んだ最初のメーカーだったかもしれません。性能面を最重要視するユーザーから見ると、初期のknogは「軟派」といった印象があったかも。
しかし今は、デザイン性だけでなく性能面に置いても確固たる地位を築き上げました。何より最大の功績は、「このライトなら自分の自転車に付けたい」と思わせるカッコ良さだったと思います。
その高いデザイン性はマルチツールにおいても感じ取ることができました。FANGは主に自転車用の携帯工具ですが、装着するビット類を変えることで日常使いにも優れたマルチツールとなります。
ボディはレンチやビットといった工具部を除きすべて樹脂製。軽量で丈夫な素材が使用されています。また、細部に至るまで角がなく滑らかな流線形でありながら非常に持ちやすいシルエットをしています。
最大の特徴は、メインとなるボディを2本のタイヤレバーでサンドしているところ。タイヤレバーとは、タイヤ着脱時に使用する工具です。チューブを使用したタイヤの場合、タイヤの片側を外し中のチューブを取り出す際に使用します。出先でパンクした時などで、修理パッチキットやチューブ交換をする際は必ず使います。
このタイヤレバーの内側には2カ所マグネットが付いており、ボディを挟んでふたつのタイヤレバーをくっつけることで一体化させます。結構、強力なマグネットですね。自転車用の工具ではタイヤレバーが付いていることが多いのですが、ここまでスマートかつ確実に装備できるモデルは少ないかも。また、片側のタイヤレバーの内側には2本のビットを格納するスペースがあり、スライドさせて取り出せるようになっています。
ビットは4本付属しており、タイヤレバーに2本、ボディに2本収納可能。ボディ側面にあるゴム製のストッパーを開けてビットを収納します。取り出すときはストッパーを開いて叩くように軽く衝撃を与えるとビットが落ちてきます。ビットを使用する際はストッパーを閉じます。
ボディにビットを装填すると、先端部だけが露出します。付属するビットは収納性を考慮した短い物。その分、トルクも掛けやすいので便利ですが、奥まった場所にあるネジやボルトには不向き。なお、ビット装填部にはマグネットがあり、ビットが自重で落下することを防ぐ工夫が施されています。
自転車に関しては露出したボルトが多いので使い勝手は良好です。何より、ボディが握りやすく力が掛けやすい。自転車は、特に強いトルクで締めるべきところと、それほど強く締めないボルトがあります。ハンドル周りのパーツのトルクであれば、このツールでも充分かと思いました。
強めのトルクを掛けたい場合は、ボディにあるレンチ部に設けられたホールにビットを挿して使います。ただし、ビットが短いので少し使いにくい。トルクは掛けやすいのですが、ビットを留める工夫がなく、回すたびに外れてしまいます。何かストッパー的な工夫が欲しかったですね。
レンチは6種類あり、任意の部分に嵌めて使います。これはかなり使いやすかったですね。ボディ自体が薄くて小さいため、比較的狭い場所に挿せます。そして握りやすいボディと相まってトルクも掛けやすい。レンチ部分の適合性もこの手のものにしてはかなり良いかと。安価なプレートツールよりはずっと良いと思います。
趣味で自転車に乗っていますが、タイヤは頻繁に交換します。夏季はバイクパーク用、冬季は山道用と使い分けることも。ここ最近はチューブレス化していることもあり、走行中のパンクはほとんどありませんが、タイヤ交換時はタイヤレバーが欠かせません。
これまでさまざまなタイヤレバーを使ってきましたが、FANGのそれはかなり良いかも。少なくとも携帯自転車用工具の中では一番良かったかもしれません。タイヤを外す際、リムとタイヤの間に先端が入りやすく、リムの上を滑らせやすい。タイヤの太さやサイズにもよるので一概に良い面だけではないかもしれませんが、「おまけ」で付いているような工具では無いということですね。ちゃんと使えます。
ちなみにダンボールを開けられる小さな突起がボディ後方に付いています。ボディと同じ樹脂製ですが、ちゃんと開けられました。布テープでも切れたので、割と使えそう。ナイフのように尖っているわけではないので、TSA(アメリカ合衆国運輸保安庁)にも準拠。旅先に持って行くのも気を使いません。
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やはりなんといってもデザインが秀逸です。今までの自転車用携帯ツールにないクールなデザイン。どこを持ってもストレスを感じない形状も素晴しい。そして76gという軽量な点は、自転車乗りにとっては高ポイントかもしれません。
個人的には樹脂製のボディであることに魅力を感じます。樹脂は金属よりも弱い印象を持っている人もいるかと思いますが、この樹脂素材はかなり丈夫。少なくとも自転車用携帯工具のボディ素材としてはベストな選択かも。イメージにとらわれることなく、最適な素材を製品に用いることは意外と勇気のいることです。機会があれば手に取ってその質感を試してみてください。
>> knog
<取材・文/GOL>
GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/438728/
- Source:&GP
- Author:&GP