青森県つがる市・県・地元生産団体らで構成される“つがるブランド推進会議”は、最新の水耕栽培技術とIotを活用し、メロンの通年栽培を目指す実証実験を2020年7月より行っています。
2020年度・2021年度と検証を重ね、2022年度以降は実用化・栽培の普及を視野に検証を進める方針。今回は、同実験に活用されている技術や実験の成果などを紹介します。
栽培槽内の水流と冬季室温を改善
つがる市は、国内有数のメロン生産地ですが、農業従事者の高齢化や後継者不足により生産量は減少傾向のようです。また、メロンの栽培期間が夏期に限られるという点からも生産量ひいては収益性に課題がありました。
そこで注目したのが、東京都町田市で生まれた最新の水耕栽培技術「町田式新農法」。これは、水耕栽培槽内の養液の流れを“ゆらぎ”を伴なった放射状水流にすることで養分の吸収を促進させ、多収穫・良食味の作物を栽培する方法です。これにより、1株からの収穫量を最大8倍にまで増やせるといいます。
また、地面に温泉の配管が通るハウスを試験場に選定。温泉熱を利用して冬季の室温を調節することで、通年栽培の可能性を探っています。
農業IoTソリューションでハウス内を可視化
Iotカメラは、360°回転やパン・チルト・ズームを遠隔操作できるもの。捉えた温室内の映像はPCやスマートフォンなどへリアルタイムに配信されます。
これらのデータ蓄積により、経験や勘だけに頼らない生産や見回り業務などの負担軽減が期待されているようです。
生産量増加を実現
これまでの実験では、冬場の日照不足を補う照明の検証なども実施。蛍光灯・LED・メタルハライドランプの3種類を比較したところ、生育状況やコスト面においてLEDが最も適していたことから、現在はLED照明数の違いによる試験を行っているようです。
ここまでの成果として、生産量増加が最も大きなものでしょう。一般的な土耕栽培メロンでは1株からの収穫量は4個程度ですが、同実験の試験栽培では1株あたり夏場約20個・冬場約15個の収穫を実現しました。なお、試験栽培は年3回収穫を行う栽培サイクルで実施。今のところ、糖度については季節・条件に関係なくおおむね平均15度を維持できているそうです。
今後は、品種ごとの生育状況や収穫量の違いを記録したデータをもとに「地元主力品種の冬期栽培試験」と「光合成促進剤による生育比較試験」を実施。また、栽培槽増加による試験データの蓄積と収穫量増加を目指すとともに、実証試験の結果をもとに栽培方法のマニュアルを確立する見込みです。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/175401
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口