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デジタル開発から真に恩恵を受けるのは誰か?

TechCrunch Global Affairs Projectは、テクノロジー部門と世界政治のますます複雑になっている関係を検証する。

国際的開発は、ほぼすべてのセクターと同様に、問題をコード化できると考えている技術者たちの関心を集めており、開発の実践者たちが彼らを助成している。USAID(米国際開発庁)からBill & Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)、国連に至るまで、デジタル開発プログラムの数は急増の一途をたどっている。いくつかの取り組みは非常に有益であるが、謳い文句から私たちが期待するような効果はないと考え得る理由も存在する。場合によっては、それらは能動的な有害性を現すことがある。

デジタル開発にはある程度の有望さがある。貧しい人々にデジタルプロダクトとサービスを提供することは、間違いなく一部の人々を貧困から救い出すであろう。しかし、デジタル開発は多くの場合、妥協のない善として描かれているが、しばしばその代償が見過ごされている。データは今や世界で最も価値のあるコモディティであり、未開拓のデータの最大のソースは、まだインターネットに接続していない30億人の人々である。欧米の開発主体がこれらの人々をデジタルサービスと接続する際、人々は自分たちのプライバシーやデータを、それらを収益化しようと躍起になっているテック企業のなすがままにしている。表向きは貧困削減を目的とするイニシアティブが、一方でテック企業を豊かにし、彼らが社会的弱者のデータから利益を生み出すことを可能にもしているという矛盾が、デジタル開発の中心に存在する。

一部の向きはこのことを、貧困から人々を救い出すための許容可能なトレードオフであると考えるかもしれない。しかし、こうした人々の生活のあらゆる側面からのデータ生成は、データに基づく差別の正当化を生むことや、大手テック企業による地元企業の弱体化を促すことを通じて、開発イニシアティブの有効性を低減し、他者を貧困に閉じ込めてしまう可能性もある。

デジタル金融サービスが、この原動力への窓を呈している。モバイルマネー口座を通して支払われることも多い小口融資、いわゆる「マイクロローン」は、貧困層に資金を提供する方法として一般化している。Grameen Bank(グラミン銀行)の創業者であるMuhammad Yunus(ムハマド・ユヌス)氏がマイクロローンにおける功績で2006年にノーベル平和賞を受賞しているが、最近のエビデンスは、マイクロローンが貧困の減少に寄与していないことを示している。

多くのランダム化比較試験において、マイクロローンは国や大陸にわたって貧困にほとんど効果をもたらしておらず、単に現地の銀行やコミュニティメンバーからの借入の代用となっている可能性があることが確認されている。バングラデシュのいくつかの村では、マイクロローンにより脆弱なコミュニティで負債が増大し、一部の人々が土地を失うという事態も生じている。

このような状況にもかかわらず、デジタル金融サービスは、手数料や投資機会、そして人々の消費習慣の価値あるデータを生み出すという側面を背景に、活況を呈している。マイクロクレジットは今では、2億人を超える人々に融資を提供する600億ドル(約6兆9538億円)規模の産業に成長している。米国と中国の投資家はアフリカのデジタル金融サービス企業への出資比率を2倍超に増やしており、デジタル金融サービスへの投資は現在、アフリカのテック企業への投資総額の60%を占めている。

テクノロジーエバンジェリストの予測をよそに、デジタル金融サービスへの投資の増加が相応の貧困削減を導く兆候はない。それどころか、金融サービスのデータが個人の信用評価に利用されており、アルゴリズムに欠陥を抱えた意思決定に基づいて、貧困層の信用取引へのアクセスを拒否し、経済的排除を悪化させている。一方で、現金給付のようなより効果的な金融サービスソリューションでは、収益性の高い利払いが得られないことから、リソースが減少している。

重大な欠点があるのはデジタル金融サービスだけではない。最近、デジタル開発の推進者たちは、政府のサービスに人々をつなぐ手段としてデジタルIDの採用を推進している。その中で最大かつ最も賞賛されている取り組みは、インドのAadhaar(ヒンディー語で「財団」)と呼ばれるデジタルIDシステムで、指紋と目のスキャンを記録することで人々にデジタルIDを割り当てるものである。2009年以降、AadhaarでデジタルIDを付与されたインド人は12億人を超える。

Aadhaarの最も重要な支持者の1人はBill Gates(ビル・ゲイツ)氏で、同氏はこのプログラムを他の国々で再現することを目的に、世界銀行へ資金を提供している。ゲイツ氏はAadhaarを「驚くべき資産」と称しており、また「それ自体はプライバシー問題を引き起こさない」し「富裕国でさえこれまでいかなる政府も行ったことがない」ものだと述べている。

だが、ゲイツ氏は間違っている。Aadhaarは、インドの政府機関から何百万人もの人々を排除している。Aadhaarへの登録には身元証明と住所証明が必要であり、登録者の99.97%がすでに十分な本人確認を受けていると政府の記録が示していることは驚くに値しない。Aadhaarで初めて身元が証明された人も少数いるが、安定したインターネットアクセスが困難な国では、デジタルIDは信頼できないものである可能性がある。残念なことに、Aadhaarのデータベースは粗雑であることで知られる。「指紋認証エラー」が多発しており、技術の欠陥のために指紋で身元を確認できない人が30%にも上る。インドでは、Aadhaarシステムの欠陥の結果、100万人を超える子どもたちが学校への入学を拒否され、150万人の人々が政府の給付金を受けるためのアクセスを失っている

Aadhaarはまた、インドのテック企業向けに大量の価値あるデータを生成している。つまり、こうした企業は、固有のID番号を使って個人の金融活動を追跡したり、それをサードパーティに販売することが認められており、ひいてはターゲット広告の制作や、個人の保険やローン審査へのデータ利用にもつながっている。2018年にインドの最高裁判所は、民間企業がAdhaarのデータを販売することは違憲であるとの判決を下したが、インド中央政府はすぐに法律を改正してこの決定を回避した。プライバシー活動家のUsha Ramanathan(ウーシャ・ラマナサン)氏は「データは新しい黄金であり、Aadhaarはそれを手に入れるためのツールとなる」と述べている

Aadhaarの例が示すように、デジタル開発イニシアティブのユーザーを保護する十分な防護柵がないことが多い。世界の最貧国の大半はデータ保護法やプライバシー法を持たず、多国籍企業による監視やデータ抽出の対象となっている。デジタル開発の実践者たちは、プライバシーを重視するデジタル開発の原則のようなベストプラクティスに従うことで、これらの国でも倫理的に仕事を遂行できると主張する。これは実質につながる根本的な原動力を見逃している。デジタル開発の中核的な信条は「デジタルビジネスに対する規制の合理化」であり、このことは、現地企業に対する適切な保護がない国において、多国籍企業に有利に働く。

さらに悪いことに、大手テック企業は一貫して、より徹底したデータ保護法を施行する取り組みを世界中で妨害してきた。例えば、ケニアが米国と自由貿易協定を交渉する中、Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)は米国政府に対し、ケニアの2019年データ保護法に直接違反する形となる、国境を越えたデータの流れを自由化する方策を盛り込むよう働きかけている。このような動きを通じて、AmazonとGoogleは、個人の財務データを分析して新たなビジネスチャンスを得ようとする競争において、地元企業をしのぐ力を手にすることになる。ケニア政府は個人のデータを現地に保管する要件を維持しようとしているが、バイデン政権はこれらの企業を支持する姿勢を見せており、ケニアが大手テック企業の要望に同意するまで、貿易協定が頓挫する格好となっている。

適切なデータ保護と、データの最小化を求める措置がなければ、デジタル開発プログラムの利用者は危険にさらされる。つい先月(2022年1月)には、Red Cross(赤十字社)がハッキングを受け、50万人の脆弱な人々の機密情報が盗まれたことが明らかにされた

テック業界の支援者たちは多くの成功例を主張するかもしれないが、彼らの勝利主義は確かなエビデンスに代わるものではなく、多国籍企業の選好を地域社会の選好の上に置くことを正当化することはできない。基本的な現実は、デジタルサービスだけでは世界の貧困を解決することはできず、それが偶発的な被害につながることがあまりにも多いということである。もしテック業界のリーダーたちが、本当に世界の貧困を終わらせたいのであれば、もっと直接的な方法を考えることもできるはずだ。つまり、彼らの年間利益の半分に満たない額を再分配することで、世界の貧困を根絶するために必要な2000億ドル(約23兆1794億円)を20年間にわたって提供できるのである。デジタル開発の実践者は、テクノロジー企業の利益を拡大するのではなく、再分配することを推奨すべきである。

編集部注:Kevin Klyman(ケビン・クライマン)はテクノロジー研究者であり、国連のデータ保護ポリシーを執筆した経験もある。Human Rights Watch、San Francisco Chronicle、Campaign to Stop Killer Robotsに寄稿している。

画像クレジット:blackdovfx / Getty Images

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(文:Kevin Klyman、翻訳:Dragonfly)

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